本日のテーマは「事業計画書で事業の未来が見える」です。
昨日も東京支店で午後から私のセミナーがあり、タイトルは、「麺専門店のレイアウト・事業計画書のポイント」で、事業計画書の本質についてでした。
ビジネスを始めるときに、まず最初に明確にするのは価値観で、価値観が明確になると、使命、コンセプトが明確になり、価値観と使命、コンセプトには、一貫性が必要であり、事業計画書をキチンと作り上げると、次のようなメリットがあるのです。
1.ビジネスを始める前に、結果が見えるので、このビジネスを始めるべきかどうかが、事前に判断出来る。
2.もし、始めるとすれば、どの様に始めると、成功し易いかが見えてくる。
3.最高に効率の良い、ビジネスモデルを見つけることが出来る。
アメリカのレストラン・ビジネスのプロたちは、レストラン・ビジネスを始める前に、事業シュミレーションを何十通り、何百通りも作り、あらゆる可能性をチェックし、その中から最高効率のビジネスモデルを選ぶのです。
従って、事業計画書には非常に長い時間とエネルギーを費やし、計画書作成の段階で、ビジネスの可能性がほぼ完全に見えているので、始めてからの試行錯誤が少なくて済むのです。
事業計画書は、金融機関や事業の協力者への説明の際に必要となり、説明する必要がない場合であっても、自分の事業が本当に実現可能であるかを確認する意味で、事業計画書の作成は必要で、何度も書き直すことにより、自分が本当にやりたいことや、事業の成功する見込みがはっきりとし、事業計画書は、大きく下記の2つの部分から成り立っているのです。
第1部は、構想の部分(ビジネス・モデル)であり、文章による説明の部分で、今から始めようとしている事業全体の構想を文章で明確に説明し、事業に対する自分の夢を、いかにして実現していくかを文章で具体的に表し、この事業が、今までの既存の事業が解決出来ていないお客さまのニーズを、いかにして解決するかを明確に説明し、さまざまな市場データ(商圏分析、市場規模、業界のトレンド、消費者の価値観の変化等)より、この事業の可能性、将来性ついて言及し、キチンと作成された事業計画書は、始まる前に始めた後の事業の状態を表しているので、始めなくても、事業の行く先の状況が透けて見えてくるのです。
第1部(ビジネスモデル)の手順は、まず、全体の構想、事業イメージ、開業動機を明確にし、事業の目的、将来的なビジョン、どういう目的で何をやりたいかをはっきりさせ、事業に対する考え方や熱意、将来的な事業展開を説明するのです。
市場性の調査では、これから始める事業の市場規模、将来性、事業を取り巻く環境等を調べ、事業内容の裏付けとし、商圏分析は、その商圏におけるビジネスの可能性を説明するのに、最適な資料になります。
具体的な事業内容では、提供する商品、サービス、技術またはそれらの提供方法にどのような特徴があるのか、そして対象とする顧客のニーズにいかにマッチしたものであるかを分かりやすく説明するのです。
開業時の資金計画については、現在の日本は、過去に事例にないほど、金利が低いので、出来るだけ最初に資金余力を残しておくために資金は余裕を持って借り入れてしておくこと、幾ら赤字であっても、資金があればビジネスを続けることが出来ますが、黒字であっても資金が途絶えれば、ビジネスは続かなくなり、開業資金は借入し易いのですが、ビジネスが思った通り行かない場合の追加の運転資金の借入は非常に難しいので、最初に資金余力を持っておくことが大切です。
また、金融機関から、借入した場合は、返済に関しては、絶対に1日たりとも約束を守ることが重要で、借入については、必ずしも希望どおりの資金調達ができるとは限らないので、リースを活用した場合など、いくつかのケースを想定しておくことが大切で、収支計画では、事業計画書の第2部、事業シュミレーションで、開業当初の収支予測と軌道に乗った後の収支予測をたてるのです。
事業計画書、第2部(事業シュミレーション)は、事業がどのように進展するのかを数字で示し、第2部の手順は次の通りです。
1.設備投資金額(不動産取得費、建築費、建築予備費、空調費、厨房設備備品、製麺設備費、雑費)の算定をします。
2.減価償却計画は、法定耐用年数より、投資部分の償却額を算定します。
3.資金調達と返済計画は、どのように資金調達し、何年で返済するかを明確にすれば、毎月の返済額が算出できるのです。
