ビジネスの世界で、一番規模の大きいビジネスに自動車ビジネスがあり、自動車ビジネスも生き残りをかけて、大手メーカー同士が凄惨な競争を繰り広げているのです。
し烈な競争は、ベンチャー・ビジネスだけではなく、自動車のようなビッグ・ビジネスも同様であり、どんなビジネスであろうと、ビジネスをやっている限り、片時も安心できる状態ではなく、今の時代は、少しの油断も命取りになる可能性があるのです。
今から20~30年前位は、日本メーカーが北米で大成功し、ビッグ・スリーを追う立場であったのですが、世界の頂点に立ったトヨタも今は追われる立場になっているのです。
トヨタは、国内メーカーとの競争では、完全な勝利を得て、世界で激しく競いあっているのは、VW、GM、或いは、現代自動車との競争なのです。
ニッチな高級車分野では、BMW、ベンツ、アウデイとの競争が繰り広げられ、トヨタと言えども、簡単には勝ててないのです。
さらに、自動車メーカーの競争を複雑にしているのが、環境への取り組みで、電池、ハイブリッド、ブラグイン・ハイブリッド、燃料電池、デイーゼルと、多彩な競争になり、競争の次元が変わってきているのです。
40~50年以前の自動車メーカーの競争は、国内だけであったのが、今は完全にグローバル競争で、幾ら国内で勝っても、世界で勝てないと意味がないのです。
TVを初め、エレクトロニクス・ビジネスでは、既にグローバル競争で、日本メーカーは海外のメーカーに敗退してしまったのです。
われわれのような、小規模ビジネスでも同じようなことが起き、国内だけの勝負でなく、海外を含めた競争になっているのです。
国民一人当たりのGDPが世界第4位の豊かな国のスイスは、すでに、輸出比率99%という小規模ビジネスを国内に抱えているのです。
スイスは人口800万人しかいないので、国内需要が少なく、どうしても世界に出ていかざるを得なかったのですが、日本は人口がまだ世界10位の人口大国であるので、国内だけでも中小企業にとってはまだ十分な市場があるので、無理に世界に出ていかなくてもやっていけるのです。
日本の高度成長期は、日本の人口が多く、国内に十分な市場があったことは、多くの企業にとって大きなメリットであったのですが、国際化が遅れるので、今後は、デメリットになる可能性が高いのです。
これからは、規模の大小、業種は問わず、国際化は避けて通れない道筋であり、今まで国際化に順応しなくても生きてくることが出来ただけ、幸せであったのです。
スイスとか、シンガポール、或いは、北欧の国々は国内に人口が少ないので、国を繁栄させるためには、国際化を避けることが出来なかったので、その分、早く豊かな国になることが出来たのです。
このような世界の事実を確認することに、われわれ中小企業こそ、今が正念場であると、強く実感する次第です。
私は、今回、ドラッカーの「イノベーションと起業家精神」を学び、この本が最初に出版されたのは、1985年であり、ドラッカーの知の世界の先進性に驚くとともに、なぜ、もっと早く真剣に学んでいなかったのかと、大きな後悔をしました。
シンガポールの現在の繁栄を作ったリー・クアンユーの戦略と、ドラッカー・マネッジメントは深い部分で結ばれているような気がします。
30年以上も前に、ドラッカーはイノベーションに関する概念をこのように、詳細にわたるまで、まとめきっていたことにたいへんな驚きを感じます。
毎日、こうしてドラッカー・マネッジメントをひも解いていくと、ドラッカー自身と対話しているような気になるから、不思議です。
本日も、ドラッカー選書「イノベーションと起業家精神(下)」(ダイアモンド社)に基づき、イノベーションについて、深くドラッカーから学んでいきます。
ぜひ、一緒にイノベーションと起業家精神を磨いていきます。
◆資金構造を超えた成長
ベンチャー・ビジネスは、キャッシュフローの分析と予測と管理を必要とし、ここ数年、(ハイテク企業を例外として)アメリカのベンチャー・ビジネスの経営状態がよくなっているのは、新しい起業家たちが、起業家精神には財務上のマネジメントが不可欠であることをようやく理解するようになったためであるのです。
