昨日から2月の本社でのうどん学校とラーメン学校の経営講義が始まり、北米、オセアニア、東南アジア等の多くの国より、さまざまな生徒さんたちが集まり、熱い授業が始まりました。
今回の生徒さんたちは、比較的おとなしい人が多く、本音の質問は余り出なかったように思います。
私の授業の特徴は、生徒さんのどんな質問にも回答する方式で、質問のレベルが高ければ高いほど、私のモチベーションが上がり、授業が盛り上がり、時間も延長するので、出来るだけ質問を要求するのです。
私の授業では、使命、コンセプトの大切さを訴えているのですが、今までこのようなことを考えたことのない生徒さんには、もう一つ、ピンと来ないようで、昨日の生徒さんの様子では、余り理解されていないようだったので、本日のフェイス・ブックではIKEAの事例を取り上げて、コンセプトの必要性、重要性を説 明することにしました。
IKEAは世界中どこにでもある、世界最強の家具屋で、IKEAが大成功したので、多くの世界のチャレンジャーたちが真似をしたのです。
ところが、真似をしたライバルたちは、皆、敗退して消えてしまったのです。
IKEAの戦略は、秘密ではなく、誰でも分かるようにオープンになっているのですが、創業者オーナーの価値観、使命、コンセプトが明確であり、一貫性を持ち、DNAとして守り抜かれているのです。
そして、一貫性を持ち、永い時間をかけてノウハウとか、さまざまな要素を積み重ねてきているので、一朝一夕に真似をして、IKEAを超えることが出来ないのです。
IKEAに挑んだライバルたちは、こんなに明確な価値観、使命、コンセプトを持ち合わせてなく、形だけを真似、同時に一貫性にも欠けていたのです。
従って、永く繁栄するには、企業としての大本である、価値観、明確な使命、コンセプトは外せないし、出発点であり、守り続けることが大切なのです。
昨日も授業の中で、なぜ、マクドナルドは外食の世界トップになることが出来たのか、なぜ、今はトップでなく、苦しんでいるのかと言うような質問がありました。
創業者レイ・クロックが1965年頃に創業し、QSCをDNAにして、急成長し、大成功を遂げたのです。
レイ・クロックが生きていた頃は、当然、このDNAが頑なに守られていたのですが、時代の経過とともに、DNAが薄れてしまい、昨年のような不祥事を起こしてしまったのです。
日本では1971年に銀座の三越で開店し、当初はファッショナブルな食べ物として、大人気になり、高級路線であったのです。
しかし、日本では、1994年に価格破壊を起こし、半額セールを始め、マクドナルドは安い食べ物の代名詞のようになり、当初のDNAは薄まっていたのです。
現在の日本の外食産業の地位は決して高くなく、人手不足の現在、外食産業は良い人材を集めるのに大変苦労しているのです。
しかし、先日訪問したロンドンを初め、外食産業は利益の上がり易い、可能性の高いビジネスとして、多くの国々で、有能な若い人たちが目指すビジネスになっています。
日本の場合は、大手企業が無益な価格競争に陥り、誰も儲からない、或いは、大きな利益が上がり難いビジネスにしてしまったのです。
従って、私はいつも日本の外食産業の過去の思考の延長線上ではなく、これからの日本の外食産業を少しでも良くするために、喜んで払って貰える高値戦略(WTP)を訴えているのです。
いつも当社の麺学校に参加する生徒さんたちは、過去のさまざまな常識で頭の中が一杯になっているので、それを修正するのは、相当なインパクトのある話でないと、理解して貰えないのです。
これは、毎回の経営講義の私の大きな課題であり、生徒さんたちとのコミュニケーションのレベルを上げ続けていくのも、これからの私の大きな課題です。
今回、台湾で訪問した周さんのように、うどん学校の最中でもたいへん熱心で、情熱が溢れていたので、私も動かされて、台湾まで行ってきたのですが、このような情熱溢れる人たちに出来るだけ多く参加して欲しいと思っています。
周さんの他にも、あの生徒さんの店は是非、チャンスを作って行ってあげたいと思う店が、世界各地にいくつもあります。
私が情熱が溢れ、熱心なのは当たり前ですが、生徒さんたちにも、同じ参加するのであれば、思い切り、熱心に参加して欲しいと願う次第です。
本日も、ドラッカーの名言の解説で、今日のテーマは「動く前に、何をいかに行うかという問題に取り組むことが大切」です。
84.動く前に、何をいかに行うかという問題に取り組むことが大切
行動と動作を混同してはいけない。
