昨日は、朝7時に香港のホテルを出発し、午後1時過ぎには台北国際空港に到着しました。
空港には、台中からうどん学校の生徒で、近々にうどん店を開店する周さんが出迎えてくれ、一緒に台中にある周さんのうどん店に向かいました。
周さんは、台湾の南の離れ小島で、中国本土の近くにある、膨湖島の出身で、小さいころに両親を亡くし、苦労しながら、台湾本土の高校を出て、和食の世界に入り、日本のうどんチェーン店で勤務した後、台中で和食の店を4年前に開業したのです。
この和食の店では、新鮮で良い食材を提供するために周さんは、睡眠時間を削り、台北の市場まで毎日車で通い、美味しい料理を提供し続けたそうです。
その結果、和食の店は大繁盛し、新規にうどん店を開店するために、当社のうどん学校に参加し、今回、80席の規模のうどん店開業にこぎつけたのです。
うどん学校参加中も、周さんは特別に熱心だったので、密かに私も、もし開店するようになれば、開店の前後に必ずチェックに行ってあげようと思っていました。
その位、周さんは情熱を持って、うどん学校に参加していて、際立って目立っていたのです。
私は当社のスタッフ、麺学校の生徒さん、お客さまを問わず、真摯に努力する人が大好きで、真剣に努力する人には、犠牲を払っても、何とかしてあげたくなるのです。
周さんの運転で、台中のうどん店に到着すると、スタッフたちが揃い、開店前の練習に熱心に取り組んでいました。
店内を案内して貰った後、一品料理から始まり、うどん料理まで、数あるメニューすべてを次々に造って貰い、チェックしました。
さすがに周さんは和食の料理人で、味付けに関してはほとんど問題がなかったのです。
うどんの麺質に関しても、なかなかの食感で、これであれば、直ぐに台湾で一番美味しいと言われるうどん店になることは間違いないと思いました。
一番気になったのは盛り付けで、次つぎと盛り付けの問題点を修正していきました。
盛り付けは私の得意分野で、少し手を入れただけでも、見違えるようになります。
次から次へと、ほぼ全メニューの試食を行ない、試食しながら、食材のカット方法等を料理スタッフに見せながら指導をしていきました。
試食が全部終わった頃には、既に満腹で夕食も要らない状態であったので、周さんに、台中で最近たいへん繁盛しているカフェに案内して貰いました。
そのカフェは台中駅の前にあり、1927年創業の宮原眼科の建物を使った、たいへんユニークで面白いカフェでした。
内装、外装のユニークさにも驚きましたが、店内のウエーター、ウエイトレスのコスチュームも時代背景に合わせて、たいへん面白く、特にウエイトレスは愛嬌があり、素晴らしかったのです。
すべて同じようなコンセプトの時代背景に合わせた、客席のあるカフェは2階で、1階にはたくさんの種類のユニークなお菓子売り場であり、平日の夜にも関わらず、多くのお客さまが詰めかけていました。
2階のカフェへ入ると、同じくユニークな内装ですが、提供される商品、食器、什器もたいへん凝ったものばかりで、何を見ても感動しました。
私は世界中で、面白いものを見続けてきているので、そんなに驚くことは少ないのですが、今回の宮原眼科には、驚かされました。
ユニークなコンセプトとコンセプトの一貫性が行き届いた、素晴らしい事例であり、こんなに素晴らしいコンセプトが貫かれた店を見るのは久しぶりでした。
このようなユニークで、際立った個性があると、大成功するという素晴らしい事例でした。
今回、短時間ではあったのですが、香港訪問の後、スケジュールの無理をして台中の周さんのうどん店、そして、アウトスタインデイングなカフェ「宮原眼科」まで、足を伸ばして素晴らしい体験をすることが出来ました。
当り前のことを当たり前にやるのではなく、コンセプトに合った、際立った個性の発揮、イノベーションこそがビジネスの原点なのです。
併せて、価値観の順序を棚卸して、使命を明確化し、コンセプトを明確にすることが王道であることを見せつけられたような気がしました。
使命とか、コンセプトを明確にしないでも、うどん店、蕎麦店、ラーメン店を作ることが出来ます。
しかし、光り輝くような存在になったり、永く繁栄するには難しいことを、私は自分自身の体験を通じて強く感じるのです。
今回の旅もその思いを強化してくれた素晴らしい体験でした。
