日本の地を踏み、羽田空港経由で、高松空港から、家内の迎えの車に乗ると、夢のような出張も終わり、再び、現実の世界に引き戻されています。
久しぶりに香川の車窓に広がる景色を見ていると、ロンドン、パリ、ドイツ、スイスで見た住宅と日本の住宅の差、その周辺の景色の違いに驚きます。
もし、今でも昔の農村風景のような景色が広がっていれば、恐らく、ドイツとか、スイスのようなイメージを描いたかも知れません。
ヨーロッパの国々では、昔ながらの生活様式を大切にして、住宅等も昔のままの外観で、大切に使われているので、街全体が公園のようでもあるし、街全体が立派な観光資源になっているのです。
今回訪問した、イギリス、パリ、ドイツ、スイス等は、伝統の良さを、頑なに守ろうとしているのが分かります。
それに引き替え、日本は簡単に日本の良さを忘れ去ったような気がします。
これは目に見える景色だけのことではなく、目に見えない文化の部分も含めてです。
ロンドンでも繁盛している和食の店で働いていた若者のほとんどが、ニユージーランドから来ていて、熱心に和食の修行に取り組んでいたのです。
現在の日本では、若い料理人にとって、和食のジャンルは人気のないジャンルで、和食を究めようとする料理人は少ないのです。
反対に、日本人以外の外国の若い人たちの多くが、和食を究めようとしています。
座禅とか、古武道も同様で、日本人以外の若い人たちが海外から訪ねて来ています。
日本にいれば、日本的な良さは当たり前すぎて、われわれはその価値に気づいていないのですが、日本文化には世界が認める、素晴らしい価値があるのです。
永い時間に育まれた文化は簡単に作ることが出来ないので、ヨーロッパと北米を比較すると、文化の違いがよく分かります。
アジアの外れの島国であった日本も、アジアの他の国々とは違った独特な文化を育んできた国です。
日本文化を深く理解し、それを身に付けた上で、日本的な良さを何かの商品として世界に広めることが出来れば、素晴らしいビジネスにもなり、日本独特な強みになる事が出来ることがよく分かりました。
昨日のフェイスブックの画像でご紹介したヒュースロー空港の「YO! SUSHI」も日本の良さをイギリス人が活用して、ビジネスで非常に成功している事例です。
アップルのステイーブ・ジョブズも日本の禅文化に魅せられて、研究し、それをビジネスに活かして、大成功したのです。
われわれ、日本人こそ、もっと日本の良さを研究し、掘り下げて、次に時代の新しいビジネスに取り入れていかねばならないのです。
今までは、アジア圏以外の外国は、アメリカが主体であったので、伝統文化を大切にするヨーロッパの良さと、日本との大きな差を感じました。
本日も、ドラッカーの名言の解説で、今日のテーマは「生産性を決定するのは機械ではなく労働者の動機」です。
65.生産性を決定するのは機械ではなく労働者の動機
生産性とは機械や道具や手法の問題ではなく、姿勢の問題である。
換言するならば、生産性を決定するものは、働く人たちの動機である。
(解説)過去100年間で、肉体労働者の生産性は50倍にも、或いは100倍にもなったと言われています。
現に、今回、訪問したハンガリーの国民一人当たりのGDPは、1980年から2014年までのたった34年間(100年間の1/3)で、44.7倍にも増加していたのです。
国民一人当たりのGDPとは、その国の人たち一人当たりの生産性なのです。
アメリカを初め、世界のほとんどの先進国は今でもずっと国民一人当たりのGDPを伸ばし続けているのですが、日本は25年前から止まったままで、まるで時間が止まった国のような状態なのです。
これは企業に置き換えても、まったく同じことで、従業員一人当たりの売上、付加価値が伸びていなければ、その企業は時間が止まっていることになります。
飲食店についても、同じことが言え、既存店の前年対比の売上の伸びが止まると、危険な状態になり始めます。
だから、既存店の売上を伸ばし続けなければいけないのです。
1980年から、2014年までの過去34年の間、日本は1.8倍、イギリスは6.4倍、フランスは約4倍、ドイツは3.5倍、スイスは2.5倍で、いずれも日本を大幅に超えています。
