本日のテーマは「飲食ビジネスは、その都市を深く理解すること」です。
昨日の月曜日は、ジェイソンと一緒に、ジェイソンのラーメン店に行き、久しぶりに味をチェックしましたが、どれも特に大きな問題点はなく、それぞれが美味しい味でまとめられていました。
そして、行くたびにメニューが新しくなり、いろんな工夫をしていることが分かりますが、完全なオフィス街のために、月曜日から金曜日までの昼だけの営業しか出来ないのが、大きなハンデイキャップになっているのです。
入店しているお客さまの客筋を見てみると、基本的に裕福な人たちが対象で、健康志向の価値感を持っているようなお客さまばかりでした。
従って、メニューはもう少し、ターゲットになっているお客さまの価値感、ライフスタイルに合わせた方が、成果が上がり易いと思いました。
12時近くになり、お客さまが一杯になったので、これ以上いたらお店の邪魔をするので、少し離れたワンデー・ラーメン・スクールを開催しているキッチンへ移動し、魚介系だしの漬け込みと混ぜ麺を試作してみました。
日本の混ぜ麺のレシピより、インパクトを強めのレシピに変えてみたのですが、ジェイソンとキッチンの男性に食べて貰うと、シンガポール人でも十分に合う味で、美味しいとのことでした。
混ぜ麺が本当にシンガポール人に合うかどうかを確認するために、本日は午後の休憩時間で、さまざまなバラエテイの混ぜ麺を作り、ジェイソンのラーメン店のスタッフたちに確認して貰うつもりです。
先日もシンガポールのラーメン店を見て歩くと、すでに混ぜ麺を取り入れた店があり、上に載せているのは生卵の黄身ではなく、温泉卵であったので、その時は生卵の黄身の方が見た目にきれいであると思っていたのですが、昨日、ジェイソンから、シンガポール人は生卵を食べないので、温泉卵でも良いかとの話があり、合点がいきました。
キッチンがある場所は、高級住宅街の一角で、キッチンに行けば必ず、高級住宅街の周辺を散歩し、歩数を稼ぎますが、昨日も高級住宅街の中を歩いていると、次つぎと馬鹿でかい瀟洒な邸宅が新築されていて、シンガポールの裕福な人たちの生活を垣間見ることが出来るのです。
昨日は、キッチンでさまざまな試作の後、再度、市内に移動し、大きなモールの中にある、非常に繁盛しているベトナム料理のチェーン店で夕食を取りましたが、違ったコンセプトの店を2店並べて出店しているのですが、片方はいつもお客さまが一杯なのに、片方の店はいつも空いているのです。
この店はファーストフードの店で、最初にカウンターに行き、オーダーすると同時にお金を払って席で待っていると、ウエイトレスが、出来上がった商品を持って来るのです。
従って、価格は高い店ではないのですが、味が美味しく、非常にまとまっていて、フォーを食べても、何を食べても、なかなか美味しい店なのです。
主な料理は、フォーとサンドイッチ、丼のような米を使った料理で、味のまとめ方は非常に上手で、食器の色合いと盛り付けは気になる点でした。
スイーツ類も豊富で、カフェとしての機能もあるのですが、椅子が丸い小さい椅子なので、居心地はよくなく、カフェとしての機能は、弱かったのです。
ベトナム料理のファーストフード店としてみると、非常に上手に組み立てていることが分かります。
繁盛している店を見て回り、食べて回ると、その土地で繁盛するための条件が透けて見え、その土地の人たちの味の志向性も見えてくるのです。
何度も通っていると、時系列の変化も見て取れ、だんだんと時代と共に変化している様子も分かるのです。
われわれ飲食を志す者にとって、教材は至るところにあり、その気になれば、幾らでも学ぶことが出来るのです。
昔は、お客さまを一緒にさまざまな店舗にご案内し、その店舗の問題点とか、良い点、見どころ等をガイドしていた時期がありました。
地元だけではなく、韓国等もいろんなお客さまをガイドして、ご案内したことが何度もあり、多くのお客さまに感謝されたこともありました。
或いは、私がこのような情報を提供すると、熱心なお客さまはすぐにその店に行ってみたりしているのです。
シンガポールは、活気のある世界で最も成功している都市のひとつなので、世界中から、最先端の飲食店が集まっているので、海外の最先端の情報を得るには、素晴らしい都市です。
今朝も朝から、ホテルの周辺を散歩していると、さまざまなショッピングセンターがあり、行ってみたいような場所が、狭いエリアに固まっているので、いつの日か、シンガポールで、麺ビジネスの勉強会を開きたいと思います。
