一昨日と昨日の蕎麦学校とラーメン学校の経営講義は私にとって、思い出深い経営講義になりました。
経営講義というよりも、人生の生き方を問うような内容の講義になったのです。
そのような講義内容になった原因は、ある生徒さんの質問であり、私に次のような質問を投げかけたのです。
「校長先生にも、過去、親しい人に裏切られたり、想定外の辛いことがたくさんあったと思いますが、そのようなことをどのように耐えてきたり、処理して来たのですか?」と。
私はそれに対して、「私もそのようなことは、多分、何度もあったと思います。しかし、今は忘れてしまいました。」と、答えたのです。
それは事実であり、そうとしか、答えることが出来なかったのです。
過去、私の周りにいる親しい人が死ぬまで、「自分は誰に騙され、たいへんな目に遭った。」言い続けたのです。
これをずっと小さい時から聞かされていたので、決して、自分はそのようなことを言いまいと誓って生きてきました。
自分自身の人生を振り返っても、これは非常に賢明な選択であったと思っていますし、過去の辛かったことを他人に話し続けることで、自分の未来を駄目にしていくと思います。
過去に起きたことは、既に存在しないのですから、過去にこだわると、未来の人生を駄目にしているのです。
このように、ちょっとした人生の選択の差、考え方の差が後々の人生に大きな差となっているのです。
私は、麺學校を運営し、多くの生徒さんに教えるようになって、自分自身の人生もよく分かるようになりました。
人に教えることは、単に人に自分の考え、知識を伝えるだけでなく、自分自身の思考を深め、知識のレベルを高め、自分自身の人生を良くするのにどれほど役立っているか分かりません。
毎月2回、土日の2日間の経営講義は、私にとって至福の時であり、自分自身の成長に欠かせない、貴重な試合の時間なのです。
この2日間の試合の時間のために、日々、朝早くから練習の時間を取り、学びを深めているのです。
もし、麺學校をやっていなかったら、もし、麺學校の経営講義がなかったら、もし、マネッジメントの探求に、こんなに力を入れていなかったら、今の私は存在していなかったのです。
毎月2回の経営講義がどれほど、私を高めてくれているか分かりません。
そして、今回の経営講義の中で生徒さんからもう一つ異論があったのが、「仕事は遊びである」ということでした。
この生徒さんは、先輩から常に、仕事は遊びと違って厳しいものだと叩き込まれ、仕事は遊びのようにチャラチャラしたものではないと信じていたようです。
私はこの生徒さんに話したのは、もし、遊びでも真剣にやらないと面白くも何ともないはずであり、遊びも真剣にやるから、面白いものであり、もし、遊びの中 でも、スカイダイビングとか、スキューバ・ダイビングのような遊びの場合、真剣にやらなければ、命を落とすことになると話したのです。
仕事を仕事と思わないで、楽しく、充実した遊びにように真剣にやれば、仕事も大変楽しいのです。
私にとって、日々の仕事は遊びであり、特に毎月2回、土日の経営講義は特別に楽しい遊びなのです。
仕事を遊びにすれば、人生は大きく変わるのではと思います。
人生において多くの時間を占めている、仕事を遊びにすることこそが、人生を充実させる需要な課題であると思います。
そして、昨日、更に強調したのが、サラリーマン時代のすごし方です。
脱サラをして、自分でビジネスを始める場合も、ビジネスを始めてから、その人が成功するかどうか決まるのではなく、サラリーマン時代のすごし方で決まっているのです
サラリーマン時代に良い習慣を身につけているか、そうでないかはたいへん重要なことであるのです。
サラリーマン時代に良い習慣を身につけ、大活躍してから辞め、周りから惜しまれる辞め方をする人でないと、サラリーマン時代よりはるかに難しい、独立起業で成功するわけはないのです。
サラリーマンが面白くないから、独立起業して、ビジネスを自分で始めて儲けようと考えるのは、どこかおかしいのです。
このようなことは少し深く思考すると、簡単に分かることであるのです。
次は、来週からのLAでのイベントのお知らせです。
昨年の10月に続き、3月2日(月)から4日(水)までの3日間、LAで、イベントが開催され、私のセミナーも合計3本入っています。
https://www.yamatonoodle.com/
現在の北米の事情に合ったテーマであり、本来は麺學校で教えている、実務に役立つ内容ばかりの私のセミナーで、タイトルは次の通りです。
1.事業計画・レイアウトセミナー((仮)ビジネスの成功、利益差はここで決まる) “Understanding Successful Noodle Business by numbers”
