今回の創造的模倣戦略は、「イノベーションと起業家精神」の中で一番の学びになりました。
8年前と9年前に、ダイアモンド社のドラッカー塾でドラッカー・マネッジメントを学んだ折には、ドラッカー・マネッジメントのエッセンスのほとんどを学び終えたと思っていましたが、今から振り返ると、ほんの入り口を覗いただけに過ぎなかったことがよく分かりました。
それをベースにして本格的にドラッカー・マネッジメントを深めなければいけなかったのです。
今週号の「日経ビジネス」では、あれほど強かったサムスンにも異変が起き、苦しんでいる様子が報道され、サムスンだけではなく、過去強かった韓国企業、現代自動車等も同様に、大きな問題を抱えているのです。
こうしてみると、ビジネスには安心領域は存在しない、安心出来る状態は、一瞬たりともあり得ないことがよく分かります。
過去、強かったところが、時間とともに強みでなくなり、劣化するとともに、新しいライバルが現れ、新しい市場が現われ、いつしか、古いビジネス・モデルになり、市場から追い出されていくのです。
本日の学びである、創造的模倣は、非常に深い内容であり、私が常々、経営講義で生徒さんたちに教えている、「守破離」そのモノであることが分かります。
まず、「守」で先駆者のモデリングを100%忠実に行ない、その本質を理解し、「破」で本質を理解した上で、先駆者とは異なる、市場に合せ、自分の考えを取り入れた改善、改良を行ない、「離」でイノベーションを起こすのです。
そして、製品、サービスを市場に出すのは、「離」のイノベーションを起こしてからであり、絶対に、「守」のモデリング、即ち、コピーしたままの状態であるとか、「破」の改善、改良のレベルで行なってはいけないのです。
ところが、殆どの模倣者は、「守」とか、「破」の段階で市場に製品、サービスを出してしまうのです。
これでは、創造的模倣者にはならず、単なる模倣者であり、創造的模倣者とは、イノベーションの要素が含まれていなければいけないので、必ず、「離」の状態まで進化させてからでないといけないのです。
この戦略を深めていくと、たくさんの可能性が見えてくるのは、まだまだ、世の中ではあれば助かるのに、と思えるようなことはたくさんあるのです。
そして、そのようなことは既に他の業界では行なわれていることはあるのですが、自分の業界では行なわれておらず、もし、他の業界で行なわれていることを自分の業界に取り入れると、多くの人たちに役立つことは多いのです。
想像的模倣も、消費者、お客さまの立場に立ち、それらがいかに役に立つかという視点が大切なのです。
従って、創造的模倣についても、自分の売りたい製品とかサービスを売る手段を考えるのではなく、出発点は世の中であり、業界であり、その中でも困りごとから出発し、業界の大きさと自社とのバランスも大切です。
業界が大きすぎると、大企業の餌食になってしまい、大企業に市場の存在を知らせるような役割しか果たせないので、自社のサイズと業界のサイズの理解も非常に重要なのです。
この様に、創造的模倣戦略も決してリスクない戦略でもなく、深い思考を必要とする戦略であるのですが、既に他の業界で市場の存在が明確になっておれば、自社が市場開拓から始めることは必要ないのです。
いずれにしても、どんな戦略を取るにしても深い学びが必要であり、簡単に出来るものではないのです。
昨年9月18日に左肩脱臼による手術を行ない、金属のプレートを入れていたのが、今月、5月1日に手術をして取り出して貰いました。
約7ヶ月余り、鎖骨にネジで取り付けていたチタンのプレートも取れ、昨日、無事に退院することが出来ました。
これから、徐々に、肩の筋トレが再開出来ます。
本日も、ドラッカー選書「イノベーションと起業家精神(下)」(ダイアモンド社)に基づき、イノベーションについて、深くドラッカーから学んでいきます。
ぜひ、一緒にイノベーションと起業家精神を磨いていきます。
◆イノベーションの完成
これらの例が示すように、創造的模倣は、一般に理解されているような先駆者の失敗を利用するものではなく、それどころか、先駆者は成功していなければならないのであり、アップルは成功していたのです。
先駆者が成功或いは、大成功していて、それを超えなければいけないので、選考者よりもはるかに大きな努力を要し、その成功者を超えなければいけないので、 創造的模倣は先駆者のことを研究するだけでなく、そのビジネスの本質を理解し、そのビジネスにおいて、一番大切なことを見つけ出し、実行しなければいけな いのです。
タイレノールによって業界トップの地位を追われたアセトアミノフェンの最初の薬も成功たったのですが、最初にイノベーションを行った者は、自らの成功の意味を理解できなかったのです。
上記より、先駆者が幾ら成功していても、その意味を理解していないような先駆者のビジネスを見つけ出すのも、成功の秘訣であり、そのビジネスの本質を誰よりも先に理解することが、最終的な勝因になるのです。
アップルは、製品中心であって、ユーザー中心でなかったので、ユーザーがプログラムやソフトウェアを必要としているときに、新しいハードウェアを供給し、アセトアミノフェンを最初に売り出した者も、自らの成功が意味するものを理解しなかったのです。
