本日のテーマは「その道の第一人者」です。
昨日から、讃匠の今年入社の新人スタッフの山上さんと一緒に天ぷらに挑戦しているのですが、うどん蕎麦店で提供する揚げ立ての天ぷらではなく、揚げてから時間経過して食べる、デパ地下の惣菜コーナーで販売しているような天ぷらで、揚げ立てを食べる天ぷらとは、必要なノウハウが異なってきます。
揚げ立てを食べさせる天ぷらの場合は、素材の食感を大切に、出来るだけ薄衣で、揚げているのですが、時間経過して食べさせる場合は、べとっとした食感を出さず、天ぷらのサクサク感を残しておくためのさまざまな工夫が必要なことが分かりました。
また、揚げる食材によって、衣の濃度(水と天ぷら粉の割合)、揚げ温度、揚げ時間が異なり、昨晩も遅くまでイワシの天ぷらにチャレンジしていましたが、180度Cで、衣の比率(天ぷら粉:水=1:1.5)が濃い比率が良く、揚げ時間は4分間が最も良かったのです。
揚げ時間も3分から6分間まで、1分間刻みに揚げていき、それぞれの揚がりの状態を見て、時間を置いてから食べてみると、昨晩の状態では4分間がベストでした。
このように、すべて数値のデータを残しているので、再現性はよく、何度やっても同じ結果が得られるのです。
そして、天ぷらが油でべとつかないようにするための最後の油切りですが、最近、スーパーで売られているサラダを作るときの野菜の水切りのようなもので、遠心力で油を切るのを試してみると、壊れやすい天ぷら以外は十分に油を切ることが出来るのです。
天ぷらをたくさん揚げる事業所には、油切り装置は必須で、以前アメリカで、フライドチキンのフライヤーと油切り装置が一緒にセットになった機械を見たことがあります。
昨晩遅くまで天ぷらにチャレンジしていたのですが、時間経過しても美味しい天ぷらの特徴は、もう一つ分からなかったので、スーパー等の惣菜コーナーが作っている天ぷらを参考にしようということで、今朝は朝から、坂出魚市場とか、早くから営業しているスーパーの売り場を見てきました。
そして、販売しているサンプルを買って来て、それぞれの天ぷらの特徴を比較してみましたが、非常にきれいに揚げられていて、時間がたっても美味しく食べることが出来るような工夫が読み取れました。
この様にして、時間が経っても美味しい天ぷらの研究を行なうと、暫くすると、
時間が経っても美味しい天ぷらの揚げ方については、プロ中のプロになることが出来るのです。
普通、世の中には、プロが多いと思われがちですが、多くのプロの人たちは、昔からの方法を継承している場合がほとんどで、現在のようにさまざまな進化した食材、製法が次つぎと発見、発明されているのを知らないで、活用していない人たちがほとんどなのです。
だから、うどん蕎麦、ラーメンの世界にはまだまだ、新しいイノベーションがいくつも起きて当たり前なのです。
私はエンジニアの立場から、料理の世界に入り、最も難易度の高いと言われているラーメンの世界で、多くの生徒を指導し、その生徒さんたちの多くがこの業界で成功しているのは、常に、今までのやり方に疑問を持ち、なぜ、そうやっているのか、やる必要があるのかを確認し続けてきた結果なのです。
だから、揚げ立てでなくもの美味しい天ぷらの研究を深めれば、この分野での第一人者になることは、それほど難しいことではないのです。
同時に、誰でもその道を深く学べば、今からの時代でも、どんなジャンルでもその道の第一人者になることが出来るのです。
そして、それには情熱が欠かせないので、情熱を持っているかどうかは、まず始めるにあたって、最初に自分自身に問うことであり、情熱を持てないことをやっているのは、単に、人生の貴重な時間の浪費であるだけなのです。
昨日の「イノベーションと起業家精神」にあるように、外を出て観察することは、新しいことを始めるのには良い方法で、私は何かを始める場合は、すでに世の中で成功しているものを参考にしています。
今は、ネットが発達しているので、日本中、世界中の成功事例の存在がネット上で簡単に分かるのです。
しかし、それは存在が分かるだけであって、現地に行かなければ、そのビジネスの成功の真の原因を掴むことは出来ないのです。
