本日のテーマは「ビジネスはデザイン」です。
昨日は、うどん学校実技最終日で、生徒さんたちの盛り付けのチェックの日でした。
生徒さん全員の作品が完成した後、全員にそれぞれの問題点を挙げて貰います。
すると、ほぼ、間違いなく、同じような問題点の指摘があり、私が考えている問題点とほぼ同じような問題点が上がってきます。
だから、他人の作品の問題点は、ほぼ、全員が理解出来、どこか不自然であるとか、バランスが取れていないとか、或いは器の色が悪いとか、他人の問題点はよく分かります。
しかし、今度、それをどの様に修正したら良いのかは、分からないのです。
これは、他人の歌を聞いて、上手か、下手は誰でも分かるようなものですが、自分で歌うとなると、そんなに上手には歌えないのです。
そうすると、歌の上手な人はどのようにして上手になったかと言えば、持って生まれた音階に対する素質もありますが、普段のトレーニングも欠かせないのです。
特に、歌の道に進もうとすると、歌のレッスンの出来る先生について指導を受けたり、カラオケでも上手になろうとすると、カラオケ教室に通ったりします。
従って、料理の道を志す限りは、このようなトレーニングは欠かせないのです。
盛り付けのきれいさは、これからの料理の世界には、欠かせない必須なことであり、どんなに美味しい料理でも、盛付が台無しでは、美味しさの表現が出来ず、最初の第一印象で、買って貰えないのです。
その典型的な事例が車の世界で起きていて、最近の自動車メーカーの間の技術力の差は、非常に小さくなってきています。
以前であれば、ベンツと国産車の間には、埋められることの出来ないほどの大きな溝がありましたが、現在は、そのギャップは非常に少なくなってきているのです。
時計の世界はもっと顕著で、最近、高額な時計でも売れているのは、そのデザインとその時計が持つ雰囲気の良さであり、高価な時計は、金額の桁がどんどん上がっています。
昨日も、メンテナンス部門の責任者の山口さんと一緒に、DIYまで、海外でのメンテナンス用の壁掛けタイプのデジタル時計を買いに行ったのです。
海外部門では、北米西海岸、東海岸、欧州では時差が大きいので、常に現地時間を意識して、メンテナンス対応しないといけないのです。
壁掛け型のデジタル時計を買っている間に、ショーケースに入れてあったセイコーとか、シチズンの腕時計を見ると、きれいな時計でも1万円余りで、安い時計は5千円付近で、私の学生の頃では考えられないような価格で売られているのです。
一時、セイコーとか、シチズンは世界の時計文化を変えてしまった時期があったのですが、デザインによる価値感の時代に乗り遅れてしまい、スイスの時計メーカーにリーダーシップを奪われてしまったのです。
この様に、時代の価値感の変化を理解するのは、大切なイノベーションの課題であり、ますます機能的価値から、感情的価値の時代へと大きく変化してしまっていることを理解しなければいけないのです。
当社のような製麺機にも求められる価値は大きく異なり、当社が創業したころは、機械のデザイン等は、重要な項目ではなかったのです。
ところが、実演自家製麺の時代になり、製麺機のデザインも重要な価値の一部になり、ますます、その傾向が強くなっているのです。
従って、どのようなビジネスを志そうと、デザインはビジネスにとって切っても切り離せないものになっているのです。
まさに「飲食ビジネス=料理×アート×サイエンス×ユーモア×哲学」であり、これは以前、ANAの機内のビデオを見つけた言葉であったのですが、一度で覚えてしまったのです。
従って、飲食ビジネスを志す以上は、デザインに対する知識、経験を深めていかねばならないのです。
本年2月21日から始まった、173日間に及ぶ、「イノベーションと起業家精神」の学びを終え、最終のまとめに取り組んでいきます。
「分析と知覚の役割」
