D.高い商品力を目指さなければいけない理由は次の通りです。
1.市場のリーダーになること
ビジネスにおいて、永く繁栄するための一番単純な対策は、どんなに小さい市場でも、市場のリーダー(トップ)を目指すことです。これは、多くの店舗、多くの新規開業者が忘れてしまっている大切なことですが、マーケット・リーダーになること、その市場でのリーダーシップを取ることに執着していないことです。ほとんどの店舗は売上を幾らにしたいとか、営業利益を何パーセントにしたいとかの目標とか、希望は持っています。
そのような目標は、マーケット・リーダーになれば簡単に解決出来るのに、マーケット・リーダーになることを考えてもいないのです。
私も製麺機ビジネスに参入した当時から、業界トップを目指していました。だから、トップになれたのです。しかし、30年近くもかかってしまいました。
それは、どうすればトップになれるかを十分理解していなかったためです。
トップになるには、次の3つの価値基準の一つだけに焦点を当てて、取り組むことです。
① オペレーショナル・エクセレンス
(生産方法や販売方法の改善を目指すアプローチで、スピードやコスト優位性により競合他社との差別化を図る方法で、お手軽方向です。)
(注記)従って、オペレーショナル・エクセレンスを目指すことが出来るのは、規模が大きい場合だけで、新規開業者とか、規模の小さい店はオペレーショナル・エクセレンスを絶対に目指してはいけないのです。要するに、「旨い、安い、早い」は目指してはいけないのです。
(事例)マクドナルド、セブン・イレブン等のコンビニエンス、丸亀製麺、吉野家等
この戦略は一番フィットしているランチ価格帯は約500円のビジネスです。
② 製品(商品)リーダー
(たえず最新で価値の高い製品・サービスを提供し続けることで競争優位性を保ち、イノベーション追求型で、常に新しい製品・サービスで高い価値を提供しつづけることにより競合他社が模倣しにくい状況をつくり出す)
(注記)常に95点以上の高いレベルの商品力を保ち続けることです。
(事例)美登利寿司、花まる(寿司)等
この戦略が一番フィットしているランチ価格帯は、700円~2000円程度で、従って、われわれが最も取らなければいけない戦略は、製品リーダーで、商品力にウエイトを置いた戦略です。
③ カスタマー・インテイマシー
(顧客ロイヤルティを築き上げることに焦点をあて、顧客との親密さを強化し、販売力を高めるとともに、顧客からのフィードバックを改善に活かすアプローチで、他社ブランドへの乗換えが生じにくい状況を生み出す)
(注記)常に95点以上の高いサービスレベルを保ち続けることです。
(事例)カッシータ、リゴレット等
この戦略が一番フィットしているランチ価格帯は、2,000円以上です。
2.カスタマー・バリュー(顧客価値)を上げること
まだ、1回も来店したことのないお客さまが、最初に来店するかどうかは、お店のコンセプトの良否が大きく影響をします。
例えば、お店の前を毎日、何十人、何百人、何千人と通行していても、入りたいと思わない限り、お客さまが入店しないのです。
入りたいかどうかを判断する決め手になるのが、店の外観であり、外観はコンセプトの表現そのものなのです。一回でも来たお客さまが、繰り返し、繰り返し、リピートするかどうかを決める要素がカスタマー・バリュー(顧客価値)であり、カスタマー・バリューが高くなればなるほど、お客さまのリピートも激しくなります。
① 「カスタマー・バリュー 顧客価値」について
カスタマーが利用したときのモノやサービスの「価値」は、次のような方程式で決まります。
価値=(「結果」のクオリテイ+結果を得るための「プロセス」のクオリテイ)÷(「売価」+「手に入れるのに必要なコスト」)
或いは
価値=(「結果」のクオリテイ+結果を得るための「プロセス」のクオリテイ)-(「売価」+「手に入れるのに必要なコスト」)