財務のマネジメントは、キャッシュフローの予測によって容易に行うことができるのですが、ここでいう予測とは、希望的観測ではなく、最悪のケースを想定した予測であり、キャッシュフローの予測と計画については、昔から、「債務は思ったよりも2か月早く決済しなければならず、債権は2か月遅く決済される」という経験則があるので、ベンチャー・ビジネスにとっては慎重すぎるということはなく、たとえ慎重すぎたとしても、資金が一時的に余るだけの話であるのです。
つねに1年先を見て、どれだけの資金がいつ頃、何のために必要になるかを知らなければならず、1年の余裕があれば、資金の手当てはほとんど可能であるのですが、切迫した状況のもとで資金を調達することは、事業がうまくいっている場合でも困難であり、法外なコストがかかるのです。
しかも、重要な時期に、最も重要な人材に寄り道をさせることになり、数か月間にわたって金融機関をまわり、財務の見通しの練り直しに時間とエネルギーを使わされ、挙げ句は、わずか3か月の資金繰りのために、事業そのものを抵当に入れざるを得なくなり、再び時間と頭脳を事業に集中できるようになった頃には、取り返しのつかない大きな機会を逃しているのは、ベンチャー・ビジネスの本質からして、機会が最も大きくなるとき、資金繰りは最も苦しいからであるのです。
成功しているベンチャー・ビジネスは、自らの資金構造を超えて成長し、これまた経験則によれば、新しい事業は、売り上げを40パーセントから50パーセント伸ばすごとに、それまでの資金的基盤では開に合わなくなり、資金構造も変えなければならなくなっていくのです。
ベンチャー・ビジネスは、成長するに伴い、オーナー自身や家族、あるいは友人という私的な資金源では問に合わなくなり、株式の公開、既存企業との提携、保険会社や年金基金からの資金調達など、大きな資金源をもたなければならなくなり、増資によって資金を調達してきたのであれば、長期の借入を行わなければならなくなり、その逆もあり、成長によって、それまでの資金構造は陳腐化し、障害とさえなるのです。
事業経営には、資金は欠かせず、幾ら赤字であっても資金さえ続けば、事業はやっていけるのですが、資金が途絶えた途端に事業は駄目になるのです。
そして、資金について、現在の時代に余計に難しくなっているのは、ほとんどの資金の動きは目に見えず、コンピュータ・システムで処理されていて、われわれの目には見えないのです。
これは、会社の資金だけでもなく、家庭のお金も同じで、ほとんどのお金は、ITにより処理されて、ますます見えなくなっているのです。
この点からも余計に現金の管理は大切なのです。
◆フランチャイズ成功の原則
もちろん、資金計画が比較的容易なベンチャー・ビジネスもあり、レストラン・チェーン、病院チェーン、専門店チェーン、住宅建設業など、各地で類似の事業を展開しているベンチャー・ビジネスでは、各事業単位がそれぞれ独自に資金繰りをすることができ、フランチャイズ制をとったり、あるいは、地元の人たちに有限責任のパートナーとして参加してもらうことができるのです。
このようにすれば、成長と拡大に必要な資金を段階的に調達していくことができ、一つ一つの事業が成功すれば、それが次の事業に対する投資家への保証と誘因になっていくのですが、この方法が機能するためには、以下の3つの原則があるのです。
1.事業単位のそれぞれをできるだけ早く、遅くとも2、3年以内に採算に乗せなければならない。
2.素人のフランチャイジーや外科センターの所長など、マネジメント能力のあまりない人たちでも、本部からの指示なしに無事にマネジメントできるよう、事業内容を定型化しておかなければならない。
3.事業単位のそれぞれが、かなり早い時期に、追加資金を必要としなくなり、むしろ次の事業単位を資金的に助けられるようにならなければならない。
以上のようなマネッジメント・レベルを上げ続けるのは、当社でも大きな課題であり、財務のプロは必ず必要なのです。
