いよいよ、13日間にわたる出張も、あと1日の移動日を残すだけになり、ブダペストでの出発の朝を迎えました。
昨日は、朝食、昼食、夕食を兼ねて、現地のお客さまが地元で有名なハンガリー料理の店にご案内して戴きました。
ジプシーの生演奏のある店で、レストランに到着したのは2時頃ですが、お客さまで溢れていました。
ハンガリー料理の特徴は、肉料理と魚料理で、肉料理は豚肉が中心、魚料理は海がないので、淡水魚の鯉とナマズが中心で、味付けは濃く、塩度も高いのが特徴で、味付け自体はなかなか美味しいのですが、心臓病が多いそうです。
量目も半端ではなく、われわれ4人は2時から4時までレストランで食事をとりましたが、3人前を注文したのに、食べたのは半分以下で、残りはお客さまが持ち帰ったほどです。
量目が余りにも多かったので、夕食をパスしても丁度良いくらいでした。
食事の間中、ジプシーの生演奏で哀愁を帯びた音楽をずっと演奏し、異国情緒の雰囲気を味わいながらの食事でしたが、途中で、われわれ日本人がいることに気 づいたジプシーの一人が、日本の歌の「荒城の月」、「さくらさくら」、「上を向いて歩こう」等を席の近くまで来て、バイオリン演奏をしてくれました。
ジプシー独特の哀愁のあるメロデイーで、異国で日本の歌を聞くと、ほろりとしてしまいそうになりました。
昨晩は現地でのお客さまのご厚意で、ブダペストの有名なオペラに、ご案内を戴きました。
生まれて初めての体験で、プロ中のプロのダンサーたちの感情のこもった、また、感情をあおるような音楽との完全な連携は、まさに芸術作品そのもので、高い質を理解出来る観客とオペラが一体化していました。
今回の5ヵ国の早足での出張を振り返ると、いろんな気づきが得られました。
5ヵ国のうち、一番豊かな国はスイスで、国全体の戦略が素晴らしく、国を支えている企業の戦略も素晴らしかったのです。
念のために、今回訪問した5ヵ国と日本との国民一人当たりのGDPを比較してみると、たいへんな驚きがありました。
1980年から現在に至る、過去35年間、日本以外の国々のGDPは皆、右肩上がりに伸び続けていて、日本だけが1980年から90年までの10年間は急成長しているのですが、1990年から現在に至るまでの約25年間は、ほとんど伸びがないのです。
日本と5か国間の1990年から2014年までの約25年間の国民一人当たりのGDPの伸び率を比較すると次の通りです。
日本は105.6%、イギリスは262.7%、フランスは179.1%、ドイツは216.8%、スイスは149.4%、ハンガリーは1494.8%。となっていて、ハンガリーが図抜けているのです。
そして、それぞれの国の国民一人当たりのGDPの順位はスイスが世界4位で、今回訪問した国の中ではトップ、次が18位ドイツ、20位フランス、23位イギリス、24位日本、58位ハンガリーと続きます。
但し、約35年前の1980年は、日本はこれらの国々の中ではトップであったのです。
また、ハンガリーの最近の伸びは大きいのですが、世界ランキングでは、まだ中間位なのです。
日本では、約20年前の大卒の初任給が、現在とほとんど変わらない20万円で、失われた20年と呼ばれていて、国民一人当たりのGDPの伸びがないことからもよく分かります。
以上より明確なことは、国全体の所得が大きくなければ、国民は豊かになることが出来ないのです。
GDPは、企業においては、売上とか利益に相当する部分です。
この数字を見て、改めて、企業のトップとしての責任を感じました。
ドラッカーの言っている「ビジネスの目的はお客さまの数を増やし続けることである」ということが改めてよく分かります。
企業の成果は、世の中に貢献することであり、お客さまに貢献し続けることにより、お客さまの数を増やし続けることが出来るのです。
今回も一度に5ヵ国を見て回ったので、それぞれの国の違いを肌で感じることが出来、その原因もよく分かりました。
改めて、マネッジメントの大切さを理解出来ました。
本日も、ドラッカーの名言の解説で、今日のテーマは「事業の2つの機能」です。
63.事業の2つの機能
ビジネスには2つの機能しかない。
マーケティングとイノベーションである。
Business has only two functions – marketing and innovation.
