日本は高度成長の後、バブル崩壊を経て、普通の国になってしまい、経済的な強みを失っていき、現在の国民一人当たりのGDPでは世界27位で、まだ順位を下げ続けているのです。
日本に続いた韓国、中国も恐らく日本が辿った道を追ってくることでしょう。
その大きな理由は、人口の年齢構成を見れば明らかであり、人口構成は簡単に変えることが出来ない問題なのです。
シンガポールでも今日のように国家になるのに50年近くを要しているので、日本も今から新しい日本を作るのは、更に何十年も要するのです。
シンガポールが今日のような優れた国家になるため行なった、リー・クアンユーの功績を振り返ってみます。
シンガポールは、リー・クアンユーが打ち立てた独裁国家でありながら、シンガポールがここまで発展出来、今でも国民の多くから尊敬されているのは、独裁国家につきものの汚職を許さなかったのです。
リー・クアンユーは世界中の国々のトップから、尊敬され、さまざまな相談に乗り、慕われていたのは、優れた戦略家であり、その人間力であり、淡路島に相当 する小さい国土以外、何もなかったシンガポールを今日の経済的に非常に成功した国に仕上げた戦略は次の通りであったのです。
経済的に成功した国に仕上げた戦略3つの戦略
1.経済政策
〇シンガポール政府は、国内に世界に通用する地場企業が存在しないことから、外国資本誘致による輸出志向型工業化戦略を打ち立てた。
〇空港・港湾・道路・通信ネットワークなどの近代化に必要なインフラストラクチャーは、政府の介入によって改善されもしくは新たに建設された。
〇経済政策で特徴的なのは、⑴外資の呼び込み、⑵国策会社の存在、の2点が重要です。シンガポールの法人税は17%であり、日本の約40%、中国25%、韓国約24%などと比較しても、低い水準になっています。
2. 言語政策
リーは、ビジネスや行政、異なる人種間における共通語として、植民地時代の遺産である英語を使用し続け、教育環境を見ると、全ての国民は、学校教育で英語 と母語の両方を習熟することが求められている。従ってシンガポールで教育を受けた一定の年齢以上のシンガポール人は、程度の差こそあれ例外なく英語を解す ることができる。このことは、シンガポールのビジネス環境の高評価の主因ともなっている。
3. 国防政策
建国当初のシンガポールは、共産主義者やインドネシア、シンガポールをマレーシアの配下に置くことをもくろんでいたUMNO過激派など複数の脅威によっ て、他国と比べ立場が脆弱だった。国防面に関してリーはスイスを手本として、非同盟と武装中立を国是とすることを宣言した。
兵力は陸軍50,000、海軍9,000、空軍13,500の計72,500名。徴兵制により男子に2年間の兵役を義務付けており、兵役終了後は予備役に 編入され、有事の際は総動員体制となる。2006年の軍事予算は100.5億シンガポールドルで、全歳出に占める割合は22.5パーセントである。
そして、現在のシンガポールでは、国民1人当たりGDPは、日本を抜きアジア1位で、何の資源もない淡路島ほどの小さな島を、50年にも満たない期間で、 世界で最も豊かな国の1つに成長させ、現在の国民一人当たりのGDPは世界9位であり、27位の日本の1.55倍であるのです。
1963年に英国から独立し、わずか数十年で驚くほど効率的な国家へと変貌を遂げたシンガポールは、人口540万人の国民の一人当たり国民所得は欧州の多 くの国々を上回り、教育や医療制度はどの欧米諸国にもひけをとらず、官僚はほとんど汚職に手を染めておらず、世帯の90%は持ち家を所有し、税金はさほど 高くはなく、歩道は清潔で、ホームレスやスラム街はまず目につかないシンガポールは“東南アジアのスイス”とも呼ばれるが、まさにその言葉通りの国なので す。
現在のシンガポールの繁栄は、リー・クアンユー氏のリーダーシップに拠るところが大きく、徹底したエリート教育や独裁政治など批判される部分もあるが、シ ンガポール人からはいま享受している豊かさをリークアンユー氏の功績と讃える声が圧倒的で、高度成長期の後の日本を反省するとすれば、日本には大きな油断 があったのです。