製品、サービス、プロセスが成果を生まなくなり、その廃棄が必要になると、あらゆる組織が組織改革に走る。
もちろん、組織改革が必要なことは多い。
だがそれは、何をいかに行うかという問題に取り組んだ後に行うことである。
組織改革だけでは、単なる動作であって、意味ある行動の代わりとはならない。
(解説)動く(動作)の前に、先に深い思考を行ない、価値観、使命、コンセプトを明確にして、卓越した戦略を立てることの重要さを訴えているのです。
その素晴らしい成功事例が家具業界の巨人、IKEAであり、ものごとを上手く行なうには、周到な準備の大切さを訴えていて、戦略について、私が一番納得できる解説は「ハーバード戦略教室」(シンシア・モンゴメリー著)に書かれている内容で、下記の通りです。
「戦略とは、企業の競争力や独自性の土台となる価値創造システムであり、閉じたものではなく、開かれたものであるべきなのだ。それは進歩し、発展し、変化し続けるひとつのシステムなのだ。」
普通、戦略とは企業の内部だけで秘密裏に共有されるように思われているのですが、そうではなく、お客さまを初め、外部にもオープンにすべきとしていて、戦略の素晴らしい事例として、IKEAを挙げているのです。
・・・「ビジネス・ウイーク」誌にはこう記されている。「IKEAは恐らく世界中のどの企業よりも、人びとのライフスタイルを支配するようになった。 IKEA WORLDには、現代的なデザイン、安い商品、独創的な宣伝、そして興奮が溢れている。それらは、同じ業界の企業はもとより、他業界の企業も真似できない ものだ。」
・・・
オーナーのカンプラードは顧客のことをよく理解していた。彼はIKEAの哲学を次のように語る。「IKEAが対象にするのは、大多数の、あまり余裕のない 客である。したがって、ただ安い、あるいは他より安い、というだけではだめだ。どこよりもはるかに安いというのでなければ、(中略)商品は、平均的な客が 即座に、これは安い、と思えるようなものでなければならない。」
・・・
もし、オーナーのカンプラードがここにいて、イケアの本質を説明して欲しいとわたしたちが頼んだら、彼は何と答えるだろう。かって、カンプラードは、同じような質問にこう答えた。
「私たちには明確なコンセプトがある。それは、優れたデザインと機能性を兼ね備えたホーム・ファニッシング製品(家を快適にするために必要なものすべて) を幅広く取り揃え、より多くの人が買えるよう、できる限り手頃な価格で提供し、「より快適な毎日を、より多くの人に」という目標を実現することだ。」
この言葉は、カンプラードがたまたま口にしたものではない。彼はそれを何度となく語っている。報告書や小冊子にも記し、それを社員に配った。この言葉はIKEAの新入社員が最初に学ぶべきものであり、会社の年次報告書にもハッキリと記されている。
IKEAはこの主張を「コンセプト」と呼んでいるが、わたしは敢えて「目標」と呼びたい。IKEAであれ、他のどの会社であれ、目標は会社の本質を語る。 その会社が、なぜ存在するのか、どのような独自性を備えているのか、他とどう違っのか、なぜ、誰にとって、重要なのか・・・これらの疑問に、IKEAの目 標がどう応えるかに注目して欲しい。
・・・
「ある家具商人の言葉」の中に、カンプラードの考えは凝縮されている。「ある家具商人の言葉」とは、1976年に、急成長を遂げているIKEAの本来の目標を忘れないように、カンプラードが記した文章である。
「私たちは大多数のための企業になることを決意した。(中略)通常、多数派の懐にあまり余裕はない。私たちが顧客とするのは、その多数派なのだ。第一の ルールは、きわめて安い価格を維持することだ。しかしただ安いのではなく、意味のある安さでなければならない。機能性も技術も、妥協は許されない。」
つまり、IKEAの推進力となったのは低価格だけではなかったのだ。低価格はゴールではなく、むしろ「より快適な毎日を、より多くの人たちに」という目標を達成するための手段だった。
以上のように、著者はIKEAのコンセプトを目標と呼んでいますが、いずれにしても、その事業の本質のことであり、IKEAの大躍進の大本になる、コンセ プトが既に39年年前には完成していたのと、大躍進の陰には、オープンになっている、明確なコンセプト、戦略が存在しているのです。
尚、組織の在り方について、マネジメント寺子屋「日新塾」が大変参考になるので、以下のように、ドラッカーの警鐘を引用します。
■ マネジメントとは、「組織をして生産的ならしめるもの」である。
