本日のテーマは「際立つコンセプトでの成功店」です。
昨日はドリーム・スタジオでの午前中のセミナー、その後、3組の経営相談に乗り、午後5時過ぎの新幹線で名古屋を発ち、品川に到着したのです。
品川では讃匠の関東地区の新人スタッフの小野澤さんと待ち合わせし、夕食を取り、その後入社後の様子の打合せを行なったのです。
入社後、2ヶ月余りで1ヶ月間の本社研修を済ませた後、1ヵ月間の営業活動の間の問題点を確認したかったのですが、到着したのが7時過ぎであったので、まず腹ごしらえに、品川駅の中の以前から気になっていたカレー屋「Camp」に入ってみることにしたのです。
品川駅の構内の飲食店の中で、一番長い列になるほど、たいへん繁盛しているカレー屋さんで、コンセプトが素晴らしいだけでなく、店舗力、商品力、サービス力に一貫性を持って貫かれている素晴らしい事例なので、今後の経営講義の材料に最適なので、一度、入ってみたかったのです。
最近稀に見る、コンセプトが素晴らしくて、非常に成功している事例の店舗で、分かり易いコンセプトで、カレー料理は勿論、店舗の内装、外装すべてにコンセプトが貫かれているのです。
コンセプトの一貫性があるので、非日常性の店内に入っても違和感がまったくなく、瞬間的に非日常の世界に飛び込めるのです。
もともとカレーは、キャンプではよく作られる料理で、キャンプにはピッタリの料理であり、健康志向で、野菜をたくさん使ったカレーをテーマにしているのです。
従って、この店舗のコンセプトである「Camp」は、カレーを食べるシーンのひとつであるキャンプでのカレーから作り上げていて、その食べ物を食べるシーンからコンセプトが作られている面白い事例で、今まで誰も思いつかず、考えもしなかったユニークなコンセプトなのです。
だから、コンセプトがどこかにあるようなものでなく、このように際立つ個性があればあるほど、小が大に勝てるビジネスになり易いのです。
店内の内装もキャンプのテント内を想像させるような内装で、水の入れ物とか、フォークもスコップの形をしていたり、すべての小道具もキャンプをテーマに統一されていて、狭い店内ですが、照明もランプのようで、まさにテントの中で食事をしているような雰囲気を醸し出し、店員もキャンプのときのような恰好をしているのです。
カレーの味もキャンプで短時間で作るカレーそのもので、ルーの濃度が浅く、家庭料理のような軽いカレーですが、スパイスの利いたインパクトのある味で、美味しい味付けでした。
駅中にある店舗ですが、非日常性を演出している素晴らしいコンセプトの店で、このような際立った個性があり、明確なコンセプトのレストランが成功している珍しい事例です。
ボストン・コンサルテイング・グループが提唱しているアドバンテージ・マトリックスによれば、小が大に勝つ戦略として最も優れた戦略は際立った個性を持つことですが、この戦略の典型的な成功事例です。
以前は、紅虎餃子等を展開している際コーポレーションが際立つ個性での成功店をたくさん作っていたのですが、最近は余り見なくなり、このような際立つ個性で成功している店舗が少なくなってきたのですが、そのような中でも珍しい成功事例なのです。
この店舗のコンセプトである、キャンプとカレーの関連性を上手に活用した事例であり、このような明確なコンセプトを持つ場合とそうでない場合のビジネスの結果は大きく変わってくるのです。
こうして考えてみると、料理と関連性が深いものをつなぐことで、新しいコンセプトを作ることが出来そうで、うどんとカレーなどもストーリーが描けそうな商品です。
また、うどんであれば、農家とか、小麦、醤油、いりこ、昆布等、食材とか、うどんが作られるシーン等、さまざまな関連要素が目に浮かぶのです。
蕎麦も同様で、蕎麦に関連した食材、シーン、古くからの物語等、蕎麦に関連した要素をつなぎ合わせることも出来るのです。
私はこのように、成功している店舗のコンセプトの研究を行ない、コンセプトこそがそのビジネスの本質であることを突き止めたのです。
