23日 「イノベーションと起業家精神(まとめ)」「予期せぬ失敗、失敗が教える機会の存在、気づかない成功」
昨日から、東京支店では蕎麦学校とラーメン学校の合同の経営講義がスタートし、今回からは、教科書の質疑応答は松原先生の担当になり、私の持ち時間の余裕が出来るようになり、たいへん楽になってきました。
本日のテーマは「危機こそ、チャンス」です。
ビジネスを長くやっていると、いつも通り上手くいっていることが当たり前になり、売上が減少する等の何か異変が起きても、最初はその異変を大きな問題と捉えずに、何か不都合なことがあったので売上が少し落ちているのだとしか考えず、またすぐに回復すると自分に言い聞かせ、安心してしまうことが多いのです。
或いは、売上を上げるために、さまざまな対策を行ない、それだけさまざまな対策を行なえば、本来であれば、十分な売上増が見込めるはずなのに上がらない場合があります。
上記のいずれの場合も、すでに自社のやっていることと、世の中で起きている変化に大きなギャップが存在していることを、売上の減少がアラームを発して、教えてくれているのです。
ところがほとんどの場合は、世の中が変化し、自分のやっていることが世の中の変化に合っていないと考えず、自分のやっていることは正しいが、お客さまがおかしいと信じている場合が多いのです。
そして、少しづつ売上が減少していくのに慣れてしまい、気が付いてみたら、取り返しのつかないくらい、売上が落ち込んでしまっているのです。
この現象がすでに起きているのが、うどん蕎麦業界で、うどん蕎麦業界では、サラリーマンを対象にしている、比較的価格の安い店が苦戦し、比較的価格の高い、高品質なメニューを提供し、女性客を中心ターゲットにしている当社のユーザーさまは、非常に成功していて、現在のような状況でも前年対比130%程度で、伸びているのです。
本当は、危機こそ、神さまがわれわれに、間違っていること、或いは時代に合わなくなったことを教えてくれている、大きなチャンスなのです。
このチャンスを理解するためには、われわれは常に謙虚でなければ、理解することが出来ないのです。
素直で、フレキシブルでなければ、このような変化が正しく、われわれが間違っているのだと思えないのです。
従って、われわれは幾ら歳を取ろうと、会社が幾ら創業以来の年数を重ねようと、常に初心に帰り、謙虚であらねば成功しないのです。
従って、売上が大きく落ちる等の危機こそ、現在のやっていることと、社会の変化のギャップを教えてくれているのですから、イノベーションを起こし、次の時代に大きく伸びるためのチャンスであるのです。
危機の活用の事例は、世の中には数えきれないくらい、たくさんの事例があり、例えば、ソニーのウオークマンは一世を風靡しましたが、カセットのウオークマンから始まり、CD、MDとメデイアが進化を遂げ、コンパクトに使いやすくなったのですが、時代のITの進化は、アップルのipodを誕生させ、MDのウオークマンが消滅したのは、ソニーが時代の変化を見落したのです。
電機業界では、十数年前はキラキラ光っていたソニー、シャープも韓国勢とアップルに生存領域を奪われてしまい、危機をチャンスに出来なかった事例です。
反対に、外食業界では、居酒屋「トリドール」は十数年前の鳥インフルエンザで危機に陥り、焼き鳥ビジネスの将来に見切りをつけ、セルフうどん店の最高のビジネスモデルを構築し、大成功して一部上場までこぎつけたのです。
同じように、牛肉のBSEの問題が発生し、牛肉加工が専門であった柿安本店は危機に陥ったとき、大きく路線変更し、その頃伸びていた、デパ地下の惣菜部門を立ち上げ、危機から脱し、その後、和菓子分野等に進出し、大成功したのです。
このように、危機に陥ったときは、過去の遺産から離れ、新しい伸びている領域に参入する大きなチャンスであるのです。
以上のように、同じように危機に遭遇した企業でも、危機をチャンスと捉えて、非常に成功した企業もあれば、危機に遭遇し、なす術もなく、落ち込む企業があるのです。
この差は、危機をチャンスと捉え、前向きに対応し、イノベーションを起こしたか、そうでないかの差であり、危機こそ、イノベーションを起こす大きなチャンスであるのを、多くの企業とか店舗が活用出来ていないだけなのです。
危機を困ったことと思わずに、チャンスと理解し、危機の到来に感謝し、前向きに取り組むことこそ、イノベーションを起こし、大きく飛躍できるチャンスであったのです。
