本日のテーマは「作業手順書=マニュアル」です。
昨日は、久しぶりに午前中は、大和、午後からは讃匠の経営会議があり、大和の経営会議では、上半期の上手くいったこと、いかなかったことを各部門より報告して貰ったのです。
その報告の中で内容の特に良かったのが、製造部門の橋本部長の報告でした。
さまざまなことを実施した結果、成果が上がったこと、上がっていないことを克明に記しているのです。
そして、私の目に留まったのは、手順書作成で、製造部門では機械の組み立てを行なっていて、新人が入社して仕事を覚えていくための手順書が充実していればいるほど、新人は仕事を覚えるのが楽で早くなるのです。
以前から、各部門に対して手順書作成を促がしているのですが、手順書が揃っていて、手順書を見れば、仕事が遂行できるようになっている部門は少ないのです。
手順書が揃っていない部門は、新人が入社すると先輩社員が付きっきりで指導に当たらねばならないのです。
製造部門の手順書作成が進んでいることを称賛すると、橋本部長は次のように発言したのです。
「自分は父親を早く亡くしたので、自分もいついなくなるか分からないので、そのために、常に誰でも自分の代わりが出来るように手順書を作っている」。
確かに、彼は父親を若い時に亡くして、その分苦労したので、余計に後輩たちを思って、手順書作成を行ない、後輩たちが困らないように取り組んでいたのです。
私自身も振り返ると、最初は設計の仕事から始まり、製造の分野、特にアマダの機械を使った精密板金加工、アルゴン溶接、組立、メンテナンス、麺の研究、出汁の研究、天ぷら等トッピングの研究、盛付の研究、マーケテイングの研究、マネッジメントへの取り組み等、次つぎと新しい分野を切り拓いていき、その都度、私のやっていた仕事を次の世代に引き継いできたのです。
しかし、引き継ぐにあたって、橋本さんのように手順書を残すことはほとんどやってこなかったのです。
今のように十分な人手がなく、その時その時の仕事をこなしていくのが精一杯で、そのような余力は一切なかったのです。
橋本部長の場合も、実際に手順書を作っているのは、実際に機械を組み立てている担当者であり、彼が指示をして、指示通りに作らせ、チェックしているのです。
しかし、手順書の大切さを理解しているので、新しく入社した新人が効率よく仕事を覚えることが出来るような手順書を作っているのです。
これらの手順書は、うどん蕎麦店、ラーメン店においては、作業マニュアルに相当するものなのです。
うどん蕎麦店においても、マニュアルがあるのと無いのでは、新人が仕事を覚える効率がまったく異なり、特に新規開店のときには、マニュアルを使って指導すると非常に楽に出来、規模の大きくなるほど、マニュアルは効果を発揮するのです。
そして、このような手順書とか、作業マニュアル作成自体が、マネッジメントにおける重要事項であるのです。
マネッジメントとは、特別なことでも何でもなく、人びとを幸せにするための道具であり、作業マニュアルがあることにより、仕事の効率化が出来、人びとを早く幸せにするための道具のひとつだったのです。
何か、ひとつでも書いたものがあれば、それを使って次の人は、更に新しいものを付け加えたり、考えを深めることが出来るのです。
何もないところに、ゼロから何かを構築するのとは、大きな違いがあるのです。
当社の社内の中で、次の人に伝えることの一番難易度の高いもののひとつが、麺学校での経営講義であり、伝えていくのが難しいのです。
そのために、私はすでに4冊の経営講義の教科書を書いて、私の思考体系をまとめてきているのです。
だから、私の経営講義を継ごうと思うと、4冊の教科書の理解は欠かせないのです。
さらに、新しい学びを増やしているので、次つぎと新しい教科書が増えていく予定です。
従って、過去、私が行なってきた仕事を、それぞれの専門分野の人たちに引き継いで貰ったように、現在行っている経営講義も一人ではなく、何人かの専門家に分担して引き継いで貰う必要があるかも知れません。
いずれにしても、人はいつかはいなくなるので、次の世代に引き継ぐことを考えておく必要があり、それは常に行なわなければいけない仕事であるのです。
本年2月21日から始まった、173日間に及ぶ、「イノベーションと起業家精神」の学びを終え、最終のまとめに取り組んでいきます。
