本日のテーマは、「圧倒的な差別化戦略」です。
昨日までで仙台でのイベントはすべて終了し、昨日夕方仙台から都内に移動し、都内で宿泊し、今朝は朝一便で本社に帰社しているのですが、昨日、帰り道の道すがらずっと考え続けたのは、最近の日本には全体に成果が上がっていないビジネスが多いことです。
仙台に来る度に注目しているのは、仙台駅の新幹線出口にあるすし店と牛タンの店が軒を並べている一角があります。
牛タンとすしの店を合わせて、合計10店舗あまりありますが、いつも必ず、行列が出来ている立ち食いすしの店が1軒だけあるのです。
他のすし店は、行列はおろか、店内はガラガラで、いつも呼び込みをしているのですが、この店だけはいつも満員なのです。
すし店へ行くほとんどのお客さまは、他の店には目もくれず、この店を目指し、新幹線の時間ギリギリまで並び、もし、時間が無くなっても、他の店には入らず、諦めて去っていくのです。
こんなに繁盛している店があるので、他店でも同じようなこと、或いはそれ以上のことをやれば良いようなものですが、いつ見ても、他店の様子は変わらず、ときおり、若い女性が熱心に呼び込みを行なっているのです。
他店の方が立ち食いではなく、店も大きく、新幹線と同じフロアの仙台駅の中であるので、それだけ家賃は高いはずであり、このような場所に出店出来るのは、個人ではなく、会社経営のはずなのに、なぜ、いつまでも他の店は変わらないのか、不思議な気がします。
そして、この事実は、われわれに大切なことをたくさん教えてくれます。
まず1番目は、トップになる大切さであり、同じ商圏内にある店舗はすべてライバル店であり、お客さまの取り合いを行なっているので、商圏内でトップを目ざすことは、絶対条件であり、この立ち食いの店だけが、常にトップを何年も守り続けているのです。
トップを目指す戦略は、①オペレーショナル・エクセレンス、②プロダクト・リーダー、③カスタマー・インテイマシーの3つですが、この店が採用しているのは、②のプロダクト・リーダーであり、商品力なのです。
サービスの良さとか、効率の良さは特別感じないのですが、いつも感じるのは、商品力の高さであり、関西地区ではなかなかお目にかかれない品質で、もし、関西でこのようなレベルの店であれば、相当な価格を覚悟しなければいけないはずです。
要するに、この店の2番目の戦略は、上記②のプロダクト・リーダーで、商品力一本で勝負し、お客さまが感じる価値が非常に高く、熱狂的なファン客をたくさん持っているのです。
3番目の戦略は、熱狂的なファン客を作っていることであり、この店でなければいけないお客さまばかりをたくさん持っているのです。
従って、どんなに長い列になっても、他店に行かないで、この店でなければいけない熱心なファン客をたくさん持っていることです。
飲食店にとって最も効率が良いのは、常にお客さまが途切れないことであり、行列が絶えないことで、常に満席状態が続くことです。
それを達成しようとすると、際立った個性と、圧倒的な差別化が必要であるのですが、それを実際に行なったのは、うどん業界では、最初は「はなまる」であり、次は「はなまる」を、起業家的柔道戦略を使い、凌駕した「丸亀製麺」であったのです。
そして、改めて、仙台駅にある他のすし店を比較してみると、どの店も特別な差別化がなく、ほとんど似たような店作り、似たような商品、似たようなサービスなのです。
以上は、仙台駅のすし店の事例であったのですが、国内にたくさんあるうどん蕎麦店のほとんどは、似たようなレベルの競争に陥っているのです。
当社は、以前からそのような問題に気づいているので、当社の麺学校では、生徒さんたちにイノベーションの大切さを教え、盛付等でも、わざと奇抜な盛り付けを教えているのです。
そのような奇抜な盛り付けに対して、生徒さんたちの反応は決して、芳しくないのですが、当社は際立った個性の大切さを教え続けているのです。
次に、大切なお知らせがあります。