本書のテーマであるイノベーションとは、組織的かつ体系的に行なう仕事であるのですが、それは同時に、分析的であるとともに、知覚的な仕事でもあり、もちろんイノベーションを行なうとする者は、見聞きしたものを論理的かつ、詳細に分析する必要があり、知覚するだけでは駄目なのです。
「知覚」が、単に「感じること」を意味するのであれば、イノベーションにおいて、知覚はまったく役に立たず、そのような知覚は、「見えるもの」ではなく、「見たいもの」を見ているに過ぎないのであり、自分の「見たいもの」を見るのではなく、「既に起きている真実」を見なければ(知覚しなければ)いけないのです。
イノベーションは分析的であるとともに、知覚的な仕事であり、実験と評価を伴う緻密な分析といえども、その基礎は、あくまでも変化、機会、現実、現実と認識のギャップなどに対する知覚であり、「分析できるほど、未だ分からない。しかし、必ず見つけ出す。外に出かけ、観察し、質問し、聞いてくる。」と言わなければならないのです。
予期せぬものは、通念や自信を打ち砕いてくれるからこそ、イノベーションの宝庫であり、まさに日本のうどん蕎麦店、ラーメン店ビジネスに起きているのが、予期せぬものであり、数年あとには、あのとき大きな変化があったと言われる可能性があることが今、起きていて、起きていることは感じるのですが、原因は分かっていないのです。
過去、当社はうどん蕎麦店市場と景気の関係を読み解き、うどん蕎麦店の市場規模は、日経平均株価と反比例していて、株価が下がると、うどん蕎麦店市場規模は拡大し、株価が上がると、反対にうどん蕎麦店市場が凹むという現象を見つけ出したのは、過去のデータの分析で分かったので、私は分析の大切さも身をもって理解しています。
「原因はわからなくても良い」
実際のところ、起業家たる者にとって、現実が変化した原因を知る必要はなく、先ほど述べた2つのケース(インドの錠前とアメリカの住宅)の場合は、なぜ起こったかが簡単に分かったのですが、何が起こったかは分かっても、なぜ起こったかは、分からないことの方が多いのですが、例えそうであっても、われわれはイノベーションを成功させることが出来るのは間違いなく、ここに1つの面白い事例があるのです。
1975年に起こったフォードのエドセルの失敗は、余りにも有名であり、少なくともアメリカ人ならば、当時まだ生まれていなかった者でさえ、聞いたことのある話なのですが、エドセルがギャンブルのようなプロジェクトだったという、一般に伝えられている話は、まったくの誤りで、フォードのエドセルほど、慎重に設計し、売り出し、マーケテイングした製品はなかったのです。
第2次大戦後の倒産寸前の状態から、GMの競争相手としてアメリカ市場で2位に座を確保し、急速に成長しつつあるヨーロッパ市場で、1位の座を狙うに至った10年間に及ぶフォードの大戦略において、エドセルは総仕上げとなるべきモデルで、1957年当時、フォードは、アメリカ4大自動車市場のうち、3つの市場でGMの強力な競争相手としての地位を確保していて、「一般」市場にはフォード、「中流の下」市場にはマーキュリー、「上流」市場にはコンチネンタルを擁していて、残る1つの市場、すなわち競争相手のGMがビュイックとオールズ・モビルによって支配していた「中流の上」市場を狙ったのが、エドセルだったのです。
この市場は、とくに第2次大戦後急速に成長している市場でありながら、第3位のクライスラーも手をこまねいている市場であり、フォードにとって、ドアは大きく開かれていて、フォードは企画と設計に時間をかけ、市場調査によって得た情報、特に車体についての消費者の好みを設計に組み込むとともに、品質管理についても最高の基準を設定したのですが、それにもかかわらず、エドセルが失敗だったことは、発売と同時に明らかになったのですが、失敗に対するフォードの対応は目を見張るものだったのです。