(解説)ドラッカーによれば、ビジネスの正しい目的はただひとつだけ、顧客を作り出すことであり、ビジネスの機能は、マーケテイングとイノベーションの2つの機能しかないとのことです。
更に、ドラッカーは、マネッジメントとマーケテイングに対して、以下のような指摘をしているのです。
「マネジメントの仕事は、組織をして成果をあげさせることであり、ここにいう成果とは、社会に対する貢献である」(『変貌する経営者の世界』)
「組織の内部に発生するものは、コストであって成果ではない。いかに生産性の高い工場といえども、製品が売れなければコストの発生源にすぎない。」
「企業は市場の支配下にある。この市場の力ゆえに、いかに強大な企業といえども、組織内部への関心を組織外部における成果に従属させざるをえない。」
「これまでマーケティングは、販売に関係する全職能の遂行を意味するにすぎなかった。だが、それではまだ、われわれの製品からスタートしている。」
「マーケティングは顧客からスタートする。顧客の現実、欲求、価値から始まる。「われわれの製品にできることはこれである」ではなく「顧客が価値ありとし、必要とし、求めている満足はこれである」という。」
「マーケティングが目指すものは、顧客を理解し、製品とサービスを顧客に合わせ、おのずから売れるようにすることである。だが、ほとんどの企業がマーケティングのことを、製品を売り、引き渡すことによって報酬を得るための体系的な活動としか理解していない。」
「販売とマーケティングは逆であり、同じ意味でないことはもちろん、補い合う部分さえない。なんらかの販売は必要であるが、マーケテイングの理想は、販売を不要にすることである」(『断絶の時代』)
以上を踏まえて、ドラッカー流、成功する企業の7条件とは次のようなものではと、まとめました。
世界にはドラッカーよりマネッジメントの指導を受けて大きく成功した企業がたくさんあり、影響を受けた経済人、コンサルタントがたくさんいます。
われわれが普段目にするマネッジメント系の本のほとんどが影響を受けていると言っても過言ではないほど、広い範囲に影響力は及び、永く繁栄し、成功している企業のほとんどの思考のベースになっているのは、ドラッカー・マネッジメントなのです。
私も8、9年前にダイアモンド社主催のドラッカー塾に通い始めたことが、ドラッカー・マネッジメントを理解するきっかけになり、ドラッカー・マネッジメン トは多くの日本の企業にも取り入れられていますが、日本人の持つ思考体系とドラッカー・マネッジメントの親和性が高いことが、その大きな要因ではないかと 思います。
親和性が高い原因が、ドラッカー・マネッジメントは、現実の世の中で起きている真理を深く学ぶことと何ら変わらなく、世の中の真理を正しく把握するための 考え方を、ドラッカーは私たちに教えてくれ、世の中の普遍的な真理について、96歳で亡くなるまで追及を続けた人生を送ったのです。
ドラッカー博士が人生をかけて追求し続けたものは、大きく分けて下記の7項目に分類できるのではと思います。
1.マネッジメントの真髄を理解する。
2.マーケテングの真髄を理解する
3.イノベーションの真髄を理解する
4.時代の大きな変遷を理解する
5.お客様の本質を理解する
6.強みを基盤とする
7.成果は、問題解決ではなく、機会の開拓によって得られる
上記1.のマネッジメントの真髄とは、
①使命を明確にすることがすべての始まり
②使命を明確にすることにより、価値、お客様、成果、目標が決まる
③マネージメントとは、(人の強みを発揮させ弱みを意味なくさせることによって)成果をあげること
④マネッジメントとは、ものごとを適切に行うこと
⑤マネッジメントとは、アート+サイエンス
2.マーケテングの真髄とは、
①お客様に自社の熱心な営業員になっていただき、結果的に営業とか販売活動をゼロにすること。
②マーケテングとは単なる顧客の創造ではなく、熱狂的なファン客を作り、増やし続ける企業活動
③マーケテングとはお客様に対してリーダーシップを取ること
④マーケテングとはお客様に対する価値創造
⑤お客様の目的を達成し、幸福な状態を創りだすあらゆるコミュニケーション活動
3.イノベーションの真髄とは、
①過去との断絶であり、過去の世界と縁を切り、明日を創造すること
②廃棄、すなわち、何かを無くすることにより、可能になる
③日々の仕事に組み込まれていなければいけない
④強みを基盤にしなければいけない
⑤経済、社会、業界、生活を変えるものでなければいけない
4.時代の大きな変遷を理解するのは、次の通りです。
①地球の誕生以来、われわれ生物の歴史は進化の歴史であり、進化したものだけが生き残ることが出来た
②肉体労働者の時代の成果は、いかに効率よくを追求することで得られたが、知識労働者の時代の成果は、何を行うかで得られるようになった。
③肉体労働の時代から知識労働、サービス労働の時代になり、常に知識を増すための生涯学習が欠かせなくなった
④人と人が一緒に働くようになり、成果の上がる働き方を学び続けることが欠かせなくなった
5.お客様の本質の理解は次の通りです。
①使命、価値、コンセプトを共有してくれる人
②商品、サービスを購入してくれる人、未だ、購入していない人
③市場のほとんどのお客様は、未だ自社、自店の商品、サービスを利用していないので、これらをお客様にすることにより、市場は広がる
④これからは、上記①,②のお客様+社員、従業員+協力業者の3者すべてをお客様であり、ビジネスパートナーとして扱うことが大切
⑤予期せぬお客様こそ、真のお客様
⑥熱烈なファン客こそ、真のお客様
6.強みを基盤にするとは、次の通りです。
①お客様のニーズに貢献できる自社の強みを更に強くする
②飛び抜けた強みとは、お客様にとっての魅力
③自社が当たり前に出来ていることで、他社に出来ないこと
④情熱の持てる分野
⑤選択と集中を行うと、強いビジネスにしか集中出来ない
7.成果は、問題解決ではなく、機会の開拓によって得られるとは、
①自分達の事業機会になる様な使命の実現が前提
②自分達が成長していける事業機会、世の中の変化を見つける
③成果を上げる為には、資源を、問題ではなく、機会に投じなければならない
④成果は単なる有能さではなく、市場におけるリーダーシップによってもたらされる
⑤社会に貢献し、顧客にとって価値があること
画像は、レストランで演奏していたジプシーの人たちで、ジブシーはもともと、北インド起源の移動型民族で、音楽の才能が発展しているようです。
今日も最高のパワーで、スーパー・ポジテイブなロッキーです。