本年2月21日から始まった、半年間以上に及ぶ、「イノベーションと起業家精神」の学びの最終のまとめに取り組んでいきます。
第17章 弱みへの攻撃
I創造的模倣
「弱みへの攻撃」は、起業家戦略としては、「創造的模倣」と「起業家的柔道」という2つの戦略が、これに該当するのです。
◆イノベーターよりも創造的
創造的模倣は、ハーバード・ビジネススクールのセオドア・レヴィットの造語で、明らかに矛盾した概念であり、創造的ということは、オリジナルということであり、あらゆる模倣に共通していることは、オリジナルではないということであるのですが、これは、まさに内容とぴったりの言葉であり、この戦略は模倣であり、この戦略では、起業家は、すでにほかの誰かが行ったことを行うのですが、この創造的模倣の戦略を使う起業家は、最初にイノベーションを行った者よりも、そのイノベーションの意味をより深く理解しているがゆえに、創造的となるのです。
日本の場合でも、模倣戦略はたびたび実行されるのですが、最近ではそのほとんどが失敗しているのは、イノベーションを行なった者よりもはるかに低いレベルの模倣を行ない、形だけ真似て、イノベーションのコンセプト、要するに本質を理解していないためで、創造的模倣においては、本質の理解が欠かせず、IBMがこの戦略を最も多く使い、大きな成果をあげていて、P&Gが、石鹸、洗剤、トイレタリーの市場でトップの地位を獲得し維持するために使い、日本の服部セイコーが昔の世界の時計市場において、トップの地位を得るために使っているのです。
1930年代初め、IBMは、ニューヨークのコロンビア大学の天文学者のために、高速の計算機をつくり、その数年後の1930年代半ばには、(ハーバード大学の天文学者のために、コンピュータの原型ともいうべき計算機をつくり、第2次大戦が終わる頃には、記憶装置とプログラム能力を備えたコンピュータをつくったのですが、そのIBMが、コンピュータのイノベーターとして歴史の本で取り上げられることはあまりないのには、それなりの根拠があり、IBMは、その先駆的な1945年のコンピュータを完成し、二ユーヨークの街中で大勢の人たちを集めて実演した後、自らの設計を捨て、ペンシルベニア大学で開発されたENIACに乗り換えたのは、ENIACの設計者は認識していなかったのですが、給与計算に使いやすかったのです。
IBMは、計算事務という平凡な仕事に使えるよう、ENIACの設計を取り入れ、生産し、アフターサービスすることにし、1953年、ENIACのIBM版が世に出るや、直ちにそれは、企業用の多目的メインフレーム・コンピュータの標準となったのであり、これが創造的模倣の戦略であり、誰かが新しいものを完成間近までつくりあげるのを待ち、そこで仕事に取りかかり、短期間で、顧客が望み、満足し、代価を払ってくれるものをつくりあげ、直ちにそれは標準となり、市場を奪うのです。
IBMは、パソコンについても創造的模倣の戦略を使い、アイデアそのものはアップルのものであり、IBMは、パソコンが経済的でなく、最適にほど遠く、金のかかる間違った製品と見ていたのですが、なぜかそれは成功していたので、
IBMは直ちに、パソコンの標準となり、支配者となり、少なくとも先端的となるべき製品の設計にかかり、その成果がPCで、2年後には、IBMのPCはアップルのリーダーシップを奪い、最も売れる製品、標準たる製品となり、P&Gもまた、石鹸、洗剤、トイレタリー、加工食品などの市場で、ほとんど同じ戦略を使ったのです。
時計業界は、半導体が開発されたとき、それまでの時計よりも正確で信頼性が高く、しかも安い時計がつくれることを知り、スイスの時計メーカーもクォーツ・デジタル時計を開発したのですが、すでに従来型の時計に多額の投資を行っていた彼らは、新製品を贅沢品として位置づけ、時間をかけて導入していくことにしたのですが、他方、国内市場向けに腕時計をつくっていたセイコーは、約50年前に、半導体にイノベーションの機会を見出し、創造的模倣の戦略をとって、クォーツ・デジクル時計を普及品として世に出し、スイスのメーカーが気づいたときには、すでに遅く、セイコーの腕時計が世界のベストセラーとなり、スイスのメーカーは、ほとんど市場から追いやられ、腕時計は単価の安い、コモデイテイとなってしまったのですが、現在は機械式時計の強みと巧みなデザイン力で、反対にスイスの時計メーカーが世界を席巻しているのです。
