本日のテーマは「プラットホーム(規格作り)」です。
朝のウオーキングは、普段は自宅近くのグリーンベルトの中を歩き回っているのですが、正月は通勤の自動車が走っていないので、普段は歩かない市街地へ足を伸ばしているのです。
私の自宅は港に近いので、どうしても港の方へ足が向きがちで、今朝も坂出港周辺を見て歩くと、24時間営業のデイスカウントストアがあり、朝から多くのお客さまが来ていました。
普段は滅多に行かない店舗ですが、中に入って商品を見て回ると、驚いたことに、店内で作った弁当の価格の安いものが、ご飯とおかずがセットになって100円代で販売しているのです。
200円に近い100円代ですが、この商品をこの価格で販売されたら、今まで地元にあったローカルのスーパーは立ちいかなると思える価格で、高い弁当の価格でも200円代の中なのです。
この商品をこの価格で販売できる仕組みを作っているのは凄いことで、これで利益を出すことが出来、従業員の給料も払い、地域の人たちに貢献しているのは驚きです。
本日の「イノベーションと起業家精神」のテーマは、コンテナー船の事例ですが、コンテナー船がこれだけ世界中で成功したのは、輸送時間、輸送コストを下げ、利便性を飛躍的に改善したためであり、今では、海外に荷物を運ぶのは20フィート・コンテナーとか、40フィート・コンテナーが当たり前になりましたが、昔はコンテナーがなかったために、それぞれ異なった荷物の形状、重さにより、船の中のどの位置に、どのような荷物を効率よく積むかというのは、専門家の技術を要していたのです。
ところが、コンテナー船になると、荷物のサイズが統一されているので、そのような特殊な技術が不要になり、重量バランスだけでよくなり、荷物の数を数えるのもコンテナー単位になり、数量チェックが非常に楽になり、デジタル化がはるかに楽になったのです。
従って、これらからのビジネスにおいては、いかにデジタル化し易い仕組みを作れるかどうかが、ビジネスの成否を占めるようになり、当社の場合も、デジタル・クッキングのデータベースの果たしている役割は非常に大きいのです。
このような規格が出来たお蔭で、荷物の海上輸送にイノベーションが起き、海上輸送の世界を大きく変えたのです。
従って、規格作り、要するにプラットホーム作りが、ビジネスの成否を決定する時代になっています。
坂出も昔は港で栄えたのですが、港を見回しても、今はコンテナー船が横付け出来るバースはぜんぜんなく、コンテナーの扱いが出来るようになっていないので、瀬戸内海の内航船だけの港になっているのです。
また、コンテナー船の時代になると、ハブ港の役割が大きくなり、日本の横浜港とか、神戸港も24時間のハブ港ではなく、韓国のインチョン港に負けているのです。
現在のビジネスは、規格作り、プラットホーム作成で、成否の多くが決着し、ITビジネスのほとんどもプラットホーム作りの成否で決着し、PCの初期のころ、アップルのOSがマイクロソフトに破れ、マイクロソフトのウインドウズが世界を統一したのです。
検索エンジンは、最初Yahooが成功しましたが、最終的にはグーグルが世界一になり、グーグルはさらに相乗効果の出るビジネス展開で、ITの世界の覇者になっているのです。
アップルもステイーブジョブズが復帰後、ipod、ipad、iphoneと立て続けに大成功を収めたのは、業界を取りまとめた規格作りで成功したためであり、プラットホーム作りの勝利であったのです。
また、最近、世界で成功している自動車シェアリングのUber、宿泊施設シェアリングのAir bndにしても、すべてプラットホームを作っただけなのです。
或いは、世界の自動車メーカーとか、グーグルが、自動車の次世代革命でしのぎを削っている自動運転車にしても、自社のプラットホームの確立で、自社の開発したプラットホームをデファクトスタンダードに出来るかどうかなのです。
こうしてみると、麺ビジネスの世界もますます、グローバル化が進み、世界的なビジネスモデルのプラットホーム作りに成功した企業が、最終的に果実を手にすることが出来るのです。
それには、海上輸送にイノベーションを起したような、コンテナー船のような発想は欠かせず、最高の良い商品を最小のコストで提供出来るところが、すべてを手に入れることが出来るのです。