ライバル店を見たり、繁盛店を見る場合にコンセプトの探求は、ビジネスの本質を理解する上で欠かせないのです。
丁度1年前の昨年2月21日から始まった、半年間以上に及ぶ、「イノベーションと起業家精神」の学びの最終のまとめに取り組んでいきます。
顧客戦略
◆GEとマコーミック
大型蒸気タービン市場におけるGEのリーダー企業としての地位は、第1次大戦前、顧客の事情を徹底的に検討することによってもたらされ、発電用として、それまでのピストンエンジンに代わって登場した蒸気タービンは、設計上、高度のエンジニアリングを必要とする複雑な装置で、調達した電力会社がメンテナンスしきれるものではなく、電力会社は、新しい発電所を建設する5年から10年ごとに蒸気タービンを調達するのですが、そのためには技術的なバックアップが必要で、蒸気タービンのメーカーがコンサルティングのための大きな支援チームを組織し、維持しなければならず、アメリカの法律では、電力会社が大きな支出をする場合、州の公益事業委員会の許可が必要であったので、電力会社は、コンサルティングには金を払えず、各州の公益事業委員会は、そのような仕事は電力会社自らが行うべきであると判断していたのですが、各州の公益事業委員会が認めなかったので、GEは、コンサルティング費用を請求できず、一方、蒸気タービンそのものの寿命にかかわらず、ブレードは5年から7年ごとに替えなければならず、しかもブレードは、蒸気タービンを製造したメーカーから調達しなければならなかったので、GEは発電所向けの世界一のコンサルティング部門をつくり、コンサルティング部ではなく、関連機器販売部と名づけ、しかもこのコンサルティング部門は、電力会社に対するサービスについて代金を請求せず、蒸気タービンそのものの価格も、競争相手より高くせず、GEはコンサルティング部門のコストと利益を交換用ブレードの価格に上乗せしたので、10年もたたないうちに、ほかのメーカーもこのシステムを理解し、真似を始めたのですが、その頃には、すでにGEが世界市場においてトップの地位を占めていたのです。
以上は、お金の貰い方に関する戦略であり、最終的に必要とする額を入手出来れば良いのであり、お客さまの事情に合わせ、お客さまが納得できる貰い方に変え、最終的にライバルに打ち勝ったのですが、この方法であれば、回収に時間がかかるので、資金に余裕がない会社には難しい方法であり、このようにさまざまな戦略は資金余裕のある場合と、そうでない場合であれば、資金余裕がないと、取れる戦略の範囲が狭まるのです。
このGEのはるか前の1840年代、顧客の事情に対応するという同じ考え方が分割払いなるものを生み出し、サイラス・マコーミックは、収穫機を発明した大勢の1人にすぎず、需要があることは確かだったのですが、ほかのメーカーと同じように、彼も製品を売ることができなかったのは、農民に購買力がなかったためで、収穫機の代金が2、3年で回収できるのは、誰にもわかっていたのですが、当時、農機具代を農民に貸す銀行はなく、そこでマコーミックは、3年の分割払いで売ることにした結果、農民は彼の収穫機を買えるようになり、事実、買ったのです。
一般的に、メーカーは(経済学者、心理学者、道徳家と同じように)、合理的に行動しない顧客についてこぼすのですが、合理的に行動しない顧客など存在せず、昔からいわれるように、存在するのは無精なメーカーだけであり、顧客は合理的に行動し、単に、顧客の事情がメーカーのそれと異なるだけであり、公益事業委員会の規則や規制は、意味のない恣意的なものに思われるかもしれないのですが、公益事業委員会監督のもとに事業を行わなければならない電力会社としては、それは現に存在する事実であるのです。
アメリカの農民は、1840年代の銀行が考えていたよりも、信用力はあったかもしれないのですが、当時のアメリカの銀行が、農民の設備投資に対し融資をしなかったことも事実で、イノベーションのための戦略は、それらの事実が、顧客にかかわりを持つかぎり、不可避の事実として認めるところから始まり、顧客が買うものは、それが何であれ、彼らの事情に合ったものであり、事情に合ったものでなければ、何の役にも立たないのです。