「ギャップを探す – 第2の機会」
ここでいうギャップとは、現実にあるものとあるべきものとの乖離、あるいは誰もがそうあるべきとしているものとの乖離であり、不一致であり、原因は分からないことがあり、検討さえつかないこともあるのですが、それにも関わらず、ギャップの存在は、イノベーションの機会を示す兆候であり、それは、地質学でいう「断層」の存在を示し、まさに断層はイノベーションへの招待であり、断層では、わずかな力が、社会を動かし、経済構造や社会構造に変化をもたらす不安定状態を生み出すのです。
このギャップは、通常、マネッジメントに提示され、検討を加えられるような数字や報告の形では現れないで、定量的というよりは定性的であり、ギャップとは、予期せぬ成功や失敗と同じように、すでに起こった変化や起こり得る変化の兆候であり、ギャップは予期せぬ事象と同じように、1つの産業、市場、プロセスの内部に存在するので、その産業や市場、プロセスの内部、或いは周辺にいる者は、ハッキリ認識することが出来、まさに彼らの目の前にあるのですが、同時に、ギャップは、それを当然のこととして受け止めてしまいがちな、内部の者が見逃しやすいものであり、彼らは「ずっとそうだった」と言うのですが、多くの場合、その「ずっと」が、実は最近のことにすぎなく、イノベーションの機会としてのギャップは、以下のように、幾つかに分類できるのです。
1.業績ギャップ
2.認識ギャップ
3.価値観ギャップ
4.プロセス・ギャップ
「業績ギャップ」
製品やサービスに対する需要が順調に伸びているならば、業績も順調に伸びていなければならないし、需要が順調に伸びている産業では、利益を上げることは容易なはずであり、しかも、上げ潮に乗っているはずであり、そのような産業にありながら業績が上がっていないのであれば、何らかのギャップが存在すると見るべきであり、それらのギャップは、1つの産業全体、あるいは、社会的部門全体におけるマクロ的な現象であることが多いのです。
通常、それらのギャップをイノベーションの機会として利用するのは、中小の専門企業であり、しかも、この機会を利用する者は、長期にわたってその利益を享受することが出来、予期せぬできごとによるイノベーションは、大企業の方が有利であったのですが、ギャップをイノベーションの機会として利用出来るのは、中小の専門企業であり、長期にわたり、その利益を享受出来るので、われわれ中小企業は最もギャップに注目すべきなのです。
ほかの企業や社会的機関が、この危険な競争相手に気づくのは、かなり経ってからであり、ほかの企業や社会的機関は、需要の増大と業績不振とのギャップを埋めるのに忙しく、誰かほかの者が何か別のこと、成果の上がること、需要の増大を利していることに気づかないのです。
しかし、イノベーションを行なうためには、必ずしも、ものごとが動くべきであるのに、動かない原因を知ろうとして苦労する必要はなく、「このギャップをイノベーションの機会として利用するためにはどうすべきか、何がそれを機会に変えてくれるか、何が出来るか」を問えばよいのです。
「鉄鋼業と製紙業の例」
業績ギャップは行動を要求し、問題が明らかでなくとも、とるべき行動が明らかなことがあり、もちろん、問題が明らかでありながら、取るべき行動が明らかでないこともあり、鉄鋼業における電炉の例は、ギャップをイノベーションの機会として利用することに成功した良い例であり、第一次大戦後から今日に至るおよそ50年間、先進国の高炉メーカーがブーム的な好業績をあげたのは、戦時中だけで、鉄鋼に対する需要は、少なくとも1973年までは着実に伸びていましたが、平時における高炉メーカーの業績は、失望させられることが多く、この業績ギャップの原因は昔から明らかだったのです。
高炉の場合、需要の増加に応じた生産量の増加の最小単位がきわめて大きく、必要とされる設備投資が巨額にのぼり、生産能力が大幅に増大してしまうからであり、新設の高炉の稼働率は、需要が新たな生産能力に追いつくまでの間、低いものとならざるを得なく、しかも、戦時を除き、需要は徐々にしか増加せず、需要が増加しているときに、生産設備の増設を行なわないことは、シェアの喪失、ときには恒久的な喪失を意味するので、そのようなリスクを冒せる高炉メーカーはないので、高炉が高収益は享受できるのはごく限られた期間、すなわちあらゆる高炉メーカーが、設備の更新を開始してから完成するまでのわずかな期間と言うことになるのです。