上記を単純化すると、「価値=クオリテイ÷コスト」になります。お客さまにとっての価値とは、詰まるところ、クオリテイとコストとのバランスであったのです。これは、うどん蕎麦店等で、食べた時に得られた商品の品質の満足感と支払った価格とのバランスなのです。要するに価値が大きいほど、お客さまに再利用して戴ける頻度が高まり、売上が上がり、利益が上がるのです。
更に、上記の価値をもっとさまざまな視点から深く掘り下げていけば、さらに多くの学びが得られます。
クオリテイについて、コトラーは次のような項目を挙げています。
「結果」については、
① 商品そのもののクオリテイ
(提供する商品の機能・品質・性能などの提供価値のコアになるもの、カスタマイズによる魅力度アップも含む)
② イメージ・クオリテイ
(ブランド価値であり、企業や商品のブランドそのもので、商品の機能ではなく、取引自体や保有することに価値を感じる)
「プロセス」については、
① 従業員のクオリテイ
(従業員の能力・人間性・信頼性がこの価値の源泉、また、顧客は従業員が社内の内部資源をどれだけ顧客のために調達できるかを見てい る、他にソリューション・クオリテイとして、顧客の課題を持っている経営資源を活用しながら解決すること、顧客が気付いていない課題を抽出し、それを解決 することで価値が高まる)
② サービス・クオリテイ
(アフター・サービスや支払い条件、購入のし易さ、付属景品などのコア価値以外の補助的なもので取引の魅力度を高める、他に提供タイ ミング・クオリテイとして、顧客の購買タイミングに合わせて提案すること、顧客が欲しい時に提供出来ること、顧客が求める情報をタイミングよく提供出来る こと)
コストについては次の通り
「売価」については、
① 金銭的コスト
(顧客が商品、サービスを購入するために支払う金額のこと、価格を下げることにより、価値を上げる側面もある)
② 心理的コスト
(初回購入時の不安・購入時のストレスなど)
「手に入れるのに必要なコスト」は
①時間的コスト
(顧客が商品、サービスを手に入れるために要する時間)
②エネルギーコスト
(労力コスト等のことで、購入するまでに情報を集めたり、社内で根回ししたりする手間、商品探索や購入時の手続き、店舗から自宅に持ち帰る労力等)
3.カスタマー価値方程式の考え方
誰を顧客にするかによって、クオリテイの取り組みの姿勢は異なるのです。
例えば、飲食店の場合、「結果」としての料理のクオリテイは素晴らしいが、「プロセス」の従業員の態度が悪かった場合、男性客の場合は、料理が美味しければ、再度、利用する可能性があるが、女性客の場合は、2度と行かない場合が多いのです。
要するに、どんなに「結果」が良くても、「プロセス」が気に入らなければ、女性客には支持されなく、女性は男性より寛大ではないのです。
従って、誰を顧客にするかによって、クオリテイに関しても、「結果」のクオリテイ・マネッジメントと「プロセス」のクオリテイ・マネッジメントへのウエイトの置き方が異なります。
いずれの場合でも、「結果」のクオリテイは必須ですが、男性の場合は「プロセス」のクオリテイが劣っていても支持される場合がありますが、女性の場合は「結果」と「プロセス」のクオリテイの両立が重要なのです。
「カスタマー・ロイヤルテイの経営」では、顧客価値の方程式の分母についても下記のように述べています。
「(顧客)ロイヤルティを考えた時、「プロセス」よりも、売価その他の入手に必要なコストのほうが、より重要な場合が多い」と書かれていますが、これも誰を顧客にするかによって異なってくるのです。
これはあくまで男性客を対象にしているように思え、女性客には当てはまらないと思います。
いずれにしても、高いサービス・レベルが問われる時代に、「売価」を下げるのではなく、高いクオリテイで高い顧客価値が重要なのです。併せて、分母の入手するためのコストについては、入手しやすさを追求することは大切です。
画像は蕎麦学校生徒さんの作品事例です。
今日も最高のパワーで、スーパー・ポジテイブなロッキーです。