本日も、ドラッカーの名言の解説で、今日のテーマは「純利益とは利益の蓄積ではなく、未来に発生するコストの留保」です。
82.純利益とは利益の蓄積ではなく、未来に発生するコストの留保
会計学者や経営者は「純利益」という言葉を使うが、企業経営ではそんな言葉を使ってはいけない。
「フューチャー・コスト(未来費用)」と呼ぶべきだ。
企業というのは、リスクを負うために失敗することもある、そのときのために未来のコストを留保してあるのであって、利益の蓄積ではないのだ。
(解説)私のドラッカー・マネッジメントの師である、国永先生のドラッカー名言録には、利益に関し、非常に理解のし難い、次のような説明があります。
「利益が出るのは正常の状態ではない」
利益(プロフィット)とは人間の努力によって生まれ、損失(ロス)という正常な状態を覆すことから生ずる。
物事がすべて純粋な確率(プロバビリティ)に基づいて進行するとすれば、正常な状態とは損失であり、すなわち、利益は発生しないはずである。
こうした正常の確率を逆転させる仕事こそ、経営者やマネジャーの任務なのである。
すなわち、マネジャーの本来的な責任とは、潤沢でない貴重な資源である人間や資材を受託し、これによって利益を社会のために生み出すという重要な責任を託されているのだと考えるべきであるとドラッカーは説くのだ。
これは、今さら言わなくてもいい基本的なことなのであるが、こうしたファンダメンタルなことを知らない人が驚くほど多いのに、私はびっくりするとドラッカーは言う。
そして、中でもこれを十分に理解できないのが政府の役人だと皮肉る。
こんなことが理解できない理由は、政府および官僚という秀才たちは、資金を調達するのに何らの困難を感じた経験がないからだと、さらにドラッカーは厳しく語る。
こうした安易な資金調達方法に慣れてしまうと、正常な社会では、放っておけば損失が生まれるのがごくノーマルなプロセスであり、利益はそう安々と安易なやり方では生まれてこないという考え方が、なかなかのみ込めない。
正常な状態は金が出ていく状態であり、入ってくるのではない、と考えることができにくくなるのである。
さらにここでもう1つ言わなければならないこととしてドラッカーは、マネージャーがする仕事、すなわち経済的な利益を生む仕事というのは、かつては主とし て個人が担当していたのだが、だんだん個人の参加の範囲が狭められてきて、むしろ1つの企業体という組織活動になってきている点に論及する。
それに対応するためには、いろいろな規定を設けなければいけないし、十分なメカニズムを整えて目的に向かっていかないと、万事がうまくいかない。
このように、かつての個人責任の時代とは大きく様変わりしているので、そうおいそれと利益は生み出されてこない。
したがって、確実性の高いやり方で利益を生むのが、ますます困難な時代が到来していると、ドラッカーは指摘するのである。
以上のように、普通にビジネスをやれば、利益が生まれるどころか、損失が生まれるのが当たり前で、普通の状態ではなく、利益が出る状態に持っていくのが経営者の責任であると指摘しているのです。
このことは、私が起業して、なかなか軌道に乗らず、利益が出なかったので、身に染みてよく分かります。
利益が出なかった原因の一つが利益に対する理解度が乏しかったためで、最初頃は利益を追い求めていたのです。
先に利益を追い求めていると、利益は得られないどころか、お客さまが離れてしまい、最悪の結果を迎えるのです。
利益を追い求めるのではなく、顧客価値を創造し続けることであったのです。
このことをわれわれに、シッカリ教えてくれたのは、スマート・フォーンを発明したアップルのステイーブ・ジョブズです。
良く売れているiphoneを日本のデザイナーが分解してみると、使い易さ、デザイン性の良さを最重視し、コストとか、作り易さを犠牲にしていることが分かり、驚いたのです。
そして、日本のデザイナーたちはもし、自分たちがこのようなデザインの携帯電話を設計したら、絶対に上層部は認めてくれないと嘆いたのでした。
日本の携帯電話会社では、このようなデザインは、コストがかかるとか、製造が難しいとの理由で、上層部或いは製造部門からクレームがつき、許可がおりないのです。