今月26日(火)、27日(水)の2日間、北海道の十勝で、自家製麺出張教室を開催します。
(https://www.yamatomfg.com/special-noodle-events/)
今回は、ドリーム・スタジオ札幌の宍戸だけでなく、ドリーム・スタジオ大阪の看板娘の武藤、そして、福井から篠原が駆けつけ、最近、関西地区でヒットしている面白い麺類の実演も行ないます。
本日も、ドラッカー選書「イノベーションと起業家精神(下)」(ダイアモンド社)に基づき、イノベーションについて、深くドラッカーから学んでいきます。
ぜひ、一緒にイノベーションと起業家精神を磨いていきます。
◆愚かさの違い
価値戦略の例は、多少なりとも頭を使えば、誰でも同じ戦略を考えるのではと、当たり前のことに思われるかもしれないのですが、理論経済学の父デヴッド・リ カードは、「利益は、賢さの違いからではなく、愚かさの違いから生まれる」と言い、まさに起業家は、自らが賢いからではなく、ほかの者が何も考えないから 成果をあげることが出来、何も特別なことではなく、わかりきったことで、成果をあげるのです。
しかしそれでは、これらの例が示すように、顧客が何を買うかを考える者は、必ず勝てるにもかかわらず、それは稀にしか見られず、しかも実際には、競争にな ることさえないのはなぜかと言えば、理由の一つは、経済学とその価値論にあり、たしかにあらゆる経済学が、顧客は製品ではなく、製品が提供するものを買う というのです。
ところがそのあと、経済学は、製品の価格以外のこと、すなわち顧客が製品やサービスの所有や占有のために支払うものとしての価格以外のことについては、 いっさい言及しなくなり、製品が顧客に提供するものについては、2度と触れず、不幸なことに、製品やサービスの供給者は、この経済学に従うのです。
たしかに「製品AのコストはXドルである」ということには意味があり、あるいは「生産コストをカバーし、かつ資本コストをカバーして適切な利益を計上する にはYドルを得なければならない」ということにも意味があるのですが、「したがって顧客は、製品Aに対し現金Yドルを支払わなければならない」ということ にはならないのです。
正しい言い方は、「顧客が製品に対して支払うものとして、われわれにYドルをもたらさなければならないのですが、顧客がいかに支払うかは顧客次第であり、 製品が顧客のためにできること次第であり、顧客の事情に合うもの次第であり、顧客が価値とするもの次第であるのです。」でなければならず、単なる価格を超 えたものとしての価格設定が必要であり、価値の概念が必要であるのです。
以上の考察のほかに、多くの人たちと一握りの成功者を分ける一つのものは、実行するかどうかなのです。
ほとんどの人は、分かっているのですが、実行しないだけであり、実行した一握りの人だけが成功を手にすることが出来るのです。
例えば、経営講義ではいつも、トップを目指す大切さを話しているのですが、ほとんどの生徒さんは頭ではたぶん、その重要性は分かっていると思いますが、実際にトップを目指す人はほとんどいないのです。
また、筋トレの大切さを理解している人は多いのですが、ほとんどの人は実行しないのです。
身体に良い食事を摂ることの大切さを理解している人は多いのですが、これもほとんどの人は実行しないだけであり、成果を得ることが出来るかどうかは、実行するかどうかだけの差であったのです。
キング・ジレットは、40年にわたるひげそり市場の事実上の独占を行なってきたのですが、これと同じ洞察で、小さなハロイドを、10年後に売り上げ数十億 ドルを誇るゼロックスに変えたものも、GEに対し蒸気タービン市場における世界的リーダーの地位を与えたものも、この洞察だったのです。
これらの企業は、いずれも大きな利益をあげつづけ、それらの利益は、彼らが自ら得たものであり、顧客に満足を与え、顧客が買いたいものを提供したこと、彼らの支払う額に見合うものを提供したことによって得たものであるのです。