従って、われわれにとって一番大切な日々の姿勢は、謙虚であり、素直であり、フレキシブルであり、周りのものすべてに感謝の姿勢であったのです。
そして、そのような心を持ち続けるには、空気の清々しい早朝の瞑想、散歩が欠かせないのです。
本年2月21日から始まった、173日間に及ぶ、「イノベーションと起業家精神」の学びを終え、最終のまとめに取り組んでいきます。
「予期せぬ失敗」
予期せぬ成功とは異なり、予期せぬ失敗は、取り上げることを拒否されたり、気付かれずにいることはないのですが、それが機会の兆候と受け取られることは殆どないので、現実にビジネスでもっとも多いのは予期せぬ失敗で、件数が多いだけに、単なる失敗とか、警告と受け取らずにイノベーションのための機会と、とらえることにより、新しい可能性が開け、麺専門店開業における失敗も、ほとんどすべてが、本人にとっては予期せぬ失敗で、開業に当たって、本人は当然上手くいくと思って開業しているので、上手くいかないのは、予想外の予期せぬことで、下記のデータのように、うどん、そば、ラーメン店の新規開業者の約40%以上が1開店年以内に、約70%以上が、開店3年以内に閉店しているのです。(シンクロ・フードの過去に閉店した飲食店の特徴より)
それに比較して、当社の製麺機のユーザーさまと麺学校の卒業生の閉店率は、以下の通りです。
「製麺機のユーザーさま(麺学校に参加していないお客さまの閉店率)」
うどん蕎麦店で、1年未満が6.3%、3年未満が14.4%
ラーメン店では、1年未満は4.6%で、3年未満が12.9%
「うどん学校、蕎麦学校、ラーメン学校の卒業生(製麺機のユーザー)」
うどん蕎麦店で、1年未満が4.9%、3年未満が12.7%
ラーメン店では、1年未満は0%で、3年未満は6.6%
「失敗が教える機会の存在」
予期せぬ失敗の多くは、単に計画や実施の段階における過失、貪欲、愚鈍、雷同、無能などの結果に過ぎないのですが、慎重に計画し、設計し、実施したものが失敗したときには、その失敗そのものが、変化とともに機会の存在を教えることが多く、製品やサービスの設計、マーケテイングの前提となっていたものが、もはや現実と乖離するに至っているのかもしれないし、顧客の価値観や認識が変わっているのかもしれないのです。
同じように売れ続けていたとしても、同じものを買ってはいるが、違う価値を買っているのかもしれず、かっては1つの市場、1つの最終用途であったものが、まったく異質の2つ、或いはそれ以上の市場や最終用途に分かれてしまったのかもしれないのです。
「それらの変化はイノベーションの機会である」
ドラッカー自身、ハイスクールを出て社会に入った早々、予期せぬ失敗を目にし、ドラッカーが見習いとして働いていた商社は、英領インド向けに100年以上も前から金物、とくに錠前を輸出し、毎月、船1隻分の錠前を輸出していて、それらの錠前は、ピンで簡単に開けられる安物だったのですが、1920年代当時、インドでは所得が上がってくるにつれて、錠前の売れ行きは伸びるどころか、かなり急激に減り始めたので、ドラッカーの雇用主は、当然の対策を講じたのです。
錠前を頑丈なものに、つまり上等なものに設計し直させ、しかも余計なコストをかけずに品質を向上させたが、新しい錠前はまったく売れなかっただけでなく、この錠前の輸出の不振が原因となって、この商社は4年後に倒産したのですが、その商社の10分の1の規模しかない、生き残るだけで精一杯だった弱小の競争相手が、この予期せぬ失敗の中に、大きな変化の兆候があることを知ったのです。
インド人のほとんどを占める田舎に住む農民にとって、錠前は神秘的な存在であり、いかなる泥棒も、錠前を開けようとしなかっただけでなく、鍵がかけられることはなかったし、たいてい、鍵はどこかに無くされていたので、ドラッカーの雇用主が生産コストを抑えつつ、苦労して作った頑丈な錠前は、鍵なしでは開けられず、農民にとっては便利などころか、不便極まりない代物だったのですが、一方で、当時成長しつつあった中流階級は頑丈な錠前を必要とし、そもそも錠前が売れなくなったのは、彼らが安物の錠前を買わなくなったことが原因であり、彼らにとっては、改良後の錠前でさえ十分に頑丈ではなかったのです。