◆死活問題
このような独立した事業単位として資金を調達することのできないベンチャー・ビジネスにとって、資金計画はまさに死活問題であるのですが、そのようなベンチャー・ビジネスであっても、つねに3年先を見越し、最大の必要資金量を想定して計画しておくならば、必要な資金を、必要なときに、必要な方法で調達することができるのです。
ところが、資金源や資金構造を超えて成長してしまったあとでは、自らの独立はもちろん、その生命まで危険にさらすことになり、うまくいっても、創業者は、あらゆる起業家的なリスクをおかして、懸命に働いた挙げ句、他の豊かな者をオーナーにしただけとなり、自らは雇われの身となり、新しくやってきた投資家がオーナーとなるのです。
事実、以上のことは、成長したために起きる、不幸な出来事なのです。
◆突然の不能
ベンチャー・ビジネスは、成長のマネジメントに必要な財務システムを確立しておかなければならず、素晴らしい製品をもち、市場において素晴らしい地位を占め、素晴らしい成長の可能性をもつベンチャー・ビジネスが、次から次へと登場してくるのですが、その多くが、突然、マネジメント不能となり、未収金、在庫、製造コスト、管理コスト、アフターサービス、流通、そのほかあらゆるものをマネジメントできなくなるのです。
1つをコントロールできなくなると、あらゆることをコントロールできなくなり、それまでのシステムを超えて成長してしまったためであり、しかも、ようやく新しいシステムができた頃には、市場は失われ、顧客は、反感とまではいかなくとも不信を抱くようになっていて、流通業者は信頼しなくなっているのです。
当然であるのですが、最悪なことに、従業員がマネジメントを信用しなくなっているのです。
急激な成長は、つねに既存のコントロール・システムを陳腐化し、ここでも、成長率にして40パーセットから50パ-セントが、1つの段階として重要な意味をもち、1度コントロールの能力を失うと、取り戻すことは難しいのですが、予防することはかなり容易であるのです。
自社にとって最も重要なこと、たとえば、アフターサービス、未収金や在庫、製造コストについては、財務の観点から検討しておかなければならず、最重要項目が4つないし5つを超えることはほとんどないのです。
これに加えて、マネジメント関連のコストについても気をつけておかなければならず、マネジメット・コストの増大は、マネジメントの人間の雇い過ぎを意味し、マネジメントの構造と仕事の仕方が、事業の変化に追いつけなくなり、コントロールできなくなったことを示すのです。
マネッジメントの人間の雇い過ぎと、マネッジメントの不足はどちらもいけないのですが、バランスを取ることが大切なのです。
それよりも、今の日本で、最も難しくてたいへんなのは、マネッジメントを理解出来る人たちを採用したり、育成したりすることで、プロのマネッジメントを創れるような人材の確保と育成であると思います。
ベンチャー・ビジネスが成長していくためには、それらの最重要項目について、つねに3年先を見越し、コントロールのシステムを確立しておかなければならず、細部にわたるシステムは必要ないし、数字も大雑把でよく、重要なことは、それらのことを意識し、注意し、必要に応じて迅速に対応できるようにしておくことであり、最重要項目に注意さえしていれば、通常、混乱は生じないのです。
以上の3年先を見通しておくことの大切さは、本当にその通りであると思いますが、ほとんどの起業が3年先を、既に起きている未来として理解出来ないのです。
財務上の見通しには、さほど時間はかからないのですが、つねに検討しておかなければならず、そのための技術的な手法は簡単に手に入り、会計の教科書に説明してあるとおりであるのですが、自ら行わなければならないのです。
画像は、シンガポールのイベントで、お客さまに説明を行なっている海外部門責任者の三井で、後ろ姿は私です。
今後の海外のイベントでは、国内の経営講義同様、同時通訳が必要になってきました。
今日も最高のパワーで、スーパー・ポジテイブなロッキーです。