創造的模倣の戦略は、「総力による攻撃」と同じように、市場や産業の支配まではできなくとも、トップの地位の獲得を目指すのですが、リスクははるかに小さく、創造的模倣を行う者が動き出す頃には、市場は確立し、製品が市場で受け入れられているどころか、通常、最初のベンチャー・ビジネスが供給できる以上の需要が生まれ、市場もすでに明らかになっていて、少なくとも明らかにできるようになっていて、しかも、顧客が何を買っているか、いかに買っているか、何を価値としているかを、市場調査によって明らかにすることができるようになっているのです。
最初のベンチャー・ビジネスが直面した無数の不確定要素も、ほとんどが明らかにされているか、少なくとも、分析し調べることが可能になっていて、もはやパソコンやクォーツ・デジタル時計が何であるか、何をするものなのかを説明する必要はなく、もちろん、イノベーションを行った者が、最初からすべてを行ってしまい、創造的模倣の戦略に対して戸を閉めていることもあり、ビタミンのホフマン・ラロッシュ、ナイロンのデュポンのように、行うべきことをすべて行ってしまっているのですが、これまで創造的模倣に成功した起業家の数を見るかぎり、最初にイノベーションを行った者が、すべてのことを行い、市場を占有してしまっていることは、それほど多くはないのです。
創造的模倣のもう1つのよい例が、「非ピリン系アスピリン」ともいうべきタイレノールであり、これほど創造的模倣の戦略が何であり、成功するための条件が何であり、いかにうまくいくかを示してくれる例はなく、アメリカでタイレノールなる商標名で売られている、アセトアミノフェンは、長年鎮痛剤として使われていたが、ごく最近まで、処方箋がなければ手に入れられない医薬品であり、アセトアミノフェンよりもはるかに古いアスピリンが市場を独占していたのですが、アセトアミノフェンは、アスピリンほどの効き目はなく、鎮痛剤としては効いても、解熱剤としては効かないのですが、その反面、血液の凝固作用がないので、アスピリンのように、長期間にわたって大量に投与しても胃の異常や出血をもたらすという副作用もないのです。
したがって、ようやくアセトアミノフェンが処方箋なしで売られることになったとき、最初に市場に出された製品はアスピリンの副作用に苦しむ患者のための薬として売られ、それは成功し、成功は予想をはるかに上回り、まさにその成功が、創造的模倣の機会を生み出したのですが、ジョンソン・エンド・ジョンソンは、アスピリンに代わる鎮痛剤の市場が存在すること、しかもアスピリンのほうが、やがて解熱や血液凝固を必要とする限定された市場になってしまうであろうことを理解し、そこで、タイレノールを一般薬として売り、2年のうちに、このタイレノールが市場を獲得したのです。
この戦略は以上の様に、たいへん有効性が高い割りに、リスクが少ないので、使い易い戦略なのですが、いかに本質を極めているかが重要であり、本質を極めていないと、単に時間とお金の膨大なロスに繋がるだけなのです。
ステイーブ・ジョブズが再復帰後、アップルが大成功した戦略もすべて創造的模倣戦略ばかりで、ipodはソニーのウオークマン以来の携帯型音楽プレーヤーを再設計し、iphoneは通常の携帯電話の問題点を見つけて再設計したものであり、ipadはPCを再設計したのでした。
そして単なる模倣ではなく、それぞれの本質的な役割の時代に合った変化を深く理解し、その本質を独自に掘り下げ、現在のライフスタイルに合わせて再設計を行なったのです。
創造的模倣を活用したイノベーションが次つぎと起きるのは、時代が次つぎを大きく変化しているためであり、最初はウオークマンで満足した人たちも、そのうちに、ウオークマンでは満足しなくなったのです。
ipadとか、iphoneも同様ですが、アップルが起こしたイノベーションのこれらの製品のうち、最も成功を収めたのは、iphoneであり、iphoneがこれだけ成功を収めることが出来た大きな理由は、ipod、ipad等の良さをすべて取り込み、最初に成功したipodもipadもiphoneですべて兼ねることが出来ているのです。
昨日はジェイソンと一緒に、混ぜ麺を試作してみました。
ジェイソンは一遍で気に入ったようで、美味しそうに平らげていました。
今日も最高のパワーで、スーパー・ポジテイブなロッキーです。