4.要員計画では、社員の人数、給与、賞与、福利厚生費、昼間のパート、夜間のパートの人数と人件費より、総人件費を算出します。
5.次に売上見込みを立てるのですが、売上見込みは、平日の昼、夜、土曜日の昼、夜、日曜日の昼、夜の飲食動機が変わる部分で、6つにセグメントし、それぞれの客単価、客数を想定し、日ごとの売上、月間売上を算出します。
6.最後が採算計算書で、月間売上高より、経費合計(原材料費、人件費、水道光熱費、家賃、消耗品費、雑費、修繕費、リース料、減価償却費、販促費、支払利息)を引くと、営業利益が得られ、営業利益から返済を引くと、キャッシュフローになり、正味オーナーの手元に残るのは、キャッシュフローに原価償却費をプラスしたものになるのです。
以上は、ある程度複雑な計算になるので、当社では、事業計画書のエクセル・フォームを販売しています。(http://www.yamatomfg.com/business_plan/)
次に事業計画書作成に入るのですが、事業計画書は物件の商圏分析と密接な関係があり、同時にレイアウトとも密接な関係があるのです。
従って、新規開業の3つのツールと言えるのが、事業計画書、商圏分析、レイアウトであり、まず、事業計画書が明確になれば、どのような場所でどのような物件で開業すれば良いかが明確になるのです。
例えば、事業計画書で昼間の回転率、夜間の回転率を明確にすると、どの位の人口がいる、どのような場所でやれば良いかが、目途が付いてくるのです。
そのような物件がある場所を商圏分析で見つけ、次に不動産屋で適切な不動産を探し、適切な不動産の候補が見つかった段階で、必ず、契約する前にレイアウトを書いてみるのです。
すると、その物件では何席取れるか、或いは、建物の形状が悪く、あまり席数が取れないかが分かり、その席数で再度、事業計画書を作り、採算が取れるかどうかを検討し、その物件を借りれば良いかどうかの判断が出来るのです。
本年2月21日から始まった、半年間以上に及ぶ、「イノベーションと起業家精神」の学びの最終のまとめに取り組んでいきます。
最初の負担は軽く
新しい事業や、イノベーションにかかわる仕事を独立させて行う理由は、もう1つあり、初期の負担を軽くするためであり、新市場に参入したばかりの新製品に、既存の事業に課しているのと同じ負担を負わせることは、6歳の子供に60ポンドの重さのリュックを背負わせるようなものであり、遠くまで行けるはずがないのです。
既存の事業については、会計、人事、報告のシステムが確立しているのですが、新しい事業については、それらのシステムとは異なるシステム、ルール、評価基準が必要であるので、たとえば、新しい事業を担当する部門の人たちの、企業年金への加入の問題があり、まだ拠出額に相当するものを稼ぎ出していない彼らにとっては、今、企業年金に加入するよりも、将来の利益の一端に直接あずからせてもらうことのほうが意味があり、さらには彼らの報酬の問題があり、成人になっている事業については機能する報酬システムが、赤ん坊を殺してしまうことがあり、とくに中核的な人材に対する適切な報酬とはならないことがあり、今日、大企業で人気のある資産収益率や投資収益率に連動させた報酬システムは、新しい事業にとっては障害となるのです。
ドラッカーはこのことを何年も前に、ある大手化学品メーカーの例から知り、このメーカーのある事業部では、ある新材料を開発しなければならないということがわかっていて、開発研究の計画は手元にあり、基礎的な研究もすんでいたのですが、それ以上は何もせず、毎年、何か言い訳を見つけていたのですが、ある年、ついに事業部長が、全社レベルの経営会議で次のように発言したのです。
「私をはじめ事業部の人間は、投資利益率にもとづいて報酬が決められているが、あの新材料の開発に資金を投入すると、事業部の利益率は、少なくとも4年間は半減するが、そもそも会社が、そのような低い利益率に我慢してくれるか、はなはだ疑問で、たとえ利益があがりはじめる4年後まで、誰も首にならなかったとしても、事業部のマネジメント全員の報酬が大幅に下がるので、私としてはそのようなことはできない。」
この結果ようやく、新材料の開発費は、報酬の基礎となっていた投資利益率の計算から外され、1年半後には新材料が無事開発され、その2年後には、今日まで維持することになったトップの地位がもたらされ、事業部の利益も、4年後には倍増したのです。