大国アメリカでさえ、この間、4.3倍に拡大して、今も増加を続けているのです。
日本の成長率の低い一番の原因は、この間、国のリーダーだった政治家の意志の欠如であったのです。
過去の肉体労働の時代から、現在のような知識労働者が主体の社会になれば、国の競争力とか、企業の競争力の源泉は、意志の強弱と戦略の巧拙になってきます。
従って、それだけトップに問われる資質が大きく、責任重大で、複雑になってきているのです。
トップは意志を強くして、あらゆることを学び続け、知識のレベルを上げ続けなければ勝てない時代になりました。
これは、企業のトップだけでなく、トップに続く人たちもまったく同じことが要求され、それを組織全体が理解して、実践している組織ほど強い組織であり続けることが出来るのです。
往々にして、トップは日々の業務の中に埋没されそうになりますが、これからのトップは絶対にそうなってはいけないのです。
常に高い目標を掲げ続け、何があっても学び続け、進化し続けることが要求されている厳しい時代になっているのです。
私も、若い時代と比較して、今の方がはるかに強い意志で、はるかにたくさんのことを学び続けていると思います。
トップには年齢は関係ないし、あるのは責任だけです。
そして、これは跡に続く人たちもまったく同様なのです。
ドラッカーの学びを最近、再度、深く学んでいくと、今までの学びの底の浅かったことがよく分かります。
トップ自身の動機付け、モチベーションが一番大切であり、併せて、一緒に働く人たちのモチベーションを上げ続けるのが、トップ・マネッジメントの重要な役割なのです。
一般的に、ほとんどの会社は従業員満足度を上げるのに、仕事への厳しい責任を問うことが比例しているとは思っていないのです。
ところが、ドラッカーはそうではなく、真の従業員満足度を上げるには、仕事への厳しい責任の追及は欠かせないと言っているのです。
トップ・マネッジメントだけではなく、仕事に携わっている人たち、全員に対してなのです。
日本の会社は温情主義な部分があるので、この部分が過去、一番弱かった部分ではなかろうかと思います。
厳しく責任の追及がなければ、仕事のレベルがあいまいになり、素晴らしい仕事を仕上げたことへの達成感が沸かないのです。
仕事の達成感こそ、従業員満足度の一番、大切な部分だったのです。
常に困難な目標にチャレンジして、達成感を味わうのを楽しみに出来るような社内文化を作らなければ、知識労働者の成果は上がらないのです。
だから、アップルとかグーグルは、社内の環境を変えることで、雰囲気を変え、社内文化を変えてしまったのです。
成果を上げ続けている会社、即ち、社員一人当たりの売上を上げ続けて、更にお客さまに信頼され続けている組織は、社内文化作りに力を入れていたのです。
価値観、使命を明確にして、それを社員全員に訴え続け、社内文化として定着するには、相当な時間が必要になってきます。
私も年齢はある程度いきましたが、このようなことの大切さに気づくことが出来、自社でも実践し、併せて麺学校の経営講義でも生徒さんに教えることが出来るのは、素晴らしいチャンスだと思っています。
まだ、事業経験のない生徒さんたちに以上のような話をしても、一般社会の常識とは離れているので、なかなか理解してくれる生徒さんは少ないのですが、上手くいかなかったりすると、やっと理解が出来るのです。
私もこのようなことを理解するのに、相当時間がかかったので、今から始める生徒さんたちにとっては、無理のないことかも知れませんが、間違った方向に行 き、私のように人生の時間のロスを作って欲しくないので、一人ひとりの生徒さんと真剣に向き合わずにはいられないのです。
「マネジメントの判断力、指導力、ビジョンは、戦略計画という仕事を体系的に組織し、そこに知識を適用することによって強化される」とみるべきである。
『マネジメント(P・ドラッカー)』より
画像は、車窓から見たスイスの農村風景で、このような素朴な建物ばかりです。
いかにもスイスといった風情を醸し出しています。
今日も最高のパワーで、スーパー・ポジテイブなロッキーです。