うどん屋ではなく「カフェ」
伝統に縛られないところからこそ生み出せる、
新たなうどんがあると思います
香川にお好み焼きとうどんを一緒に出す店があって、うどん屋が暇になるはずの2時や3時でも、お客が途切れることなくやって来るんです。この光景を見て、うどんには、従来のうどん屋以外にも、まだまだ面白い可能性が眠っているんじゃないか、そう感じたことがありました。
固定概念をくずし、先人の知恵と新しいアイディアを組み合わせた
しばらくして東京で店を始めることになりいろいろ考えた末に、お洒落なカフェで創作うどんを出すことにしたんです。お洒落なインテリア、心地良い音楽、センスの良い器で、洋食の技法なども取り入れた、見たこともないうどんを楽しんでもらう。カフェと言えばパスタが定番ですが、うどんにはパスタ以上の可能性が眠っていると考えました。カフェとしてうどんに向き合うと、固定観念にとらわれない全く新しいレシピが次々生まれてくるんです。
うどんの素晴らしさに心底感銘を受けたからこそ、先人が遺してくれたうどん文化に胡坐をかくのではなく、一歩でも二歩でも私の時代にうどん文化を前進させたいと思いました。先人の知恵に現代の技やアイディアを組み合わせれば、まだまだ完成度を引き上げることができる。
そんな確信みたいなものがありました。
狙い通りに店は大成功
しかし、手打ち麺ではお客様を待たせてしまうことになり…
実際にオープンすると、予想通り女性客を中心にほぼ満席状態が続きました。しかも女性客は口コミ効果が大きいのか、客数は日ごとに伸びる一方。当初は手打ちだったのですがこれではお客様を待たせることになると、製麺機を導入することにしました。仕入れ麺ではなく、あくまでも店で打った、私自身が納得できる麺を出したいというこだわりがありましたね。うどんに詳しく、性能の良い製麺機を探していると大和製作所に行きつき、実際に試食してみて驚きました。機械とは思えない素晴らしい風味や食感に感激したのを覚えています。その上、藤井社長の人柄にも惚れましてね。技術者らしいアプローチで、理論的に味の組み立てを考えている点に可能性を感じたわけです。もちろん化学調味料に頼らず、素材の味をいかに引き出すかに情熱を傾けている点も、私の目指す方向と合致しました。こうして製麺機を導入してみると、お客様を待たせる時間は見事に短縮。また、体重をかけて踏むうどんの場合、打ち手の体重が変わると麺の出来も変わる悩みがあったのですが、製麺機にしてからは品質も安定。もちろんお客様の評判も上々で、結果的に、大和製作所の製麺機にしたことは大正解だったと思っています。
近隣のお客様に何度も足を運んでもらうためには、
新しいメニューを次々開発することがカギ
この店は、よく言えば地域に愛されている店です。逆に言えば遠くから客を呼べるほどの店では決してありません。近隣の限られたお客様に利用してもらっている店だという事は、同じものを出しているだけではすぐに飽きられてしまうという事です。飲食店から段々と客足が遠のいてしまう理由の一つに、いつまでも同じメニューに胡坐をかいていることもあると思うのです。
だから、メニュー開発はとても大事。飲食店の生命線と言っていいと思います。自由な発想で新メニューを次々打ち出していくことで「今日は何か新しいメニューがあるかも?」ってお客様に期待されるようになるんです。実際、メニューは毎週のように変えています。だから、お客様も毎週のようにやってきてくれるというわけ。中には週に3回も見える方までいらっしゃるんですよ。
素材を吟味して手作りにこだわり、
細部にまで工夫を凝らして最高のひと時を演出
それと、お客様一人一人に合わせたきめ細かな接客にも神経を使っています。お客様の雰囲気に合わせて器やコーヒーカップも変えているんですよ。
スタッフは笑顔の接客を徹底していますし、もちろん、カフェですからデザートにもこだわっています。素材を吟味して手作りにこだわり、盛り付けひとつにまで工夫を凝らして最高のひと時を演出するようにしています。
普通のうどん屋さんをやっていたらここまで神経を使うことはなかったかも知れませんが、ここまでやってお客様に喜んでもらった時の満足感は格別なんです。皆さんも、自分で枠を設けないで、どんどん新しいサービスにチャレンジしたらいいと思いますね
うどんの可能性をさらに広げながら、
カフェ文化にも一石を投じてみたい
うちには、日本を代表するホテルで世界的なシェフと一緒に腕を磨いた料理人がいるんです。普通、カフェに腕利きの料理人がいるとは誰も期待しないと思います。お茶を飲むついでの軽い食事ぐらいにしか思われていない。そんなカフェ文化に一石を投じてみたいと思っています。うちの店ではデザートは全部手作りですし、本格的なフルコースだって提供できるレベルにあります。いずれは、予約制でフルコースも提供して、カフェに対する日本人の認識を一変させたいですね(笑)。もちろん、うどん文化のさらなる発展にも挑戦を続けます。
日本のダシは、今や世界中の料理人に注目されるほど、磨き上げられた食文化です。しかし、必ずしもこれが完成形だとは思いません。実はダシに食材の味が移ると、全く新しい味わいが生まれるんです。ハマグリ、牛スジ、鴨…個性のある食材を組み合わせることによって、今まで誰も味わったことがない、複雑で豊かなうどんが生まれる可能性は低くないと感じています。
日本発の食文化として「うどん」を世界の共通語にしていくのが、私の夢です。
会社名 | カフェ中野屋 |
---|---|
所在地 | カフェ中野屋【Goolge Map】 〒194-0013 東京都町田市市原町田4-11-6 中野屋新刊1F |
麺種 | うどん |
カフェとしてうどんと向き合い、細部にまでこだわった今までにない新しいメニューを展開中。うどん文化のさらなる発展にも挑戦をし続けています。 |