すでに、小売業の世界では、アマゾンとか、コストコ、ウオールマート等、国内ではセブンイレブン等が成し終えていることを、麺ビジネスがやっていかねばならないのです。
その意味で、闘いは今始まったところで、誰が明日の覇者になれるかは、今からで、単に飲食業界だけでない、幅広いジャンルの融合が必要なのです。
昨年2月21日から始まった、半年間以上に及ぶ、「イノベーションと起業家精神」の学びの最終のまとめに取り組んでいきます。
2.「認識ギャップ」
「コンテナー船の例」
ある産業や社会的部門の内部の人たちがものごとを見誤り、従って現実について誤った認識を持っているとき、当然、その努力は間違った方向に向かい、成果を期待出来ない分野に努力を集中してしまうのですが、そのとき、それに気づき利用する者にとって、イノベーションの機会となる認識ギャップが存在し、その良い例が、今日の世界貿易の担い手たるコンテナー船なのです。
今から65年前の1950年代初め、貨物船は死滅すべき運命にあるとされていて、1次産品のばら積み以外は、航空機にとって代わられると予測されていて、海上輸送費は急速に上昇し、港での貨物の滞留がひどくなるにつれ、ますます時間がかかる様になったので、船は沖合で待機させられ、貨物はますます滞り、盗みの被害は増大し、主たる原因は、海運業界が長年にわたり、成果を期待出来ない課題に力を入れていたことにあり、彼らは船舶の高速化、省エネ化、省力化に力を入れていて、海上、すなわち港と港の間で経済性を追求していたのです。
船舶は資本財であり、あらゆる資本財にとって、最大のコスト要因は遊休時間で、その間、利益を生まないものに対し、金利を払わされるので、海運業界で働く者はすべて、貨物船の最大のコストが金利であることを知っていたのですが、彼らはすでにかなり低くなっているコスト、すなわち、海上にあって稼働状態にある船舶のコスト低減に力を入れ続けたのですが、問題の解決は、積み込みと輸送の分離という簡単なことであり、空間が充分にあり、事前に作業が出来る陸上で積み込みを行なっておき、後は入港した船に載せるだけのことだったのです。
それは船舶の稼働時だけでなく、遊休時のコストの削減に努力を集中することであり、それがコンテナー船であり、この簡単なイノベーションの結果は目を見張るものがあり、その後、30年間において、海上輸送は5倍に伸び、輸送コストは60%削減され、船が港に停泊する時間も4分の3に削減され、港の混雑や盗みも減少したのです。
以上の事実がわれわれに教えてくれるものは、部分だけを見るのではなく、全体を見通す視点を持つことが大切で、全体を見れば、以上の課題は簡単に分かるのです。
私もサラリーマン時代は船の設計もしていたのですが、そのころはタンカーの全盛時代であり、タンカーの場合はポンプで積み荷のオイルを圧送するので、このようなことに疑問を持ったことはなく、その後、コンテナー船が出現し、コンテナー船の時代になったころには、私は既に造船設計を離れていました。
私の造船設計の時代も、燃料消費の少ない省エネ船等がテーマであり、抵抗の少ない船型の研究が主で、港での荷物の積み下ろしの高速化については、それほど、大きな課題ではなく、船だけの問題として捉えるか、輸送システム全体の問題として捉えるかによって、解決のアプローチはぜんぜん違ったものになり、今回の課題でも、船だけの課題として捉えると、運行時における高速化しか課題にならないのですが、システム全体の課題として捉えると、長い停泊時間がもっと大きな課題であり、荷物の積み下ろしに大きな時間を取られていることが分かり、そちらに目を向けることにより、大きなイノベーションの機会を見つけることが出来たのであり、部分最適を目指すか、全体最適を目指すかの差でもあるのです。
われわれのビジネスもまったく同じであり、当社の場合は製麺機だけの問題として捉えるか、麺専門店全体の問題として捉えるかによって、解決しなければいけない本当の課題がまったく異なり、要するに、システム全体を高い視座で見るか、低い視座で見るかによって、見える世界がまったく異なってくるので、常に高い視座でものごとを見ることが大切であると教えてくれているのです。