■ 組織とは、「特定の目的・ミッションを共有した集合体」。
組織構造・・・正しい構造が成果を約束してくれるわけではない。
しかし、間違った構造は成果を生まず、最高の努力を無駄にする。
①組織構造は業績の前提条件
組織構造が優れていれば、優れた業績がもたらされるわけではない。憲法が優れていれば偉大な大統領がもたらされるわけでなく、法律が優れていれば道徳的な 社会がもたらされるわけではない。しかし、組織構造が間違っていれば、マネジメントがいかに有能であっても、優れた業績はもたらされない。
②組織の基本活動を中心に据えよ
組織構造の設計は「組織の目的を達成するには、いかなる分野において卓越性が必要か。」との問いに答えることから始まる。関心を向けるべきは、組織の目的 と戦略の成功に欠くことのできない基本活動である。この基本活動こそ、まず識別し、規定し、組織し、中心に据えなければならない。
③構造は戦略に従う
構造は戦略に従う。組織構造は目的を達成するための手段である。組織構造に取り組むには、目的と戦略から入らなければならない。これこそ組織構造について の実りある洞察である。組織づくりの最悪の間違いは、理想モデルや万能モデルを生きた組織に機械的に当てはめるときに生じる。
④戦略の変更が新たな分析を始める
戦略を変えれば、組織構造を分析しなおさなければならない。市場や技術の変化、多角化、目標変更のいずれの理由であっても、戦略を変えれば、基本活動についての新しい分析と、それら基本活動に対応する組織構造の採用が不可欠となる。
⑤組織が守るべき原則
組織には、守るべきいくつかの原則がある。透明でなければならない。誰もが構造を知り、理解できなければならない。最終的な意思決定者がいなければならな い。危機にあってはその者が指揮をとる。権限には責任が伴なければならない。誰にとっても上司は一人でなければならない。階層の数は少なくしなければなら ない。
⑥働く者が仕事を理解しやすいか
組織構造は、あらゆる者が組織全体の仕事を理解できるものでなければならない。「自らの仕事が組織全体のどこに位置し、全体の仕事が自らの仕事、貢献、努力にとって何を意味しているか」を理解できなければならない。
⑦組織を動かす時間は少ないか
優れた組織構造とは、誰もが自分自身をマネジメントし、動機付けることのできる構造である。即ちマネジメント、組織構造、管理、コミュニケーション、人事など、組織体を動かすことに時間を取られないほどよい。
⑧階層が一つ増えると雑音は倍になる
マネジメントの階層が増えるごとに、組織は硬直性を増す。階層の一つ一つが意思決定を遅らせる。情報理論の法則によれば、情報量は、情報の中継点つまり階層の数が一つ増えることに半減し、雑音は倍となる。
⑨今こそミドルを減量せよ
今こそミドルの減量を開始すべき時である。一つの方法は不補充である。ポストが定年退職、死亡、辞職によって空席になっても、自動的に埋めてはならない。 検討すらしてはならない。6カ月から8カ月、空席にして静観すべきである。強い要求がなければ、そのままポストを廃止する。
⑩解決すべき年齢構造の偏り
高年者ばかりのマネジメントの問題は、かなり早く自然消滅する。企業自体が高年者と共に死滅でもしない限り、問題は解決される。だが、若年者ばかりのマネ ジメントでは、その次の世代の若年者には、いつまでも昇進の機会がない。重要なポストは、すべて今後20年も先がある人たちによって占められている。
⑪組織構造それぞれの強みと弱み
組織構造の種類に応じた強みと弱みを知っておかなければならない。「どのような仕事にはどのような組織構造が適しているか、仕事の変化に応じていつ組織構造を変えるべきか」を知っておかなければならない。
⑫組織の目的は均整さではない
唯一絶対の答えがあるに違いないとの考えは、捨てなければならない。組織の中の人間が成果を上げ、貢献できるようにする組織構造は、すべて正しい答えである。人のエネルギーの解放とその動員が組織の目的であって、均整さや調和が組織の目的ではない。
⑬組織改革を手軽に行う危険
組織改革を手軽に行ってはならない。それは手術である。小さなものでも危険が伴う。たびたびの組織改革は避けなければならない。元々完全無欠の組織はない。ある程度の摩擦、不調和、混乱は覚悟しておかなければならない。『経営の哲学(P・ドラッカー)』より
画像は、昨日の経営講義の授業風景で、生徒さんたちと真剣勝負です。
今日も最高のパワーで、スーパー・ポジテイブなロッキーです。