消費者の行動の不合理をこぼす代わりに、消費者行動についての、それまでの考え方、長い間有効であったために、自明の理とされていた考え方とは、合致しないことが、何か起こっているに違いないと結論を出し、そして外へ出て調べた結果、1920年代にアルフレッド・P・スローンがGMの成長の基礎とした、アメリカの自動車市場の区分けの仕方、即ち、「一般」「中流の下」「中流の上」「上流」という区分が、まったく新しい市場区分、すなわち、ライフ・スタイルと今日言われているものに変わりつつあること、或いは少なくとも、それと共存するようになっていることを知ったのです。
その結果として考えられたのが、エドセルの失敗のわずか数年後、自動史上、ヘンリー・フォード・シニアによる、1908年のT型フォード以来の大成功となったサンダーバードの開発で、フォードは、GMの関係者としての地位を脱し、強力な競争相手として再登場し、今日でもわれわれは、自動車史上、重要なこの変化の原因を、知ることが出来ないでいるのです。
それは、ベビー・ブームによる人口の重心が10代へ移行したことや、高等教育の恐るべき普及、女性の生き方の変化など、一般に指摘されている現象が、生じる前に起こっていて、しかもわれわれは、そもそも、ライフ・スタイルが何を意味するかさえ、まだ知らず、ライフ・スタイルについて、これまで行われてきた説明はいずれも決定版ではなく、われわれが知っていることは、何かが起こったということだけであるのです。
しかし、成功にせよ、予期せぬことが起こったことを知るだけで、イノベーションの機会とするには十分であり、フォードのエドセルの失敗により、今まで長い間行なわれてきた、市場のセグメント方法そのものが崩れ去っていたのが分かったのです。
予期せぬ失敗は、そのような一番基準となるものが、時代の変化とともに変化していることを見つけ出すのには、最適な方法であり、われわれのビジネスの源泉である、うどん蕎麦市場、ラーメン市場も同じ様な地点に立っていることを認識出来、例えば、うどん蕎麦店、ラーメン店のメイン・ターゲットは今までずっとサラリーマンであると信じられてきていたのですが、サラリーマンの絶対人口が既に大きく減少し、大手外食も同様にサラリーマンをターゲットにしているので、この市場のウマミが急激に減少し、反対に、女性とシニアが消費者市場としても、労働力供給市場としても、大きくクローズアップされるようになってきて、過去の常識が崩れ去ろうとしているのです。
1人世帯の増加、晩婚化、生涯未婚率の急激な増加、生産年齢人口の更なる減少、コンビニによる外食分野への参入等々、日本の外食を取り巻く環境は、日増しに厳しくなっていて、分析だけでなく、われわれは外へ出て、現に起きている現象を理解しなければいけないのですが、経営講義に参加していた生徒さんが早速、セブン・イレブンに行き、下記のような報告をしてくれました。
「早速学んだ事でできる事を始めようと、昨日、セブンイレブンのメニュー、棚割、商品チエックを帰宅途中の店舗で行ってみました。総菜麺など、商品のネーミングまでいろいろ考えてあって、とても参考になりました! たとえば、「ドーンと4枚!チャーシュー麺正油味」とか「ごっつ盛り肉野菜とんこつラーメン」など工夫されているのに驚きました。(今まで、気づいていませんでした)。」
「3.外部の予期せぬ変化」
これまで、予期せぬ成功や失敗は、企業や産業の内部で起こるものとして論じてきましたが、マネッジメントが、今日手にしている外部の事実、すなわち、情報や数字には表れない事象も同じように重要な意味を持ち、それらの事象は、企業や産業内部の事象よりも重要であることが多いのです。
画像は、昨日のうどん学校の盛り付けの様子で、学校始まって以来初めての伊勢海老の天ぷらを使ったざるうどんです。
さすがに伊勢海老を使うと、高価に見えます。
今日も最高のパワーで、スーパー・ポジテイブなロッキーです。