創造的模倣を行う者は、他人の成功を利用し、創造的模倣とは、一般に理解されているような意味でのイノベーションではなく、創造的模倣を行う者は、製品やサービスを発明せず、製品やサービスを完成させ、その位置づけを行うのです。
通常、新しい製品やサービスは、市場に導入されたときのままの形では、何かが欠けていて、いくつかの特性を追加する必要があるかもしれないし、少しずつ異 なる市場向けに少しずつ異なるものが必要で、製品やサービスを細分化することが求められているかもしれないので、市場で正しい位置づけを行うことが求めら れているかもしれなく、あるいは、何か欠けているものがあるかもしれないので、創造的模倣は、製品やサービスを顧客の目で見ることなのです。
IBMのパソコンは、技術的には、アップルのそれと差別化できなかったのですが、IBMは、初めからプログラムとソフトウェアを提供したのです。
そのうえ、アップルが専門店というそれまでの流通チャネルに固執していたのに対し、IBMは、専門店、シアーズ・ローバックのような大規模店舗、直営の小 売店など、あらゆる流通チャネルを使い、消費者加買いやすく、使いやすくし、IBMがパソコンの市場を手に入れたのは、技術よりも、それらのイノベーショ ンによってだったのです。
何にもまして創造的模倣は、製品ではなく市場から、生産者ではなく顧客からスタートし、市場志向であり、市場追随であるのです。
ここにあげた実例の数々は、創造的模倣に必要な条件を明らかにし、すなわち、それは急成長する市場を必要とし、創造的模倣を行う者は、新しい製品やサービ スを導入した者の顧客を奪い取ることによって成功するのではなく、彼らが生み出しながら、放っておいている市場を相手にし、創造的模倣は、すでに存在して いる需要を満たすのであって、需要そのものを生み出すのではないのです。
想像的模倣は、先駆者が市場の中で見落としている部分、或いは消費者の立場で足りない部分を深く理解し、それを満たすことであり、ステイーブ・ジョブズが 追放された、初期のアップルは先駆者であり、他社の創造的模倣を許したのですが、ジョブズが再復帰後は、創造的模倣者になり、最終的に市場を確保したので す。
◆賢明さのリスク
創造的模倣にも特有のリスクが伴い、しかも、そのリスクはかなり大きく、そのため創造的模倣を行う者は、リスクを分散させようとしてエネルギーを分散させ る傾向があり、さらには、状況を誤解して模倣してしまうことがあり、意味のない市場の動きを創造的に模倣してしまうのです。
創造的模倣家として世界一の実績をもつIBMは、これらのリスクを身をもって教えていて、これまでIBMは、オフィス・オートメーション(OA)の主要製 品について、模倣によって成功してきたのですが、それらIBMの製品は、模倣からスタートしたものであるために、あまりに多様化し、統合したシステムを構 築することが困難になっているので、今後、IBMがOAの分野で統合的なシステムを供給し、トップの地位を維持しつづけることができるかは疑問であり、し かもOAは、おそらく未来の大市場であるのです。
このドラッカーの予言は、現実のものとなり、IBMは長期の停滞を余儀なくされ、ナビスコから転身したガースナーCEOの元で、ソリューション・カンパニーとして再出発し、今日の栄華を獲得しているのです。
多分にこのことは、日本の松下電機でも同じことが言えて、昔はマネシタ電機と呼ばれている位、創造的模倣家であったのですが、これにまい進すると、本来の 企業のアイデンテイテイから外れてしまい、ビジネスが曖昧になってしまうので、企業の価値感、使命の明確化は外せないのです。
このリスク、すなわちあまり利口すぎることのリスクこそ、創造的模倣につきものであり、創造的模倣は、きわめて単純なある1つの理由から、ハイテクの分野 で最も有効に機能し、ハイテクのイノベーションを行う者は、市場中心であることがほとんどなく、技術中心、製品中心だからであり、そのため彼らは、自らの 成功を誤って理解し、自らがつくり出した需要に応えることができないのですが、アセトアミノフェンやクォーツ・デジタル時計の例に示すように、ハイテクの イノベーションを行う者だけがそうだというわけではないのです。
創造的模倣は、市場の支配を目指すがゆえに、パソコンや時計、鎮痛剤など、完結した製品、工程、サービスについての戦略に適しているのですが、総力戦の戦 略ほどには大きな市場を必要とせず、リスクも大きくはなく、創造的模倣を行う者が仕事を始める頃には、市場はすでに明らかであり、需要もすでに生まれてい るのです。
しかし創造的模倣は、鋭敏な触角、柔軟さ、市場への即応性、そして何よりも厳しい仕事と膨大な努力を必要とするのです。
従って、創造的模倣が安全で、楽な方法であるとは、決して言えないのです。
画像は、7ヵ月間お世話になった、オーストリア製のチタンのプレートで、腕の良い整形外科の先生のお蔭で、順調に回復することが出来ました。
切れていた腱も上手くつながったようです。
本日は、私の誕生日で多くの方がたからお祝いのメッセージを戴きました。
有り難うございます。
ますます、学びを深め、精進していきます。
今日も最高のパワーで、スーパー・ポジテイブなロッキーです。