当社もお客さまの問題を製麺機だけの問題と捉えずに、使命を麺専門店繁盛支援会社と明確にし、お客さまの繁盛が当社の使命であるとしたので、麺学校で生徒さんに麺、だし、トッピング等の実技だけでなく、マネッジメントに注力し、生徒さんたちを麺専門店の経営者になれるように指導してきたのです。
以上のことは、うどん蕎麦店、ラーメン店にとっても、同じことで、今までのうどん蕎麦店、ラーメン店の店主は、客席回転率を上げれば上げるほど、売上が上がると信じて、回転率が上げるためにサラリーマンを対象にし、女性客が入店すれば、長居するので嫌がっていたのですが、既に20年前の1995年に生産年齢人口はピークを打ち、サラリーマンの数は減少を続け、ピークより12%以上も減少しているのと、サラリーマンの小遣いが半減し、昼食に十分な支出が出来なくなっているのです。
従って、サラリーマンを対象にしている店は、業績を落としている場合が多く、これからは、シニアと女性客を対象にした方が、可能性が高いことを理解している店主は非常に少ないのが麺専門店業界の課題です。
年間のうどん蕎麦店の新規開業者数は約2千店余り、ラーメン店は約3千店で合計5千店余りですが、当社の麺學校の卒業生が年間約350名で、そのうち、開業に至るのは約3分の1の約120名程度なので、年間の開業者のうち、当社の麺學校を卒業して開業する人たちの比率は、2%余りなのです。
年間約5千名余りの新規開業者のうち、当社の麺學校卒業生はわずか120名程度しかいないので、この比率を上げることが失敗者をより少なくするための大きなポイントで、こんなに大きな差があるのは、大半の新規開業者の麺学校に対する認識のギャップであり、麺学校の大切さの理解がなされていないので、このギャップを埋めるのが、当社の課題なのです。
「小さなイノベーション」
認識ギャップは、先のコンテナー船の事例のように、間違った方向への真剣な努力が事態を改善せず、むしろ悪化させ、船舶の高速化が港の混雑と海上輸送の一層の遅れをもたらすような時には、その努力の方向性が間違っていることが多く、そのような時には、単に成果が上がることだけに力を入れるだけで、大きな成果が得られ、事実、認識ギャップを利用するために華々しいイノベーションを必要とすることはあまりなく、海上貨物の輸送と積み込みの分離にしても、トラックや倉庫について行っていたことを応用したに過ぎないのであり、認識ギャップは、産業や社会的部門全体について見られる現象であるのです。
その解決策は、通常、的を絞った単純で小さなイノベーションを行なうことであり、認識ギャップにおいて、本当の課題はお客さまとの価値観が共有出来ていても、努力の方向性が間違っている場合が多く、例えば、先ほどのコンテナー船の場合でも、お客さまの価値観はコストの高くない、迅速な荷物の配送であり、造船所も船の運航会社もそれに向かって、出来る範囲の努力を行なってきたのですが、ほとんどの関係者はコンテナー船にすれば良いと見抜けなかったのです。
また、コンテナー船の場合、港湾の荷役設備に大きな投資が必要であり、現在は香港とかシンガポールでは巨大な港湾設備が備わっているのですが、あの状態まで持っていくことが最初は構想出来なかったのだと思います。
麺専門店に来店されるほとんどのお客さまは、美味しい麺料理を高すぎない、妥当な価格で食べたいと思っているはずですが、お店の店主はこれについて、新しいアプローチを取ろうとしないで、昔ながらのやり方を買えようとしていないので、手打ちに負けない、驚くような美味しい麺料理を、比較的低価格で提供出来る仕組みが出来ているのですが、それを取り入れようとしていないのです。
コンテナー船の技術は以前から、トラック市場ではあったのですが、貨物船市場に導入されるのが遅くなったのと同じで、一部のその技術を利用した人だけが、多くのお客さまを集めて繁栄し、今の時代は、技術面は大変進化しているので、それを利用しようと思えばいくらでも出来るのに、利用していない人が余りにも多く、成功する人とそうでない人の差は、世の中の動きに注意しているかどうかが、非常に大きいのです。
画像は坂出市の西側に位置し、宇多津町の境界にある、標高120mの聖通寺山から瀬戸大橋、岡山方面の眺望です。
四国は28年前までは、本州と道路でつながっていなかったのですが、瀬戸大橋の完成と共に、地域と商圏が大きく変わったのです。
今日も最高のパワーで、スーパー・ポジテイブなロッキーです。