だから、場合によって、現地に何度も何度も足を運ぶ必要性もあり、現地に出向き、調べることは大きな意味があるのです。
従って、ネットで情報を集め、分析することは出来ますが、最終的には自分の五感を使って確かめなければならず、このことは本日のイノベーションのテーマとも、符合するのです。
本年2月21日から始まった、半年間以上に及ぶ、「イノベーションと起業家精神」の学びの最終のまとめに取り組んでいきます。
「分析と知覚の役割」
本書のテーマであるイノベーションとは、組織的かつ体系的に行なう仕事であるのですが、それは同時に、分析的であるとともに、知覚的な仕事でもあり、もちろんイノベーションを行なうとする者は、見聞きしたものを論理的かつ、詳細に分析する必要があり、知覚するだけでは駄目なのです。
「知覚」が、単に「感じること」を意味するのであれば、イノベーションにおいて、知覚はまったく役に立たず、そのような知覚は、「見えるもの」ではなく、「見たいもの」を見ているに過ぎないのであり、自分の「見たいもの」を見るのではなく、「既に起きている真実」を見なければ(知覚しなければ)いけないのです。
イノベーションは分析的であるとともに、知覚的な仕事であり、実験と評価を伴う緻密な分析といえども、その基礎は、あくまでも変化、機会、現実、現実と認識のギャップなどに対する知覚であり、「分析できるほど、未だ分からない。しかし、必ず見つけ出す。外に出かけ、観察し、質問し、聞いてくる。」と言わなければならないのです。
予期せぬものは、通念や自信を打ち砕いてくれるからこそ、イノベーションの宝庫であり、まさに日本のうどん蕎麦店、ラーメン店ビジネスに起きているのが、予期せぬものであり、数年あとには、あのとき大きな変化があったと言われる可能性があることが今、起きていて、起きていることは感じるのですが、原因は分かっていないのです。
過去、当社はうどん蕎麦店市場と景気の関係を読み解き、うどん蕎麦店の市場規模は、日経平均株価と反比例していて、株価が下がると、うどん蕎麦店市場規模は拡大し、株価が上がると、反対にうどん蕎麦店市場が凹むという現象を見つけ出したのは、過去のデータの分析で分かったので、私は分析の大切さも身をもって理解しています。
「原因はわからなくても良い」
実際のところ、起業家たる者にとって、現実が変化した原因を知る必要はなく、先ほど述べた2つのケース(インドの錠前とアメリカの住宅)の場合は、なぜ起こったかが簡単に分かったのですが、何が起こったかは分かっても、なぜ起こったかは、分からないことの方が多いのですが、例えそうであっても、われわれはイノベーションを成功させることが出来るのは間違いなく、ここに1つの面白い事例があるのです。
1975年に起こったフォードのエドセルの失敗は、余りにも有名であり、少なくともアメリカ人ならば、当時まだ生まれていなかった者でさえ、聞いたことのある話なのですが、エドセルがギャンブルのようなプロジェクトだったという、一般に伝えられている話は、まったくの誤りで、フォードのエドセルほど、慎重に設計し、売り出し、マーケテイングした製品はなかったのです。
第2次大戦後の倒産寸前の状態から、GMの競争相手としてアメリカ市場で2位に座を確保し、急速に成長しつつあるヨーロッパ市場で、1位の座を狙うに至った10年間に及ぶフォードの大戦略において、エドセルは総仕上げとなるべきモデルで、1957年当時、フォードは、アメリカ4大自動車市場のうち、3つの市場でGMの強力な競争相手としての地位を確保していて、「一般」市場にはフォード、「中流の下」市場にはマーキュリー、「上流」市場にはコンチネンタルを擁していて、残る1つの市場、すなわち競争相手のGMがビュイックとオールズ・モビルによって支配していた「中流の上」市場を狙ったのが、エドセルだったのです。
この市場は、とくに第2次大戦後急速に成長している市場でありながら、第3位のクライスラーも手をこまねいている市場であり、フォードにとって、ドアは大きく開かれていて、フォードは企画と設計に時間をかけ、市場調査によって得た情報、特に車体についての消費者の好みを設計に組み込むとともに、品質管理についても最高の基準を設定したのですが、それにもかかわらず、エドセルが失敗だったことは、発売と同時に明らかになったのですが、失敗に対するフォードの対応は目を見張るものだったのです。