その上、1870年代に発明された製鉄のプロセスそのものが、これも昔から知られているように、基本的に不経済であり、物理の法則に反し、従って経済の法則に反し、物理の世界では、温度の変化は、重力や慣性に対する抵抗に次いで大きなエネルギーを要求し、一貫製鉄所では、加熱と冷却を4度繰り返し、そのうえ高熱の重量物を持ち上げ、相当の距離を運ばねばならないので、このような高炉の特有の弱みを緩和するイノベーションを行なえば、鉄鋼の生産コストを大幅に引き下げられることは、かなり前から明らかになっていたのです。
そして、電炉が行なったことが、まさにそれであり、電炉は、決して小さな製鉄所ではなく、最低規模の電炉さえ、年間売上1億ドルであるのですが、最低規模の一貫製鉄所と比べて、6分の1から、10分の1に過ぎず、従って、電炉は、すでに市場に存在する需要に合わせて、生産能力の増大を小刻みに行なうことが出来、しかも、電炉は一度加熱するだけであり、冷却を行なわず、そのまま全プロセスを終了し、電炉は、原料として鉄鉱石の代わりに鉄屑を使い、最終製品も鋼板や棒鋼に特化しているので、高炉が労働集約的であるのに対し、オートメ化が容易であり、電炉の生産コストは高炉の半分以下であるのです。
各国の政府、労働組合一貫製鉄所は、あらゆる方策をもって電炉の発展を抑えようとしたのですが、電炉は増え続けていて、2000年には、アメリカで消費される鉄鋼の半分以上が電炉によるものかもしれないのですが、その間、高炉のよる大規模一貫製鉄所のシェアは低下していったのです。
私は機械工学出身でしたが、上記の高炉一貫生産製鉄所のジレンマを知らなかったので、改めてドラッカー博士の見識の広さに驚くと同時に、一つの産業の中にこのような問題の存在にも驚き、ライバルとの競争に明け暮れる以上に、業界の構造にメスを入れ、自社が存在している、業界の特質を理解することの大切さを改めて理解しました。
多分、どのような業界でも深く掘りすると、恐らくこのようなギャップ、ジレンマを抱えているはずで、ほとんどの業者は、ライバル業者との間の競争に明け暮れていて、このようなギャップの存在を掘り下げようとしている者はいないのです。
日本の外食産業は、ピークの1997年(18年前)まで右肩上がりで成長し、その後、ほぼ一貫して右肩下がりで落ち続け、それはまさに、1995年にピークを打った生産年齢人口の推移と、ほぼ同じ推移を辿っているのですが、生産年齢人口の減少幅(12%)よりも、落ち幅が大きく、約20%程度、ピークより減少しているのです。
この余分な落ち幅がギャップであり、サラリーマンの小遣いのピーク比での半減が大きく影響をしていると見ていて、サラリーマンの小遣いの半減が、居酒屋市場を直撃して、居酒屋市場はピークと比べると、市場規模を3分の2以下にしているのですが、外食市場全体の数字に比較して、うどん蕎麦店市場は堅調で、2013年のデータでも、過去、最高の市場規模を誇っているのは、生産年齢人口の落ち込みを完全にカバーしているシニア世代の影響が大きく、以上の事実より、私はこれからうどん、蕎麦、ラーメン店が狙っていくべきお客さまは、女性とシニアであるとの結論を導き出し、この事実を麺学校で指導し、現に、サラリーマンを対象の麺専門店ビジネスは苦戦し、女性、シニアを狙っている坂東太郎とか、ラッキー・ピエロのような飲食店が成功しているのです。
当社の場合も、麺市場の規模と、製麺機市場の間のギャップの存在に気づいていて、製麺機を購入するお客さまは、新規にうどん蕎麦店、ラーメン店を開業するお客さまと、既に開業しているお客さまが大きな需要者であり、新規開業者が増えれば増える毎に、需要は大きくなり、製麺機市場は、麺市場の景気の波に左右されたのですが、現在は景気よりも製麺機を使用する人手の過不足に影響をされているのです。
画像は、本社の外構のフェンスに沿って植えたミカンの木で、まだ植えて2、3年で、木は未だ小さいのですが、すでに大きな実を結んでいるのです。
植えたから、実を結んだのであり、少し時間はかかりますが、播かない種は生えず、植えないと実らないのです。
今日も最高のパワーで、スーパー・ポジテイブなロッキーです。