以上のように、国家の場合は50年以下の何十年の間、一貫性を持って戦略を貫く必要があるのですが、企業の場合は、何十年ではなく、十年以下の何年という単位で大きく変わることが出来るのです。
但し、永い繁栄を目指すのであれば、一貫性のあるDNA、戦略を貫く必要があることは否めないのです。
本日も、ドラッカー選書「イノベーションと起業家精神(下)」(ダイアモンド社)に基づき、イノベーションについて、深くドラッカーから学んでいきます。
ぜひ、一緒にイノベーションと起業家精神を磨いていきます。
◆マーケティングの基本
ベンチャー・ビジネスを市場志向のものにすることは、とくに難しいことではないのですが、そのために必要とされることは、起業家の性向に反し、予期せぬ成 功や失敗など、予斯せぬものを体系的に探さなければならず、予期せぬものを例外として片づけず、機会として調べなければならないのです。
第2次大戦の直後、インドのある小さなエンジニアリング会社が、ヨーロッパから原動機付き自転車のライセンスを買ったのは、インドにはうってつけの製品に見えたのですが、あまり売れなかったのです。
ところがその会社のオーナーは、モーターのみの注文がかなりあることに気づいたのですが、初め、彼はあのように小さな原動機で何ができるというのか、無視しようとしたのです。
だが彼は、ともかくたくさん注文のきていた地方へ行ってみると、彼は、農民たちが、それまで人力で行っていた灌漑を、自転車から外した原動機で行っているのを見たのです。
このエンジニアリング会社は、今日では灌漑用小型ポンプの世界最大のメーカーとして、年間数百万台を販売していて、この会社のポンプが東南アジア全体に農業革命をもたらしているのです。
市場志向であるためには、実験が必要であり、当初、考えてもいなかった顧客や市場が、自らの製品やサービスに多少なりとも関心があるとわかったら、その製品やサービスを、実際に使ってくれる人を探さなければならないのです。
なじみのない人たちに無料のサンプルを提供し、彼らがそれをいかに使うかを調べなければならない、さらには、彼らを顧客にするには製品やサービスをいかに 変えるべきかを調べなければならない、何らかの関心が示されたならば、直ちに関連する専門紙に広告を載せ、協力してくれる人たちを探さなければならないの です。
以上のことをいつも徹底的に行ない、今までにない商品をベスト・セラーにしているのが大塚製薬で、オロナミンC、ポカリスエット、ソイジョイ等の発売時にサンプルを徹底的に配り、ベスト・セラーを作り続けているのです。
少ない商品数が、すべてベスト・セラーで、ロング・セラーであり、たいへん効率の良い、理想的な経営を行なっているのです。
そして、それらの商品は、ボンカレーのようなレトルト商品であったり、オロナミンCのような栄養ドリンクであったり、ポカリスエットのようなスポーツ・ド リンクであったり、ソイジョイのような健康補助食品であったりとバラエテイに富んでいるのですが、すべて、大塚製薬という、製薬会社の持つイメージに助け られて、素晴らしい相乗効果を果たしている、凄い戦略で組み立てられているのです。
当初、デュポンは、ナイロンが自動車タイヤに利用できるとは考えていなかったのですが、オハイオ州アクロンのタイヤ・メーカーが関心を示したことをきっか けとして、タイヤ生産用のナイロン工場を建て、数年後には、デュポンのナイロンにとって、タイヤは最も利益のあがる市場となったのです。
予期せぬ市場からの予期せぬ関心が、本当の可能性を示すものか、単なる好奇心にすぎないかを見分けるには、さしてコストはかからず、若干の感受性と体系的な作業が必要なだけであるのです。
ベンチャー・ビジネスのマネジメントは、以下のことを体系的に実施しなければいけないのです。
ベンチャー・ビジネスのマネジメントの6つのこと
1.外へ出ていかなければならないのであり、市場に出て、顧客や自社のセールスマンと時間を過ごし、見たり聞いたりしなければならないのです。
2.製品やサービスの意味を決めるのは、顧客であって生産者ではないことを、つねに思い起こせる仕組みをつくっておかなければならないのです。