読者の多くは「マーケティングの初歩にすぎない」と言うかもしれないのですが、そのとおりであり、マーケティングの初歩以外の何ものでもなく、顧客にとっ ての効用、顧客にとっての価格、顧客の事情、顧客にとっての価値からスタートすることが、マーケティングのすべてであるのです。
40年間にわたってマーケティングが説かれ、教えられ、信奉されながら、実行する者がなぜあまりに少ないのは、ドラッカーにも説明できないのですが、起業 家戦略の基礎としてマーケティングを行う者が、産業や市場におけるリーダーシップを、直ちに、しかもほとんどリスクなしに手に入れているという事実は残る のです。
今回も「イノベーションと起業家精神」について学びを深めていくと、いかに自分が知らないことが多かったことに気づかされるのです。
必要に迫られて学ばない限り、深い学びを行なうことは難しいのです。
◆判断としての起業家戦略
起業家戦略は、イノベーションや、起業家としてのマネジメントと同じように重要であり、これら3つのものが一体となって、イノベーションと起業家精神が生 まれ、利用しうる起業家戦略はかなり明確であって、種類もあまり多くはないのですが、それは、イノベーションや、起業家としてのマネジメントに比べて若干 具体性に欠けるのですが、イノベーションの機会がどこにあり、いかに分析すべきかは、優れて明らかであるのです。
既存企業や社会的機関に、起業家精神を発揮させるための正しい原理と方法、間違った原理と方法もきわめて明らかであり、ベンチャー・ビジネスが行うべきことや、行うべきでないことも明らかであるのです。
しかし、いかなるイノベーションにいかなる起業家戦略を適用するかの判断には、大きなリスクが伴い、ある種の起業家戦略は、ある種の状況に最適であり、た とえば、私が起業家的柔道と呼んだ戦略は、主導的な地位にある企業が自己満足の状態にあるとき、うってつけの戦略となり、起業家戦略のそれぞれに特有の利 点や限界も明らかであるのです。
そして何よりも、起業家戦略というものが、顧客にとっての効用や価格、顧客に特有の事情や価値からスタートするとき、成功の確率がきわめて高いことも明らかであるのです。
イノベーションとは、市場や社会における変化であり、それは、顧客に対しより大きな利益をもたらし、社会に対しより大きな富の増殖能力、より大きな価値、 より大きな満足を生み出し、イノベーションの値打ちは、顧客のために何を行うかによって決まり、同じく起業家精神も、つねに市場志向、市場中心であるので す。
しかし、起業家戦略は意思決定の分野に属し、したがってリスクを伴ない、それは直感や賭けではなく、とはいえ、厳密な意味での科学でもなく、それは判断であるのです。
今まで学んできた起業家戦略を行使するには、深い学び、豊富な経験による直観力、努力、忍耐も必要とし、経営者としての能力を総動員しなければいけないことが分かりました。
マネッジメントの達人の域に到達している人たちは、ドラッカーが展開しているマネッジメント理論、マーケテイング理論、イノベーション理論を手足のように、自由自在に使いこなし、ビジネスに大きな成果を残しているのです。
世界に大きな衝撃を与え続けた、アップルのステイーブ・ジョブズも企業家戦略をフルに使いこなしていたことが理解出来ます。
われわれがまだ、期待以上の成果を上げることが出来ていないのは、起業家戦略を使いこなせていないだけであり、理解度がまだ足りないだけであるのです。
今回、一通り読んでみても、まだまだ理解の深さが足りないことが分かります。
併せて、われわれ経営者に深い学びを与え続けてくれるドラッカーの素晴らしい遺産に深く感謝したいと思います。
画像は、私がいつも注目している素晴らしいカフェ「カフェ中野屋」さんが、発行したメニューブックです。
昨日のイベントで、個別相談に来られた蕎麦学校の卒業生が持って来てくれました。
内容も素晴らしもので、皆さんにもお勧めいたします。
今日も最高のパワーで、スーパー・ポジテイブなロッキーです。