そこでドラッカーの働いていた会社の競争相手は、インド向けの錠前を2種類作り、1つは、価格はそれまでの3分の1、利幅は2倍という押しボタン式の超安物の鍵なし錠前、もう一つの価格は2倍、利幅も大きい3つの鍵を付けた頑丈な錠前で、いずれの売れ行きは好調で、その商社は、2年足らずでヨーロッパ最大のインド向け金物輸出業者になり、そして10年後、第2次世界大戦によってヨーロッパのインド向け輸出が中断されるまで、その地位は続いたのですが、これは昔の面白い話の1つに過ぎないし、コンピュータ、市場調査、ビジネススクール出身の経営学修士(MBA)の時代である今日では、われわれは少し賢くなっているのです。
新規開業者が失敗する理由の大半が、過去の常識、過去のノウハウ、過去の知識で開店しているのですが、現在は、既に変わってしまった未来で、過去ではなく、多くの人が現在だと思っている、既に過ぎ去った過去は次の通りです。
1.生産年齢人口の減少に伴う、働き盛りの人口の大幅な減少
サラリーマンをターゲットにしている店が、売上減少、人手不足に拍車をかけている。
2.サラリーマンの小遣いの半減(サラリーマンから、女性とシニアへ)
女性とシニアをターゲットにしている店が成功し、客単価が上昇している。
3.世帯構成の変化で、1人世帯の大幅な増加
客席のレイアウトが、比較的小さい店で4人掛けテーブル席をおけば、満席率が落ちて、売上が上がらない。
4.世界的に草食男子化、肉食女子化で、女性パワー増大
男性の生涯未婚率が22%、女性の生涯未婚率が12%程度と未婚率が上昇し、外食需要を減少させている。
5.機能的ベネフィットから、感情的ベネフィットへ
外食が単なる空腹を満たす手段から、人生を楽しむ手段に変化し、価値の高さが問われている。
6.インターネットの発達による、パラダイムの変換
(事例:①95点以上の高い商品力、②開店チラシ、開店広告は絶対にやってはいけない、③一番でなければ生き残れない、④小が大に勝つ戦略しか有効でなくなる(●競争変数を増やす、●強烈な個性で勝負する)、⑤競争は絶対にしない、⑥学ぶ人とそうでない人のギャップが非常に大きくなる)
7.原材料比率の上昇、高い価値の要求
過去は原材料比率が20~30%程度で繁盛していた店が多かったが、現在では、外食産業全体の平均原材料比率が40%を超え、原材料比率の低い店は、商品力を落とし、お客さま満足度を落とし、お客さまの数を落としている。
8.客席数が重要な課題になっている
都心の一等地以外は、飲食に対するお客さまのニーズが変化し、食事を楽しむ層が増え、回転率が落ち、席数が充分にないと、売上が上がらず、採算が取れなくなってきた。
9.郊外型の店舗の場合、駐車場の必要性は以前より高くなっている
一人世帯が増え、自動車1台に1人のお客さまが増え、駐車場が足りないので、売上が上がらない店が多くなってきた。
以上のように、われわれを取り巻く環境は、われわれが気付かない間に、大きく変貌し、さらに変化が加速していこうとしているので、われわれは日々、学びの時間を確保しないと成功しない時代に生きているのです。
従って、これからの時代を見据えて言えるのは、一生懸命に努力する1%以下の人たちだけが成功の恩恵に預かれて、その他大勢の人たちは日々、生きていくだけに汗を流し、そんなに楽しくない人生を送らざるを得ないのです。
われわれは、真剣に学びの時代に生きていることを自覚しなければいけないのですが、当社の麺學校に入学する、どちかと言えば比較的意識レベルの高いはずの人たちでさえ、十分にマネッジメントの教科書を読んでいなかったり、理解せずに経営講義に参加する生徒さんが多いのが現状で、当社の麺學校に来ないで開店する、99%の人たちのほとんどは、十分なマネッジメントの学びをなしで、開店しているので、上手くいく方が珍しいので、学びには情熱とエネルギーが必要であるのと、日々継続の忍耐と習慣が必要なのです。
「ビジネスの成功=責任×夢×情熱×意志力×集中力×経験×直観力×忍耐」
そして、技術革新によるイノベーションのほとんどは、予期せぬ失敗を起点とし、エジソンの電灯の発明のための何千回にわたる失敗、ダイソンの掃除機の開発の途上で起きた5千回の失敗もすべて、予期せぬ失敗を繰り返し、克服したので成功したので、予期せぬ失敗をイノベーションに活用している多くの事例は、技術革新の分野に見られるのです。
画像は、一昨日の蕎麦学校の作品事例で、イワシの酢漬けと桃のフルーツサラダです。
桃も料理によく合うフルーツです。
今日も最高のパワーで、スーパー・ポジテイブなロッキーです。