3.製品やサービスが顧客に提供している効用や価値に関し、絶えず自らに疑問を投げかけていかなければならないのです。
4.最大の危険は、製品やサービスが何であり、何であるべきかであり、いかに買われ、何のために使われるかについて、顧客以上に知っていると思い込むことにあるのです。
5.予期せぬ成功を、侮辱ではなく機会として見なければならないのです。
6.企業は、顧客を満足させることによって対価を得て、顧客を替えることによって対価を得るのではないという、マーケティングの基本を受け入れなければならないのです。
2財務上の見通し
設立間もないベンチャー・ビジネスに特有の病気が、市場志向の欠如であり、それは初期段階における深刻な病で、ベンチャー・ビジネスを殺しはしないまでも、その発育を完全に止めてしまいかねないのです。
これに対し、財務志向の欠如と財務政策の欠如は、成長の次の段階における最大の病気となり、とくに、急成長しつつあるベンチャー・ビジネスにとって脅威となるのです。
財務上の見通しをもたないことは、成功すればするほど大きな危険となるのです。
私は起業したころ、たいへん苦労したのは、この分野をぜんぜん理解していなかったためです。
◆ベンチャー・ビジネスの挫折
ベンチャー・ビジネスが製品やサービスで成功し、急成長すると、大幅な増益とばら色の見通しを発表し、株式市場の注目が集まり、とくに、ハイテクなどの流行の分野であれば、大きな注目が集まるのです。
5年以内に売り上げ10億ドルという見通しさえ、あちこちで聞かれるようになるのですが、1年半後、そのベンチャー・ビジネスは挫折し、倒産はしないかも しれないが、赤字のために、275人の従業員のうち180人を解雇せざるをえなくなり、社長は退陣させられ、あるいは大企業に安い値で買い取られるので す。
原因はいつも以下のように同じ3つの原因である。
1.第1に、今日のための現金がない。
2.第2に、事業の拡大資本がない。
3.第3に、支出や在庫や債権を管理できない。
おまけにこれら3つの症状は、同時に起こることがあり、これらの病気のうちの1つにでもかかると、大さく体力を損ない、財務上の危機はひとたび起こるならば、立て直しに非常な苦労と苦痛が伴うのです。
しかし3つの症状は、いずれも予防することができ、ベンチャー・ビジネスの起業家が、金に無頓着であることはほとんどなく、逆にきわめて貪欲であり、そのため、彼らは利益を重視するのですが、それは、ベンチャー・ビジネスとしては間違った態度であるのです。
利益は結果としてもたらされるものであって、最初に考えるべきものではなく、利益よりも現金、資本、管理のほうが、先に問題となり、これらのものがなければ、利益の数字も虚構に終わり、目の前の利益など、1年から1年半で消えてしまうのです。
成長には栄養が必要であり、成長するということは、資金の余剰ではなく、資金の不足を意味し、成長には現金と資本が必要であるので、利益は虚構であり、バランスシートの1項目にすぎなく、しかもこの虚構に対し、ほとんどの国が税金をかけているのです。
成長は、余剰の発生ではなく、債務の発生と現金の流出をもたらし、ベンチャー・ビジネスは、成長が健全であって早いほど、より多くの財務上の栄養を必要と し、新聞や株式情報に大きく取り上げられたベンチャー・ビジネスや、史上最高利益を更新したベンチャー・ビジネスが、2年後には無惨な苦境に陥るのです。
私の起業の経験からしても、ゼロからスタートした企業がある程度の内容になるまでは、もっとさまざまな優遇税制があっても良いのではと思います。
同時に、その頃も公の機関に、いろんなアドバイザーの先生方がいましたが、今から思えば、起業経験のない、マネッジメントのレベルの低い先生が多かったように思います。
間違ったアドバイスをすれば、起業した人たちにとっては命取りになる場合があるので、アドバイザーの選定は非常に重要なのです。
画像は、シンガポールのイベントで松原先生が昨日のイベントで披露した、「パスタ」です。
シンガポールのイベントでは、斬新な盛り付けに参加したお客さま方が驚いていました。
今日も最高のパワーで、スーパー・ポジテイブなロッキーです。