2.コンセプトの重要性~コンセプトがビジネスの成功を左右する
“Different noodle restaurant concepts that work”
3.利益倍増計画~多店舗展開へのステップアップ~
“Key to expansion strategy for your restaurant business”
Important tip for building a successful business
-Why business concept determines success in business
4.単価の上がる盛り付け実演(ラーメン、うどん、つけ麺)
その他にも、新規開業者と既存店の双方に役立つ面白い内容のセミナーとか、イベントを準備して、御来場をお待ちしています。
本日より、当分の間、ドラッカー選書「イノベーションと起業家精神(上)」(ダイアモンド社)に基づき、イノベーションについて、深くドラッカーから学んでいきます。
ぜひ、一緒にイノベーションと起業家精神を磨いていきましょう。
第一章 イノベーションと起業家精神
1.起業家の定義
1800年頃、フランスの経済学者J・B・セイは、「起業家は、経済的な資源を生産性が低いところから高いところへ、収益が小さいところから大きなところ へ移す」と言ったのですが、この定義も200年も前の起業家の定義としては的を得ているように思いますが、ドラッカーによると、セイのこの定義は、起業家 が何者であるかは述べていないのです。
そして、200年前に、セイが「起業家」なる言葉を作って以来、未だに起業家と起業家精神の定義は確立していないのです。
「起業家とは何か?」
アメリカでは、起業家とは小さい事業を始める人を言いますが、新しい小さな事業のすべてが起業家的であるわけではないし、起業家精神の現れであるわけでもないのです。
例えば、郊外でファースト・フードの店やメキシコ料理店を始める夫婦は、リスクを冒しているのですが、何か新しいことをやろうとしているわけではなく、外 食という風潮に乗ってはいるが、新しいニーズや欲求を創造していないので、事業はベンチャーですが、彼らは起業家ではないのです。
その点、マクドナルドの創始者、レイ・クロックは起業家だったのです。
彼は、何も発明していないし、その当時、ハンバーガーは、アメリカのレストランならばどこにでもあったのです。
しかし、レイ・クロックは、マネッジメントの原理と方法を適用し(即ち、顧客にとっての価値は何かを問い)、製品を標準化し、製造のプロセスと設備を再設 計し、作業の分析に基づいて従業員を訓練し、仕事の標準を定めることによって、資源が生み出すものの価値を高め、新しい市場と新しい顧客を創造し、結果と して、世界中で多くの事業家を創出し、彼らを豊かにし、世界中の人たちの食に関するライフスタイルを変えたのです。
これこそが起業家精神であったのです。
現在の日本においても、多くの若者とか、脱サラ組がうどん店開業とか、ラーメン店開業を目指し、リスクを冒して、新しい人生にチャレンジしています。
しかし、そのほとんどは既存店の真似であり、何ら新しい試みはなされておらず、開業したとしても、生み出すものの価値を高め、新しい市場と新しい顧客を創造してはいないのです。
既存の競争の厳しい市場に分け入り、更に競争を激化させ、市場を疲弊させていて、自らも競争に疲弊して、早期に市場から退場するのがほとんどなのです。
新しく開店しても、3分の1以上が1年以内に閉店しているのです。
そして、彼らのほとんどは、リスクを減らすために、初期投資を減らし、規模の小さい店を開店したり、業績不振で閉店した後を居抜きで借りて同じ業種を同じようなスタイルで開店し、また早期に閉店するケースが後を絶たないのです。
要するに、社会を変革し、豊かにしたり、良くすることには、何ら貢献していないのです。
マネッジメントとは、本来、社会に存在する多くの人たちを豊かにし、幸せにするためのものであるので、その意味で、社会に貢献しておらずに、自分自身も幸せになっていないのです。
彼らの事業を始める最終目的は、自分とか、家族が幸せになるためであったはずですが、それさえも達成することが出来ていないのです。
だから、本当に自分たちの幸せを目指すのであれば、先に多くの人たちに貢献することを目指した方、即ち、起業家精神を発揮して、今までにないもので、多くの人たちの幸せに貢献出来ることを目指した方が、結果として早いのです。
私も以前からこの事実には気付いていて、既存の競争の厳しい市場に、既存店と同じようなスタイルで参入しても、勝ち目が少ないことを常に麺学校の生徒さんたちに伝えていたのですが、既にドラッカーが明確に同じことを説明していたのです。