ところが、アップルはステイーブ・ジョブズが一切の妥協を排し、最高を追い求めるので、作り易さとか、コストについて、当初は一切考えないで、最高の使い易い商品を作り上げたのです。
その結果、多くのファン客をつかみ、最近発売したiphone6では、サムソンのギャラクシーを抜き、過去最高の売上高を確保したのです。
アップルは元々、携帯電話の会社ではなく、パソコンのメーカーからの出発であったのですが、ipod、iphone、ipadを開発し、顧客創造を大胆に行ない続け、倒産寸前から、世界で株式価値が最大の会社に上り詰めることが出来たのです。
アップルがこれだけ成功出来たのも、最初に利益を追い求めるのではなく、お客さまを驚かすような商品を作り上げることに焦点を当て、イノベーションを起こして、顧客ニーズに対応し、顧客創造に成功したためなのです。
次にドラッカーの書籍の翻訳者である上田敦夫氏は3分間ドラッカーで利益について、次のように指摘しています。
「利益は目的や動機ではない、事業を継続・発展させる明日のためのコストである」(3分間ドラッカー 上田惇生)
「企業人自身が利益について基本的なことを知らない。そのため彼らが互いに話していることや、一般に向かって話していることが、企業の本来とるべき行動を 妨げ、一般の理解を妨げる結果となっている。利益に関して最も基本的な事実は、そのようなものは存在しないということである。存在するのはコストだけであ る」(『すでに起こった未来』)
営利事業という言葉があり、そのため、事業の目的は利益にあると思ったり、加えて、利潤動機という言葉があるので、そのため、事業の動機は利益にあると思う人たちが多く、利益が事業の目的であり、動機であると思ったとたんに、経営者自身の姿勢がおかしくなる。
利益が事業の目的になってくれば、本業で汗水を流すよりも、財務的な操作で利益を上げることに魅力を感じ、同じく、経営幹部の行動もおかしくなり、利益至上主義が社内に蔓延する。
ドラッカーは、利益は目的ではないし、動機でもないと言い、利益とは、企業が事業を継続・発展させていくための条件であり、明日さらに優れた事業を行なうためのコスト、それが利益であると指摘しているのです。
利益がなければ、コストを賄うことも、リスクに備えることもできないし、社会が必要とする財・サービスを提供できず、人を雇用することもできない。
したがって、利益を上げることが企業にとっての第一の社会的責任である。
「利益と社会的責任との間にはいかなる対立も生じない。真のコストをカバーする利益をあげることこそ、企業に特有の社会的責任である」(『すでに起こった未来』)
以上の様に、利益を上げるのは企業の目的ではなく、責任であることを理解することが大切であったのです。
今になって、やっと分かってきたのは、最初に利益を追い求めてはいけないが、利益は企業経営には必須の血液であり、利益が出ないと企業が前進するのに必要なことが何も出来ないのです。
要するに、継続的に利益が出続ける仕組みを作り続けることが、重要であり、ドラッカーが指摘しているように、企業の目的は、顧客創造であるのです。
利益を出すための一番の出発点は、顧客を創造し続けることであり、その原動力になる、従業員の満足度を高めることであり、真の従業員満足度を高めるのは、高い社内サービス品質を保つことであったのです。
但し、高い社内サービス品質を保つ方法とは、給与を上げたり、待遇を良くするとかの簡単なものではなく、これも非常に複雑であり、当社もチャレンジし続けているのです。
企業経営者は、利益を含め、企業経営に必須である、戦略、リーダーシップ、マーケテイング、イノベーション、従業員満足度、顧客満足度、生産効率等々、企 業経営にまつわる、あらゆることに理解、或いは精通していなければならないスーパーマンでなければ、務まらないのです。
更に、企業は日々、進化していかなければいけない存在であるし、周りの環境も日々進化しているので、社内の知恵、知識のレベルを上げ続けていくことが欠かせないのです。
このような企業経営に関する知識を体系的に学ぶことが出来るのが、ドラッカー・マネッジメントであり、幅が非常に広くて、深さが深いことが今回の再学習で更によく分かるようになりました。
画像は、昨日、調理指導をしている様子で、スタッフの皆さん、真剣です。
今日も最高のパワーで、スーパー・ポジテイブなロッキーです。