現在は以上のような時代と異なり、ビジネスを始めるバックグラウンドは、至れり尽くせりに準備されていて、非常に恵まれ、ただ一つ、上記の時代と異なるのは、ビジネス自体が非常に複雑になっていて、われわれは、多くのことを学ばないと成功せず、時代の移り変わりの速度が高速になり、ビジネスがグローバル化し、自動車メーカー等もグローバル化に遅れたメーカーが淘汰されてしまい、その典型的な事例はイギリスの自動車メーカーであり、ほとんどのイギリスの自動車メーカーは消えるか、他の自動車メーカーに買収されたにもかかわらず、日本のほとんどの自動車メーカーが生き残っているのは、グローバル化で成功し、特に、自動車業界で最後発のホンダが、現在、日本では2位、世界では8位になっているのも、グローバル化の成功なのです。
4価値戦略
起業家戦略としての価値戦略は、メーカーにとっての製品ではなく、顧客にとつての価値を提供することで、この戦略は、顧客の事情を、顧客が買ってくれるものの一部として受け入れるという前述の戦略の延長線上にあり、アメリカ中西部のある中堅企業は、ハイウェイ建設用ブルドーザー、露天掘りの表層土除去用重機械、炭鉱の石炭運送用大型トラックの潤滑油の半分以上を供給していて、この潤滑油メーカーは、あらゆる種類の潤滑油を揃えている大手石油会社と競争関係にあり、このメーカーが成功しているのは、単に潤滑油を売ることによってではなく、このメーカーは一種の保険を売り、土木業者にとっての価値は潤滑油そのものではなく、機械の稼働であり、大型機械が動かなくなるために失われる時間は、潤滑油の年間費用をはるかに上回る損失をもたらし、そもそも請負契約そのものが、工期を正確に算定し、寸刻を惜しむことを前提にしていて、ペナルティは厳しいのです。
その中西部の潤滑油メーカーは、そのような土木業者のために、機械のメンテナンスについて分析を行ない、次に、年間のメンテナンス計画と費用を示し、潤滑油を原因とする年間稼働時間の損失を一定時間内に抑えることを保証し、もちろん自社の潤滑油の使用を前提とするので、土木業者が買うのは潤滑油ではなく、彼らは、稼働時間という、彼らにとって最も大きな価値を買うのです。
最後の例は、いわば製品からシステムへの移行というべきものであって、ミシガン州ジーランドのハーマン・ミラーの例であり、ハーマンミラーはイーメス椅子なるオリジナル・デザインの椅子メーカーとして有名になったのですが、ほかのメーカーがオリジナルの椅子に進出してくるや、一般企業や病院のオフィス全体を売るようになり、大きな成功をおさめ、さらにその後、未来オフィスなるものが流行しはじめると、施設マネジメント研究所を設立し、仕事の流れ、生産性、労働環境、コストの観点から、オフィスのレイアウトとオフィス機器に関するアドバイスを売るようになり、同社は、顧客にとっての価値を明らかにし、「顧客が実際に買っているものは、仕事や志気や生産性である。したがって代金も、それらのものに対してでなければならない。」と言っているのです。
当社のような製麺機メーカーにとっても事情はまったく同じで、お客さまが買うのは、製麺機ではなく、美味しい麺が簡単に誰にでも作れ、安定的に供給されることであり、最終的に美味しい麺作りを通して、永く繁栄することであるので、そのためには、美味しい麺作りのノウハウはもちろん、性能の良い、安全で、使い易い製麺機、365日年中無休のメンテナンス、麺学校でのデジタル・クッキング、商品力アップ等のテクニック、ノウハウの習得、経営講義でのマネッジメントの理解等が欠かせず、当社はそれらの麺専門店の経営者に必要なテクニック、ノウハウの提供をすべて行っており、更に、グローバル化に合わせて、それらを海外に広げているのです。
われわれのビジネスの先輩には、既にグローバル化で成功した、日本の自動車メーカーと、グローバル化で失敗した、日本の家電メーカーの貴重な教訓があり、失敗した先輩たちの轍を踏まないためにも、われわれは常に学び続けなければいけないのです。