まさに、競争の厳しい市場に、更に、同じスタイルの店舗を出し、同質化競争に拍車をかけているので、レッド・オーシャンの典型的な事例であり、資源の乏しい新規参入者が取る戦略ではないのです。
従って、競争を避け、ブルー・オーシャン戦略を取り、小さい企業が大企業に勝てる戦略を取るべきなのです。
要するに、①競争変数を増やすか、②強烈な個性で勝負するか、のどちらかを選択しなければいけないのです。
同じように数年前、アメリカ中西部のある起業家が夫婦で始めた鋳造業も極めて起業家的であり、彼らは、アラスカを横断する天然ガス・パイプラインの敷設工事に使われる大型ブルドーザーの車軸など、精密鋳造品を製造しているのです。
この事業に必要な科学知識は既知のものであり、新しいものはほとんどないのですが、彼らは、技術情報を体系化したのです。
要求される性能をコンピュータに入れると、必要な工程が自動的に明らかになるようにし、工程を体系化したのです。
形状、組成、重量、材質が同じ製品を半ダース以上受注することは殆どないのですが、バッチ生産ではなく、コンピュータ制御によるプロセス生産を採用しているのです。
この種の精密鋳造は、不合格品が30%から40%出るのが普通ですが、この鋳物メーカーでは製品の90%以上が合格品であるのです。
大企業並みの賃金や福利厚生費を支払いながら、コストは最も強力な競争相手(韓国の造船所)の3分の2以下なのです。
彼らが起業家的であるのは、(急成長はしているものの)単に新しい事業だからではなく、決して新しいビジネスではない精密鋳造が、一つの独立事業たり得る こと、需要の伸びが隙間(ニッチ)市場の形成を可能にしていたこと、技術特にコンピュータ技術が、職人芸を科学的プロセスに転換できることを利用したから だったのです。
これと似たようなことは、当社で行なっている「デジタル・クッキング」です。
例えば、蕎麦学校では、だしの材料をすべて単独でだしを取り、生徒さんたちがそれぞれ単独のだしの味を確認して、どの材料を何%入れると、どのような味になるかを確認しながら、自分自身の味を作り上げていきます。
そして、毎回のデータはすべて記録され、データ・ベース化されているので、何度やっても、まったく同じ味が再現できるのです。
そして、味を変えたい時も、既に出来上がっているデータ・ベースを参照しながら、簡単に変更できるのです。
「規模は関係ない」
新しい小さな事業には共通するものが多いのですが、事業が起業家的であるためには、新しさや小ささを超えた何かが必要であるのです。
事実、新しい小さな事業のなかでも、真に起業家的な事業は少なく、起業家的な事業は、何か新しいもの、異質なものを創造し、変革をもたらし、価値を創造するのです。
従って、起業家たるためには、新しさや小ささは必要なく、それどころか、起業家精神は大企業、しかもしばしば歴史のある企業で実践されているのです。
100年以上の歴史を持つ世界的な大企業GEは、昔から起業家的な事業をゼロからスタートさせ、立派な産業に育て上げていて、その起業家精神を製造業に限定していないのです。
金融子会社のGEクレジットは、アメリカの金融システムを一変させ、ヨーロッパにまで進出して、金融界のマジノ線を迂回することに成功し、これにより、産業金融における銀行の伝統的な独占を破ったのです。
イギリスの大店舗小売業マークス・スペンサーは、過去50年間、ヨーロッパで最も革新的かつ起業家的な企業として、イギリスの経済、さらには社会に対して大きな影響を与えてきたのです。
おそらくその影響は、政府や法律よりも大きく、GEやマークス・アンド・スペンサーは、起業家的ではない大企業とも共通するものを数多く持っていて、彼らを起業家たらしめているのは、規模や成長とは異なる、別の何かであるのです。
同じような日本の事例は、コマツで、コマツは世界中で販売しているブルドーザーをインターネットでつなぎ、ブルドーザーの稼働率を見て、部品交換の時期と か、オーバーホール時期を確認したり、盗難にあったブルドーザーの位置を確認したり、エンジンのスイッチを切り、使用出来ないようにしているのです。
大企業であっても、起業家精神を持ち、イノベーション体質を持って成功している企業は世界中にたくさんあり、グーグルとかアップルはその典型的な事例であると言えるのです。
従って、起業家精神を持つことは、事業を行なう上で、また、どんなに小さい事業を始める上でも欠かせないのです。
画像は、昨日の東京支店での経営講義最後の、蕎麦学校の生徒さんの卒業式の一コマです。
昨日も7名の生徒さんたちが巣立っていきましたが、起業家精神を発揮し、大成功して貰いたいものです。
今日も最高のパワーで、スーパー・ポジテイブなロッキーです。