消費者の行動の不合理をこぼす代わりに、消費者行動についての、それまでの考え方、長い間有効であったために、自明の理とされていた考え方とは、合致しないことが、何か起こっているに違いないと結論を出し、そして外へ出て調べた結果、1920年代にアルフレッド・P・スローンがGMの成長の基礎とした、アメリカの自動車市場の区分けの仕方、即ち、「一般」「中流の下」「中流の上」「上流」という区分が、まったく新しい市場区分、すなわち、ライフ・スタイルと今日言われているものに変わりつつあること、或いは少なくとも、それと共存するようになっていることを知ったのです。
その結果として考えられたのが、エドセルの失敗のわずか数年後、自動史上、ヘンリー・フォード・シニアによる、1908年のT型フォード以来の大成功となったサンダーバードの開発で、フォードは、GMの関係者としての地位を脱し、強力な競争相手として再登場し、今日でもわれわれは、自動車史上、重要なこの変化の原因を、知ることが出来ないでいるのです。
それは、ベビー・ブームによる人口の重心が10代へ移行したことや、高等教育の恐るべき普及、女性の生き方の変化など、一般に指摘されている現象が、生じる前に起こっていて、しかもわれわれは、そもそも、ライフ・スタイルが何を意味するかさえ、まだ知らず、ライフ・スタイルについて、これまで行われてきた説明はいずれも決定版ではなく、われわれが知っていることは、何かが起こったということだけであるのです。
しかし、成功にせよ、予期せぬことが起こったことを知るだけで、イノベーションの機会とするには十分であり、フォードのエドセルの失敗により、今まで長い間行なわれてきた、市場のセグメント方法そのものが崩れ去っていたのが分かったのです。
予期せぬ失敗は、そのような一番基準となるものが、時代の変化とともに変化していることを見つけ出すのには、最適な方法であり、われわれのビジネスの源泉である、うどん蕎麦市場、ラーメン市場も同じ様な地点に立っていることを認識出来、例えば、うどん蕎麦店、ラーメン店のメイン・ターゲットは今までずっとサラリーマンであると信じられてきていたのですが、サラリーマンの絶対人口が既に大きく減少し、大手外食も同様にサラリーマンをターゲットにしているので、この市場のウマミが急激に減少し、反対に、女性とシニアが消費者市場としても、労働力供給市場としても、大きくクローズアップされるようになってきて、過去の常識が崩れ去ろうとしているのです。
1人世帯の増加、晩婚化、生涯未婚率の急激な増加、生産年齢人口の更なる減少、コンビニによる外食分野への参入等々、日本の外食を取り巻く環境は、日増しに厳しくなっていて、分析だけでなく、われわれは外へ出て、現に起きている現象を理解しなければいけないのですが、経営講義に参加していた生徒さんが早速、セブン・イレブンに行き、下記のような報告をしてくれました。
「早速学んだ事でできる事を始めようと、昨日、セブンイレブンのメニュー、棚割、商品チエックを帰宅途中の店舗で行ってみました。総菜麺など、商品のネーミングまでいろいろ考えてあって、とても参考になりました! たとえば、「ドーンと4枚!チャーシュー麺正油味」とか「ごっつ盛り肉野菜とんこつラーメン」など工夫されているのに驚きました。(今まで、気づいていませんでした)。」
「3.外部の予期せぬ変化」
これまで、予期せぬ成功や失敗は、企業や産業の内部で起こるものとして論じてきましたが、マネッジメントが、今日手にしている外部の事実、すなわち、情報や数字には表れない事象も同じように重要な意味を持ち、それらの事象は、企業や産業内部の事象よりも重要であることが多いのです。
普段の社内給食には、うどんが出ないのですが、年末なので、しっぽくうどんが登場しました。
大和は休みになっているのですが、讃匠のスタッフたちは大喜びでした。
今日も最高のパワーで、スーパー・ポジテイブなロッキーです。