しかし、イノベーションの活動に対する報酬と報奨については、何を行ってはならないかを明らかにするよりも、何を行うべきかを明らかにするほうが難しく、行うべきことは、かなり矛盾していて、新しい事業に、担うことのできない負担を負わせてはならないのですが、同時に、新しい事業を担当する人たちを、しかるべき報奨によって動機づけなければならず、新しい事業を担当する人たちには、過度の報酬は払えず、といって、報酬を以前より下げることも現実的ではないということであり、しかも、既存企業において新しい事業を担当する人たちは、もともと、かなりの収入を得る能力のある人たちであり、内外を問わず、どこでも高い報酬を得られるので、当初の報酬は、新しい事業を担当する直前の水準に合わせておくことが妥当であり、新製品や新市場、あるいは新サービスの開発に成功し、事業として発展させた暁には、3Mやジョンソン・エンド・ジョンソンのように、担当副社長や事業部長に任命し、相応の地位やボーナス、あるいはストックオプションを与えることとすべきで、これはかなりの報奨ですが、企業にとっては、成功報酬にすぎないのです。
あるいは、税制次第ではあるが、新しい事業による利益の一部を担当者に直接与えてもよく、たとえば新しい事業を独立した企業とみなし、その株式の25%分を与えることとし、後日、その持ち分を買い取ることにしてもよいのですが、それだけでは十分ではなく、新しい事業を担当する人たちは、いわば冒険をしているのであって、企業の側も相応のことをしなければ公平といえず、イノベーションを担当する人たちは、たとえ失敗しても、元の仕事、元の報酬に戻れるようにしておくべきであり、失敗をほめる必要はなくとも、挑戦に罰を与えてはならないのです。
以上は、新しいビジネスを始め、新しいイノベーションを起こす場合の貴重な注意点でありますが、新しいビジネスには、もう1つの視点があることを忘れてはいけないのです。
それは、商品のライフサイクルであり、既存のビジネスだけではいつしか限界が来て、今日ではこのサイクルが以前より早くなっているので、企業を次の世代に引き継ぎ、永く繁栄をもたらすには、常に新しいビジネスの発掘は欠かせず、それを行なうことにより、企業の寿命を長くするだけではなく、節税効果が大きく、新しいビジネスに先行投資する費用は、コストですから、当然、利益を圧迫し、その分だけ納税金額を少なくすることが出来るので、新しいビジネスに投資することにより、合理的な節税をしながら、次の時代のための新しいビジネスを創出することが出来るのです。
1つのビジネスがライフサイクルの山を越える前に、次のビジネスが準備出来、常に、ビジネスの谷間がないように、山が山脈のように右肩上がりで連続して連なるようにすべきであるのは、ダイアモンド社のドラッカー塾で国永先生から学んだ貴重な教訓で、これはなかなか難しいのですが、意識してしないと出来ないし、そうすることにより、現在、出ている利益で次のビジネスの準備が出来るのです。
上記のように、ビジネスの秘訣は連続性にあり、途切れないように、下がらないようにすることが不可欠であり、これも私の過去のたくさんの失敗の反省であり、次世代の経営陣への伝言でもあるのです。
当社でも、過去において、イノベーションと呼べるようなものは、麺専用塩46億年とか、幾つかありましたが、当社にとって一番大きなイノベーションは、ラーメン学校で、ラーメン学校を振り返ってみると、確かに別組織で運営し、現在も本体から、少し距離を置いた組織でやっていますが、完全に切り離していないので、この部分が、麺学校の成長にとっての問題かも知れないということを、上記のことで思いついたのです。
ある時、都内にある、すしの学校の講師の方からお聞きしたのは、すし学校の規模が既に講師数40~50名の規模になっていて、生徒数も常時、40名~50名抱え、1年コース、半年コースがあり、期間も当社とは比較にならないくらい長いのです。
組織の中には、常にイノベーションを恐れないで、むしろ、イノベーションが絶対に必要で、イノベーションこそが生き残り、成功するために必須であるというDNAを打ち込んでおくことの大切さを感じた次第です。
今日の本社の食堂の昼食は、久しぶりの意ちらし寿司で、スタッフたちには大人気です。
産休明けで復帰した食堂スタッフ、大場さんも戦力に復帰して頑張ってくれています。
今日も最高のパワーで、スーパー・ポジテイブなロッキーです。